語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【南雲つぐみ】寒灸の習慣 ~関節の痛みやこりを和らげる~

2017年01月30日 | 医療・保健・福祉・介護
 「風の子や 裸で逃げる 寒の灸」(小林一茶・八番日記)。子ども好きの一茶ならではの庶民の暮らしぶりをイメージさせる一句だ。
 寒灸は、冬に体を温めて血行を良くし、春に向けて気力、体力を養うという予防医学の習慣だ。東洋医学では「腎は冬に属し、骨や腰も腎の統括下にある」と考えるという。このため冬は、リウマチや腰痛、関節炎を発症したり、足がつったりしやすいという。
 そこで、これらの痛みを和らげるために、腰や腎兪(じんゆ)というツボへのお灸がよく行われたらしい。腎兪は、背骨の両側でへその裏のベルトの位置にあるツボだ。今では家庭でお灸をする習慣はほとんどないが、腰や下腹部、ふくらはぎなどを使い切りカイロなどで温めるのもよいようだ。低温やけどには注意してほしいが、冬に起こりやすい関節の痛みやこりを和らげるのにも役立つ。
 また、腎兪は夜尿症のケアにもよいツボだという。一茶の句にある裸で逃げだすほど元気なこの子どももおねしょの癖があったのかも? などと想像が膨らむ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「寒灸の習慣 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年1月30日)を引用
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【旅】2月/特急「出雲」と松葉ガニ

2017年01月30日 | □旅
 宮脇俊三の旅行は、時刻表片手の一人旅がほとんどだが、1975(昭和50)年冬の山陰行は珍しく会社の友人たちとの4人組だった。
 たしか2月14日(金)、18時20分発の寝台特急「出雲」に乗った。後の「出雲1号」である。当時なかなかの人気列車で、いちばん指定券のとりにくい列車だった。
 この列車には食堂車が連結されていた。その頃、食堂車は減少傾向にあり、特に夜行列車は女子の残業問題などもあって減りに減り、1978(昭和58)年10月のダイヤ改正後は、「さくら」「はやぶさ」「みずほ」「富士」「あさかぜ1号」とこの「出雲1号」だけだった。
 列車は大雪(1mは積もっている)で遅れた。
 今回の旅行は鳥取で松葉ガニを食べるのが主目的だが、未明に鳥取に着いて早速カニという必要はないから、松江の先の玉造温泉まで足を伸ばして、朝風呂と朝食という贅沢なスケジュールになっていた。
 玉造温泉駅には9時半ごろに着いた。1時間40分の延着だった。
 また雪が降ってきた。ぼたん雪だからこれ以上降り積りはしないはずだが、わいわい騒ぐ4人客を乗せたタクシーは、斜めにスリップしながら温泉場まで走った。
 その晩は、鳥取市に近い岩井温泉に泊まった。当時すでに、カニは高くなった、と宿の主人が言うくらい高くなっていた。

 <カニはうまかった。とくに生の灰緑色のを湯にさらして、ぱっと赤くなったところを食べるカニすきは逸品であった。生のカニは鳥取でもふらりと泊まって食べられるものではない。
 しかしカニ料理というもの、あれは集団で食べるにはふさわしくないように私は思う。殻から身をほじくり出そうとするとき、もう耳が聞こえなくなる。話しかけられたって生返事をするのがやっとだ。眼鏡をはずして一心不乱、親不知(しらず)不知の境地で、ただ黙々と孤独な格闘になる。燗酒の冷めるにも気が及ばない。コトッコトッとたぎる土鍋(どなべ)の湯、ボサリと落ちる軒の雪、静寂はカニがなくなるまでつづく。
 食べ尽くしてようやく顔を上げ、ああお前もそこにいたか、とそれほどではないにしても、話のはずまぬことカニ料理の右に出るものはない。
 およそカニなど食べさせたのでは、まとまるはずの商談もまとまらないだろう。逆に見合いなどはカニ料理屋でやるとよいかもしれない。あの白ける食卓で顔合わせをして、なおかつ前向きの姿勢、ということであれば相当脈がある。>

□宮脇俊三『汽車旅12ヵ月』(潮出版社、1979/後に新潮文庫、1982)の「2月/特急「出雲」と松葉ガニ」
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 【参考】
【旅】山陰・瀬戸内・四国横断の旅
【心理】生きられる時間 ~宮脇俊三の場合~
【宮脇俊三】『時刻表2万キロ』
書評:宮脇俊三『最長片道切符の旅』 ~旅行記を楽しむ四つのアプローチ~