(1)認知症の予防食については、最近盛んに研究が進められている。なかでも有望なのは、野菜と魚。それからカレースパイスだ。
(2)統計ではっきりわかっているのは、野菜摂取の習慣がある人にアルツハイマー病が少ないということだ。特に緑黄色野菜がよいと言われている。インドに認知症患者が少ないという発表もあり、カレーに使うターメリック(ウコン)に含まれるクルクミンでの動物実験で、アルツハイマー病の原因物質が減ったという結果が出ている。
また、イワシやサバなどの青魚に多く含まれるDHAやEPAは、動脈硬化の予防効果もあり、認知症につながりやすい脳卒中を予防することができる。生活習慣病につながる食生活も、認知症予防に有利に働く。
(3)注目すべきは、国立長寿医療センターなどが解明した「魚と大豆の双方を多く摂ると認知機能低下を防ぐ可能性がある」とする研究結果だ。
愛知県に住む中高年約2,200人を対象にDHAと大豆イソフラボンの摂取量を調査したところ、「両方とも多く摂る」グループの学習能力が高いことがわかった。
魚の油に含まれる脂肪酸のDHAは、もちろん脳の働きに重要な物質だ。しかし、問題点は酸化されやすいこと。亡くなったアルツハイマー病の患者の脳を調べると、DHAが酸化したものが見つかった。
それならば、酸化を抑えるにはどうすればよいのか。
愛知県で行った調査では、魚と大豆食品の両方を食べているグループで、認知機能が高いという有意差がきれいに出た。この結果から、大豆食品が持っている抗酸化性が、脳の中でDHAの酸化を防いでいるのではないかと推定される。まだ研究段階だが、確実に言えるのは、DHAは大事だが、酸化により逆の作用が出てくる。それを防ぐにはイソフラボンのような抗酸化成分が大事だということだ。
魚と一緒に味噌汁や豆腐を食卓に並べるだけでよいのだ。
(4)大豆、魚、野菜をまんべんなく摂れる和食の要素に加えて、九州大学の研究で新たにわかったのは乳製品を摂ることで、脳血管性認知症にもアルツハイマー型認知症にもなりにくいということ。
和食の数少ない欠点は、食塩の摂りすぎとカルシウムの摂取不足に陥りやすいこと。食塩を摂りすぎると血圧が上がって、脳卒中のリスクを増やす。骨の栄養が悪いと骨粗鬆症から骨折し、脳卒中とともに寝たきりの二大原因になる。乳製品にはカルシウムなど骨の栄養と食塩の害を防ぐミネラルが多い。
つまり減塩を意識した上での「和食+乳製品」が健康寿命を延ばすポイントだ。
豊かな食生活は、脳への刺激にもなるはずだ。
□守屋浩司・編『人生を変える! 食の新常識/カラダにいい食事 決定版』(文春ムック、2016)の「身近な食品で今日から健康に!」(初出「週刊文春」2015年5月28日号)
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【参考】
「【保健】身近な食品で今日から健康に(4) ~ブロッコリ~」
「【保健】身近な食品で今日から健康に(3) ~アボカド~」
「【保健】身近な食品で今日から健康に(2) ~落花生~」
「【保健】身近な食品で今日から健康に(1) ~チョコレート~」
「【保健】意外や意外、卵で糖尿病は予防できる」