語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】世界史と相対化させよ ~平成史(4)~

2018年08月04日 | ●佐藤優
 <片山/佐藤さんは平成史の肝といえるソ連崩壊に立ち会った。日本ではソ連が崩壊したときに社会主義は終わったと誰もが思った。だからこそアメリカの資本主義や政治をコピーすれば、日本も100年は安泰と一時的にも信じられてしまった。そこに大きな間違いがあったと思います。

佐藤/同感です。平成史は歴史総合なんですよ。その意味では世界史と相対化させないと平成日本史は見えてこない。平成史は日本史であると同時に世界史なんです。
 たとえば、平成元年に消費税が導入されます。これは、付加価値税に反対の立場をとる、世界に類を見ない日本独自の社会民主主義の存在を明らかにした。そもそも付加価値税、つまり消費税は、社会民主主義の専売特許だったはず。消費税導入によって、日本の社会民主主義の矛盾が露わになりました。

片山/日本の社会主義は富裕層を叩く意識で発達しすぎたのですからね。急激な近代化のせいなのか、江戸時代の身分制度から四民平等に唐突に移行して、そこで明治政府のやったことは徴兵制や重税でしょう。
 民衆に権利意識を育てる暇がなかったのが尾を引いている気がします。権利を主張することよりも、余計な負担をさせるな、という「逃げたい意識」というか「解放されたい意識」が先行している。百姓一揆みたいな話になる。これ以上、一銭も払いたくないんだと。それが反転すると、上からむしりとることを考えて、下が自ら負担するというのはますます禁句みたいになる。
 下からの要求のために自ら負担するのではなく、上からの要求から逃れること、そのために誰か、別の上に期待するということが日本人のデフォルトになっているのではないですか。いずれにせよ相互扶助や階級宥和の意識が低すぎるので、何をやってもいびつになってしまいます。>

□佐藤優/片山杜秀『平成史』(小学館、2018)の「第1章 バブル崩壊と55年体制の終焉/平成元年→6年(1989年-1994年)」の「世界史と相対化させよ」から一部引用

 【参考】
【佐藤優】バブル崩壊でファミレス進化 ~平成史(3)~
【佐藤優】モスクワから見た狂騒ニッポン ~平成史(2)~
【佐藤優】天皇が中国と沖縄を訪ねた意味 ~平成史(1)~
【佐藤優】『平成史』概要
コメント
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