語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】正しさを望む人

2018年08月22日 | ●佐藤優
 <義に飢えかわいている人たちは、さいわいである、彼らは飽き足りるようになるであろう。 --「マタイによる福音書」5章6節

 義とは、正しいことと言い換えてもいい。「義に飢えかわいている人たち」とは、イエス・キリストによって正しいことがこの世界に実現することを望んでいる人々という意味だ。こういう人たちの希望は、必ず満たされると説く。しかし、現実の世界には、悪が蔓延している。キリスト教徒は、イエスの生き方に倣って、愛を行動として実践しなくてはならない。
 もっとも、いくらキリスト教徒が努力しても、理想的な世の中を人間の力で構築することはできない。キリスト教は、徹底した他力本願の宗教なので、人間による努力に一切価値を認めない。従って、「義に飢えかわいている人たち」の願いが満たされるのは、イエス・キリストが再臨して、最後の審判が行われるときなのである。しかしそのときまで、自分は選ばれているのだから確実に救われると信じ、究極的な救済は外部から到来することを信じ、「急ぎつつ待つ」姿勢を取ることの大切さを聖書は教えている。>

□佐藤優『人生の役に立つ聖書の名言』(講談社、2017)の「苦難に負けない言葉」の「正しさを望む人」を引用

 【参考】
【佐藤優】柔和な人
【佐藤優】悲しんでいる人
【佐藤優】心の貧しい人
【佐藤優】地の塩となれ
【佐藤優】狭い門を選べ
【佐藤優】求めれば与えられる
【佐藤優】明日を思い悩むな
【佐藤優】思い悩むな
【佐藤優】まえがき ~『人生の役に立つ聖書の名言』~



【フェルメール】《兵士と笑う娘》 ~赤瀬川源平『フェルメールの眼』~

2018年08月22日 | □旅
 路上観察学を開拓した赤瀬川源平が、フェルメールの全作品36点の観察を集約したのが本書。たとえば、《兵士と笑う娘》についてこう書く。

---(引用開始)---
 フェルメールの室内画は、左に窓、正面に壁掛け地図、そして人物、という構図が定番である。その中でもこの絵はいちばん明るく、地図がはっきり見える。女性の顔もいちばん明るい。
 *
 男の目はここからは見えないが、これも互いに見つめ合う一対の視線である。画面中央横位置に、そういうぴんと張り詰めた直線がある。直接に絵具で線としては描かれてはいないのに、でも絵を見ているとそういう見えない線が、何だかハレーションのような力で強く浮かび上がるのを感じる。
 *
■歯まで見える笑顔
 綺麗な笑顔だ。唇の両端がふわりと上がり、白い歯まで見えて、明らかに笑顔である。
 じつは絵の中に笑顔が描かれること自体が珍しいのだ。それも現代ならともなく、19世紀以前の古典的な絵の風習の中で、人物が笑って歯まで見えているというのは、ありそうでほとんどない。絵は厳粛なもの、という習慣が根強くあったのだろう。フランス・ハルスの肖像画で、はじめて白い歯の笑顔を見たのが私としては最初だ。
 同時代に活躍したハルスはひらすら庶民生活をスピード感のあるタッチで描いた画家なので、笑顔が登場したのは自然の成り行きでもある。でもフェルメールの落ち着いた地味な絵に、よく見ると笑顔が多いというのは意外な気がする。
 フェルメールの残した作品はいまのところ(1998年)36点だといわれており、その中に登場する人物は55人(2点の風景画の点景人物は除く)、そのうちわずかながらでも歯の見える人物は11人(他に歯は見えるけど笑顔でないのが1人)というのはかなりな数字だと思う。
 フランス・ハルスもフェルメールもオランダの画家。無関係ではないだろう。
---(引用終了)---

□赤瀬川源平『[新装版]赤瀬川源平が読み解く全作品 フェルメールの眼』(講談社、2012)の「3 兵士と笑う娘」を引用

 【参考】
【フェルメール】《牛乳を注ぐ女》 ~『20世紀最大の贋作事件』~
【フェルメール】の青はどこから来ているか? ~『フェルメール 光の王国』~

 
 《兵士と笑う娘》(1658~1659年頃)/フリック・コレクション(ニューヨーク)

 
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