語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【南雲つぐみ】ショウガを飲む ~その薬効~

2017年01月24日 | 医療・保健・福祉・介護
 寒さは体にとって強いストレスになる。寒いだけで筋肉が緊張して血行が悪くなり、肩こりや背中の痛みの原因になる。だから、できるだけ衣服や食品で体を温めるのは、肩こり対策になる。
 ショウガは血行や代謝を良くする作用があるとされ、世界中で医薬品としても使われてきた。風邪のひき始めによく使われる漢方薬の葛根湯(かっこんとう)の生薬には、生のショウガが調合されている。イギリスでは民間療法としてジンジャーティーが愛用されてきたそうだ。
 その薬効成分はジンゲロールとショウガオールの二つ。生のショウガに多いのはジンゲロールで、ショウガを乾燥させると、ジンゲロールはショウガオールに変化する。最近はショウガオールのほうが、体のより深いところをじわじわと温める作用が高いといわれている。風邪で悪寒がする時には生ショウガのすりおろしを使い、いつも手足が冷たく、体がだるい時には、ショウガオールの多いショウガパウダーを飲み物に入れるという使い分けができそうだ。

□南雲つぐみ(医学ライター)「ショウガを飲む ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年1月18日)を引用
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 【参考】
【南雲つぐみ】ナマコとコノワタ ~三河湾では今が旬~
【南雲つぐみ】寒たまご ~1日2個以上も可~
【南雲つぐみ】安納芋の栄養価と味わい ~焼くか蒸す~
【南雲つぐみ】小正月には小豆がゆ ~むくみによる体重増の対策~
【南雲つぐみ】「おなかの風邪」の予防と事後処理 ~ノロウイルス、「ロタウイルス」~
【南雲つぐみ】食事制限だけのダイエットは危険 ~運動が大事~
【南雲つぐみ】温泉の安全な入り方
【南雲つぐみ】七草がゆ
ミカンのうんちく ~延命長寿の果実~
【南雲つぐみ】鍋で養生 ~今年1月5日は小寒~
【南雲つぐみ】お雑煮の食べ方 ~事故の防止法~


【佐藤優】ソ連崩壊後の労働者福祉軽視、現代も強い力を持つ観念論、孤独死予備軍と宗教

2017年01月23日 | ●佐藤優
   
 ①的場昭弘『「革命」再考 資本主義後の世界を想う』(角川新書 840円)
 ②八木沢敬『「正しい」を分析する』(岩波書店 2,200円)
 ③鵜飼秀徳『無葬社会 彷徨う遺体 変わる仏教』(日経BP社 1,700円)

 (1)①は、ソ連崩壊が資本主義に与えた影響についてこう述べる。
 <一時的にソ連・東欧の崩壊、中国の資本主義化で、一気に自由主義が拡大します。これによって低賃金でつくられた製品が世界に蔓延します。そして工場移転によって半周辺国、周辺国は突如として経済成長します。一方で、先進国では工場移転による空洞化、賃金の低落化が起こり、中産階級の崩壊という現象が次第に起きています。中産階級という意識を持った国民が先進国で多かったのは、皮肉なことですが、ソ連東欧の崩壊よりも前のことです。崩壊以後は、むしろ貧困が再来し始めた。>
 革命の危険性がなくなると、資本主義諸国では、労働者保護や福祉が軽視され、資本が自由に運動するようになるので、格差や貧困が拡大するのは当然の流れだ。

 (2)②は、「正しさ」を解明することに徹底的に拘ったユニークな作だ。
 <地球や水星は、わたしたちが地球や水星のことを考えているかぎりリアルに存在するが、そうでなければリアルに存在しない。こう主張する立場を「観念論」と言う。地球や水星について確証しなくても地球や水星について考えることはできるので、観念論は懐疑論より物体にリアリティーをあたえやすい。と同時に、観念論は懐疑論より物体からリアリティーを剥奪もしやすい。確証可能性はいったん確立されればかんたんには失われないが、考えるということは即座にできる反面、即座にやめることもできるからである。ということは、わたしたちはつねに地球や水星のことを考えているわけではないので、地球や水星はリアルに存在したりしなかったりを繰り返している。つまり、リアリティーに入ったり出たりしているということになる。このいわば「存在論的軽さ」が、観念論に面倒を引きおこす>
 との説明を読むと、現代も観念論が最強の思想的力を持っていることが分かる。

 (3)65歳以上の一人暮らし+夫婦のみ世帯」を孤独死予備軍と定義すると、2030年にはこの範疇に入る人たちが2,700万人になる・・・・という問題と真剣に向き合ったのが③だ。
 <死は逃れようがないが、僧侶が死の意味を説くことができれば、寺院も仏具店も葬儀社もきっと蘇る。1500年、日本仏教の歴史とともに歩んできたモノづくりやサービスの現場にも活気が生まれる。ひいては地縁の回復にもつながる。
 寺院の盛衰は、多くの業界の命運とともにあることを、仏教界は自覚しなければならない>
 こういう鵜飼氏の指摘はそのとおりだ。仏教だけでなく、すべての宗教に根本的改革が求められている。

□佐藤優「現代も強い力を持つ観念論 ~知を磨く読書 第183回~」(「週刊ダイヤモンド」2017年1月28日号)
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 【参考】
【佐藤優】米国のキリスト教的価値観、サイバー戦争論、日本会議
【佐藤優】『失敗の本質』/日本型組織の長所と短所
【佐藤優】世界を知る「最重要書物」 ~クラウゼヴィッツ『戦争論』~
【佐藤優】現代ロシアに関する教科書、ネコ問題はヒト問題、トランプ氏の顧問が見る中国
【佐藤優】日本には「物語の復権」が必要である ~反知性主義批判~
【佐藤優】サイコパス、新訳で甦る千年前の魂、長寿化に伴うライフスタイルの変化
【佐藤優】イラクの地政学、誠実なヒューマニスト、全ての人が受益者となる社会の構築
【佐藤優】外交に決定的に重要なタイミング、他人の気持ちになって考える力、科学と職人芸が融合した食品
【佐藤優】『ゼロからわかるキリスト教』の著者インタビュー ~「神」を論じる不可能に挑む~
【佐藤優】組織の非情さが骨身に沁みる ~新田次郎『八甲田山死の彷徨』~
【佐藤優】プーチン政権の本質、2017年の論点、ロシアと欧州
【佐藤優】国際人になるための教科書、ストレスが人間を強くする、日本に易姓革命はない
【佐藤優】ロシアでも愛された知識人の必読書 ~安部公房『砂の女』~
【佐藤優】トランプ当選予言の根拠、猫の絵本の哲学、人間関係で認知症を予防
【佐藤優】モンロー主義とトランプ次期大統領、官僚は二流の社会学者、プロのスパイの手口
【佐藤優】トランプを包括的に扱う好著、現代日本外交史、独自の民間外交
【佐藤優】デモや抗議活動のサブカルチャー化、グローバル化に対する反発を日露が共有、グローバル化に対する反発が国家機能を強化
【佐藤優】国際社会で日本が生き抜く条件、ルネサンスを準備したもの、理系情報の伝え方
【佐藤優】人生を豊かにする本、猫も人もカロリー過剰、度外れなロシア的天性
【佐藤優】テロリズム思想の変遷を学ぶ ~沢木耕太郎『テロルの決算』~
【佐藤優】住所格差と人生格差、人材育成で企業復活、教科書レベルの知識が必要
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【佐藤優】シリア難民が日本へ ~ハナ・アーレント『全体主義の起源』~

【南雲つぐみ】ナマコとコノワタ ~三河湾では今が旬~

2017年01月22日 | 医療・保健・福祉・介護
 ナマコは北海道から沖縄までの海に生息しているが、愛知県の三河湾内の佐久島では、ちょうど今頃がナマコ漁と加工の最盛期となっている。寒さの中、漁師が素潜りで水深5メートルから10メートルに生息するナマコを一つ一つ手で拾うそうだ。
 新鮮なナマコの腹を割いて長いもので1メートルもの腸を取り出し、丁寧に洗って砂を抜き、塩辛にすると「コノワタ」になる。三河のコノワタは、尾張徳川藩から江戸幕府に献上されたそうで、肥前のカラスミ、越前のウニとともに「天下の三珍」と言われるようになった。磯の香りが好きな人にはたまらない一品。ナマコの卵巣の塩辛は「くちこ」「ばちこ」と呼ばれ、こちらも高級珍味として知られている。
 ナマコを生で食べるのは日本人だけで、中国では一度乾燥させる。ビタミン類やカルシウム、コンドロイチン、コラーゲンなどの薬効成分を含んでいるため、海の薬用ニンジンという意味で「海参」と呼んで、漢方薬になる。また、ナマコから抽出されるホロトキシンには、抗真菌作用があり、水虫の治療薬として活用されている。

□南雲つぐみ(医学ライター)「ナマコとこのわた ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年1月17日)
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 【参考】
【南雲つぐみ】寒たまご ~1日2個以上も可~
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【保健】ポケモンGOで運動量up! ~仲間でワイワイの効果~

2017年01月22日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)巷で噂される「ポケモンGO(ポケGO)」の運動量増進効果は、控えめに見積もったほうがいいらしい。2016年末、英国医学雑誌(BMJ)のクリスマス特集号に掲載された報告から。
 研究者らは、インターネット経由で参加者を募集し、2016年8月に「ポケGO」で生じる運動量の調査を実施。米国在住の「iPhone6」ユーザー1,182人(年齢18~35歳)が参加した。
  ①プレイヤー群・・・・すでに「トレーナーレベル5」以上でゲームを行っている560人(47.4%)
  ②非プレイヤー群・・・・その他
とし、スマホに自動的に記録されるヘルスケア・データから「ポケGO」インストール前後の1日の歩数を比較した。
 平均歩数の変化をみると、①のインストール後の平均歩数は、1週目は955歩/日に上昇、しかし2週目は906歩/日、3周目で544歩/日にガクッと落ちた。その後もゆるゆると減り続け、6周目にしてついに②と同じ歩数に落ち着いてしまった。
 ちなみに、歩幅を80cmとして、時速4kmの速さで歩くとすると、955歩は毎日11分だけ余計に歩く計算になる。1週間続ければ、遊んでいる間にWHOが推奨する「週150分間の運動」のおよそ半分を達成できることになる。

 (2)研究者は、「効果は一時的なものであり、健康への影響はボチボチ(モデレート)といったところ」としているが、少なくとも6週間は運動量を増やした点を評価。今後は、運動量だけでなく、気分転換や人と交流することによる健康効果も検討の余地があるという。

 (3)人間は飽きっぽい生き物だ。学習も遊びも「予想以上のご褒美」が続かないと、意欲は急降下する。ただ近年の研究で、誰かに「褒められる」という感情体験も脳内の報酬系を活性化し、行動の習慣化に一役買うことがわかってきた。
 ダイエットやランニングのような苦行だって、「褒め合う」仲間がいれば何とか続く。「ポケGO」効果を長続きさせるコツも、報酬より仲間とワイワイ遊ぶこと、なのかもしれない。

□井出ゆきえ(医学ライター)「ポケモンGOで運動量up!/ただし、最初の1週間だけ ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.3~」(「週刊ダイヤモンド」2017年1月21日号)
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 【参考】
【保健】「過剰診断」か「見落とし」か ~マンモグラフィー検診のリスク~
【保健】悪性腫瘍ばりの「足の狭心症」 ~運動・喫煙で早期に対応を~
【保健】ワクチンを接種し損ねても ~インフル予防に補中益気湯~
【保健】高齢者は健康な生活、他方、若い世代は生活習慣に課題
【保健】子供の感染性急性胃腸炎に ~家庭でできる経口補水療法を~
【保健】痛風発作の薬は低用量で/米国のガイドラインが推奨
【保健】社会文化的伝統は肥満のもと ~年末~春は危険だらけ~
【保健】サルコペニア肥満で糖尿病!? ~筋肉減でインスリン分泌低下~
【保健】子どもの砂糖摂取量は1日25g以下に ~肥満症対策のため清涼飲料より水~
【保健】偽薬効果は学習効果? ~慢性的な腰痛が軽減~
【保健】中高年の性行動と認知機能
【保健】揚げ物はレジリエンス(心の弾力・回復力)に悪影響?
【保健】カロリー制限か運動療法か、どちらか一つじゃダメか?
【保健】遺伝子検査で再発リスクを評価 ~乳癌、抗癌剤治療の回避も~
【保健】慢性疲労症候群に関係か ~腸内細菌叢~
【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~
【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで
【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
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【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
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【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
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【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
【保健】照明用白色LEDのブルーライトは安全か?
【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

【南雲つぐみ】寒たまご ~1日2個以上も可~

2017年01月21日 | 医療・保健・福祉・介護
 自然環境で育った鶏は、日照時間が短く日差しの弱い冬の間、あまり卵を産まない性質がある。一方、寒い時期に生まれた希少な卵は栄養価も高く「寒たまご」と呼ばれ、縁起物として金運上昇や無病息災の祈願にも使われるという。
 温度や日照時間が管理された養鶏場では、鶏は冬でも安定して卵を産む。このことから卵は「物価の優等生」といわれるが、冬は卵の価格がやや高い。これは生産数が少ないというより、需要が多いからだという。
 卵は完全栄養食といわれ、タンパク質、脂質、多くのビタミンとミネラルを含むが、ビタミンCと食物繊維は含まれていない。そこでこれらの栄養素を含む大根などの根菜類と一緒に、おでんなどにして食べるとよい。
 卵はコレステロールが高いので、1日1個までといわれてきたが、卵黄に含まれるレシチンにはコレステロールを溶かす働きがあるという。また、最近の研究では、もともと脂質異常などがない人は、コレステロールを含む食品を食べても血中コレステロールには影響しないといわれている。

□南雲つぐみ(医学ライター)「寒たまご ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年1月15日)
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 【参考】
【南雲つぐみ】安納芋の栄養価と味わい ~焼くか蒸す~
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【南雲つぐみ】七草がゆ
ミカンのうんちく ~延命長寿の果実~
【南雲つぐみ】鍋で養生 ~今年1月5日は小寒~
【南雲つぐみ】お雑煮の食べ方 ~事故の防止法~

【食】チャーハンと焼めしはどう違うか ~東日本と西日本~

2017年01月21日 | 社会
 チャーハンが日本に広まったのは昭和30年代。チャーハンは中部以東で主にそう呼ばれ、京都・大阪以西では焼き飯と呼ばれることが多い。東日本では焼いたおにぎりを「焼き飯」と呼ぶ習慣があり、炒めご飯の新料理を区別する必要からチャーハンの呼び名が早くから定着した。一方、西日本ではその区別の必要があまりなく、焼き飯が炒めご飯を指す名となった。
 似た料理のピラフは、油で炒めて炊く。インド生まれの料理。語源はサンスクリット語のプラーカ(大きな一皿の飯)だ。それがペルシャ、トルコ経由でフランスに伝わり、ピラフとなった。
 かつて日本でも奈良時代から油飯という料理があった。ごま油を入れて炊いた飯だ。インドから中国への船が難破して日本に漂着。彼らがこのピラフを日本に伝えたとされる。
 究極のチャーハンの作り方には、まずは中華鍋を火にかけて空焼きし、煙が立つくらい熱する。温度が上がらないと香ばしさが出ない。
 炊きたての飯がほぐれやすく、チャーハン向きだが、普通は残りの冷や飯で手早く作るのが一般的だ。

□小山鉄郎(共同通信編集委員)「佐藤泰志「そこのみにて光輝く」/残りの冷や飯で手早く ~文学を食べる38~」(日本海新聞 2017年01月19日)
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【保健】「過剰診断」か「見落とし」か ~マンモグラフィー検診のリスク~

2017年01月20日 | 医療・保健・福祉・介護
 (1)日本では、40歳以上の女性に対し、2年に1回マンモグラフィー検診が奨励されている。日本人女性は、30代後半~40代に乳癌発症のピークがあるからだ。
 一方、米国では発症のピークが60代なので、50~74歳の女性に2年ごとの検診が推奨されている。

 (2)その米国ョッキングな報告があった。マンモグラフィー検診の普及前と後で「過剰診断」例が明らかに増加したというのだ。
 調査は、癌登録データからマンモグラフィー検診が
  (a)普及する前の1975~79年の検診例 
  (b)普及後の2000~02年の検診例
を比較。その結果、
  (a)①2cm未満の小さな病変(超早期癌)の検出率が36%
    ②2cm以上の大きな病変(早期進行癌)の検出率が64%
  (b)①2cm未満の小さな病変(超早期癌)の検出率は68%((a)の2倍近くに増加)
    ②2cm以上の大きな病変(早期進行癌)の検出率32%((a)の半分に減少)

 (3)対人口比で推計すると、早期進行癌の発生が10万対30人。一方、超早期癌は10万対162人にも及んだ。
 一見、早期発見癌・治療が叶ったように見える。しかし、研究者は「放っておいても、何の症状も出ない小さい病変が検出され、10万対132人の女性が『過剰診断』のリスクを被る」と指摘した。
 さらに、「死亡率低下へのマンモグラフィー検診の貢献度は3分の1程度で、残る3分の2は治療の進化による」と冷ややかに断定している。

 (4)一方、日本では「過剰診断」より「見落としリスク」が問題になっている。乳腺が濃いタイプのマンモグラフィー画像の場合、乳腺の白い影に病変が隠されてしまうのだ。
 実は、日本人女性の過半数は乳腺が濃いタイプだ。特に若いうちは、マンモグラフィー検診より超音波検診の方が見落としが少ない。
 日本では、乳癌検診の内容を見直し中で、マンモグラフィー検診と超音波検診の併用が検討されている。もし併用がスタンダードになれば、見落としが減る一方、過剰診断リスクが増加する可能性がある。
 健診結果は「確定」ではない。結果に慌てず、冷静に2次検査を受けることだ。確定診断を基に主治医と治療の計画を立てることが、適正治療と延命につながる。

□井出ゆきえ(医学ライター)「「過剰診断」か「見落とし」か/マンモグラフィー検診のリスク ~カラダご医見番・ライフスタイル編 No.325~」(「週刊ダイヤモンド」2016年11月19日号)
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 【参考】
【保健】悪性腫瘍ばりの「足の狭心症」 ~運動・喫煙で早期に対応を~
【保健】ワクチンを接種し損ねても ~インフル予防に補中益気湯~
【保健】高齢者は健康な生活、他方、若い世代は生活習慣に課題
【保健】子供の感染性急性胃腸炎に ~家庭でできる経口補水療法を~
【保健】痛風発作の薬は低用量で/米国のガイドラインが推奨
【保健】社会文化的伝統は肥満のもと ~年末~春は危険だらけ~
【保健】サルコペニア肥満で糖尿病!? ~筋肉減でインスリン分泌低下~
【保健】子どもの砂糖摂取量は1日25g以下に ~肥満症対策のため清涼飲料より水~
【保健】偽薬効果は学習効果? ~慢性的な腰痛が軽減~
【保健】中高年の性行動と認知機能
【保健】揚げ物はレジリエンス(心の弾力・回復力)に悪影響?
【保健】カロリー制限か運動療法か、どちらか一つじゃダメか?
【保健】遺伝子検査で再発リスクを評価 ~乳癌、抗癌剤治療の回避も~
【保健】慢性疲労症候群に関係か ~腸内細菌叢~
【保健】脳トレに有酸素運動をプラス ~認知機能と記憶力が向上~
【保健】標準体重なのに2型糖尿病?/BMIが「1」増加しただけで
【保健】受動喫煙は確実に癌、脳・心疾患、乳幼児突然死症候群を生む
【保健】嫌な気分の時こそ、動く ~うつ病治療に行動活性化療法~
【保健】孤独リスクも欧米化する?/宴会文化が廃れた後は
【保健】茶カテキンによる肝障害でノルウェーがサプリメント含有量規制へ
【保健】学んで4時間後に運動すると記憶が定着 ~記憶術~
【保健】飲む抗癌剤で生存率改善へ ~膵臓癌の再発を抑制~
【保健】恐竜も腫瘍を患う ~癌は進化の宿命~
【保健】高血圧にはモーツァルト ~安静に寝ているより効果的~
【保健】塞栓症リスクが低いピルは?/エストロゲン量と黄体ホルモンで違い
【保健】悲しいと食べすぎる ~食べ放題は幸せなときに~
【保健】「夏の蚊対策国民運動」 ~ジカ熱対策~
【保健】2型糖尿病発症にも民族差/アジア系は「BMI23」でリスク
【保健】ジャガイモに高血圧リスク/ノンオイルでも要注意 
【保健】ADHDに「ゲーム療法」?/2製品が臨床試験へ
【保健】男性は運送業、女性は医療・介護 ~メタボになりやすい業種~
【保健】健康生活の王道は「食」 ~食事バランスガイドと死亡率~
【保健】眼底検査で何がわかるか ~眼疾患だけではない~
【保健】弾性ストッキングが効果的 ~エコノミークラス症候群対策~
【保健】マインドフルネスで腰痛改善 ~認知行動療法と同じ効果~
【保健】歯磨きが心血管疾患を予防 ~毎食後で発症リスクを軽減~
【保健】ガン=生存時代の就労支援 ~治療と仕事の両立に指針~
【保健】糖尿病患者の降圧目標値 ~140mmHgでよい?~
【保健】睡眠不足でスナック菓子を渇望、体重増加 ~大麻並みの快楽
【保健】コーラ1缶で薬の吸収率がアップ ~抗癌剤の薬効~
【保健】その一言で妻の2型糖尿病リスクが減少 ~「先に寝ていて」~
【保健】先進国では認知症が減少? ~予防の鍵は生活習慣の改善~
【保健】生活設計は長期戦か短期決戦か ~癌の臓器別・病期別生存率~
【保健】イチゴとオレンジはEDに効く ~米国の研究報告~
【保健】高齢者の服薬適正化にGL ~容易な多剤併用に警鐘~
【保健】朝食抜きに脳卒中リスク 阪大など調査 大規模調査で1.18倍高
【保健】下剤は脳・心血管疾患リスク> ~背景にストレスや運動不足~
【保健】高脂肪食でシナプスが消失? ~動物実験~
【保健】2型糖尿病とフライド・ポテトとの関係 ~ポテトは煮物で~
【保健】世帯の所得と健康リスクの関係 ~食習慣と飲酒習慣~
【保健】抗がん剤の価格差は最大4倍以上 ~WHOの調査~
【保健】より危険な睡眠時無呼吸 ~脳・心疾患のリスク増~
【保健】初日の出の心身的効果 ~鬱対策は光を浴びて~
【保健】日本人肥満男性の食事と運動 ~糖尿病予防~
【保健】適性な「降圧目標値」 ~120未満で関連疾患が3割低下~
【保健】自由な裁量権でスリムに ~ストレスでメタボ~
【保健】目の老化には赤と緑と橙色 ~加齢黄斑変性症の予防~
【保健】早期発見のためにエコーと併用 ~乳がん検診~
【保健】骨折予防はカルシウムのほかに・・・・
【保健】前糖尿病患者は食習慣の改善を ~全国糖尿病週間~
【保健】糖質制限より脂質制限? ~体脂肪を減らす~
【保健】受動喫煙が歯周病リスクに ~ただし男性のみ~
【保健】貧乏ゆすりが命を救う? ~マナーより健康~
【保健】「高収入の勝ち組」の健康リスク? ~50歳以上の有害な飲酒~
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【保健】目の愛護デー ~緑内障による失明を予防~
【保健】長時間労働は脳卒中リスク ~週41~48時間でも上昇~
【保健】ほぼ毎日食べると、死亡リスクが14%減少 ~唐辛子~
【保健】水族館でリラックス効果 ~血圧・心拍数に好影響~

【南雲つぐみ】安納芋の栄養価と味わい ~焼くか蒸す~

2017年01月20日 | 医療・保健・福祉・介護
 デザートに使われるので知っていたが、アンノウイモ(安納芋)はこの冬初めて入手した。鹿児島県種子島の特産で、数年前に焼き芋にして冷凍した製品が通販で人気となり、全国に広まった。
 アンノウイモの焼き芋は、サツマイモのようなホクホク感はなく、クリームのような状態だ。これはでんぷん量が少なく水分が多い「粘質性」だから。ショ糖は一般的なサツマイモの4倍も含まれ、加熱後の糖度は30パーセントを超えることもあるという。メロンやカキの糖度が約18パーセントなんおで驚くべき甘さである。
 アンノウイモはキントキイモやベニコガネなどに比べて、表皮が白っぽく、小さくて丸い。果肉は明るいオレンジ。この色はカロテンという色素成分で、体内でビタミンAに変換されて目や粘膜、皮膚の健康を保つそうだ。他のサツマイモと同じくビタミンBやE、Cも多い。イモ類のビタミンCは加熱しても壊れにくいのが特徴で風邪の予防にもいいだろう。
 ねっとりした甘さを出すためには、水分を飛ばす電子レンジではなく、焼く、蒸すなどの方法がいいだろう。

□南雲つぐみ(医学ライター)「アンノウイモの栄養価 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年1月13日)
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 【参考】
【南雲つぐみ】体に合う椅子とは ~背中・腰・太もも~
【南雲つぐみ】小正月には小豆がゆ ~むくみによる体重増の対策~
【南雲つぐみ】「おなかの風邪」の予防と事後処理 ~ノロウイルス、「ロタウイルス」~
【南雲つぐみ】食事制限だけのダイエットは危険 ~運動が大事~
【南雲つぐみ】温泉の安全な入り方
【南雲つぐみ】七草がゆ
ミカンのうんちく ~延命長寿の果実~
【南雲つぐみ】鍋で養生 ~今年1月5日は小寒~
【南雲つぐみ】お雑煮の食べ方 ~事故の防止法~


【佐藤優】米国のキリスト教的価値観、サイバー戦争論、日本会議

2017年01月19日 | ●佐藤優
   
 ①木谷佳楠『アメリカ映画とキリスト教120年の関係史』(キリスト新聞社 1,600円)
 ②伊藤寛『サイバー戦争論 ナショナルセキュリティの現在』(原書房 2,500円)
 ③菅野完『日本会議をめぐる四つの対話』(K&Kプレス 1,500円)

 (1)①は、米国におけるキリスト教の性格について掘り下げた傑作だ。人工的な米国社会では、米国人という概念は自明ではない。米国人である(being)ということではなく、米国人になる(becoming)という生成過程が終わることなく続いている。その過程に米国型キリスト教が組み入れられていることを木谷氏(同志社大学神学部助教)は、この作品の中で見事に描いている。
 <アメリカ独自のキリスト教的価値観の影響を強く受けた映画を、これまで日本の観客も無批判に受け入れてきたという点である。2050年以内に終末が訪れることを、5人中ふたりが信じている国で作られた映画を、我々は単なる娯楽として消費し続けているのである。日本の観客が無自覚的にアメリカ的価値観と同調し、アメリカ映画によって繰り返し提示される善悪二元論や終末観、そしてアメリカン・ヒーローに代表されるメシア観を取り込んでいる可能性は否定できない>
 この指摘は、神学的な訓練を本格的に受けた人にしかできない。

 (2)②は、経済産業省のサイバー対策審議官を務める著者による優れた教科書だ。
 <サイバー技術は基本的に、どんな貧乏な国でも危険なサイバー技術を保有することは可能であるし、そもそもソフトウェア関連のものが多いので、その技術は隠そうと思えば隠せる。たとえ査察により疑わしいソフトウェアを見つけても民間技術との差異がほとんどないのだ>
 著者はこう指摘するが、サイバー攻撃の挙証はとても難しい。

 (3)③は、日本会議の実態を解明しようとする意欲的な作品だ。対談者の一人である魚住昭氏(日本会議を詳しく取材したことがある)の次のような発言が事柄の本質を突いている。
 <僕はみんなが日本会議に注目してくれるのは嬉しいんだけれども、嬉しい反面、危険だなとも思っているんです。日本会議がクローズアップされればされるほど、逆に実体より大きく見せちゃうんですよ。今までみんなが知らなかったことに光を当てることは大事なことなんだけれども、それをあまり強調しすぎると、彼らの思うつぼになっちゃうんですよね。菅野さんも、日本会議はフロント団体をたくさん作って、あたかも自分たちの勢力が巨大であるかのような演出をしているという意味のことを書いていますよね。その戦略に乗ってしまってはまずいなと思うんです>
 現在、マスメディアにおいて日本会議の安倍政権に与える影響が、実体よりもはるかに大きく映っている。

□佐藤優「米国のキリスト教的価値観 ~知を磨く読書 第182回~」(「週刊ダイヤモンド」2017年1月21日号)
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【南雲つぐみ】体に合う椅子とは ~背中・腰・太もも~

2017年01月18日 | 医療・保健・福祉・介護
 Aさん(60)は長く「畳にちゃぶ台」の生活だったのだが、膝が悪くなり正座がつらいのでテーブルと椅子を購入した。部屋の雰囲気にも合っていたが、次第に座りにくいことに気付いた。
 体に合わない椅子に長時間座っているのは、立っている時よりも背中や腰には負担が掛かる。背中が丸まり猫背になり、背骨の自然なS字カーブが妨げられるからだ。そのまま無理をして座り続けていたら、腰痛の原因にもなりかねない。
 では、自分に合う椅子かどうかを見分けるにはどうしたらよいだろう。
 まず、背もたれに届くまで深く腰掛け、椅子の背と自分の腰がフィットするかどうかを確かめる。背中と背もたれの間にクッションなどを入れて調節しても良い。
 座面は、両足が床につくのはもちろんのこと、その状態で太ももと座面との間に手のひらが入るくらいの高さで調節すると良い。座面が高すぎると体重が太ももを圧迫して、下半身の血液循環が悪くなり、むくみが出やすくなるそうだ。
 購入する前にじっくり座り心地を試してみよう。

□南雲つぐみ(医学ライター)「体に合う椅子とは ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年1月10日)
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 【参考】
【南雲つぐみ】座りっぱなしは危険 ~血栓~
【南雲つぐみ】小正月には小豆がゆ ~むくみによる体重増の対策~
【南雲つぐみ】「おなかの風邪」の予防と事後処理 ~ノロウイルス、「ロタウイルス」~
【南雲つぐみ】食事制限だけのダイエットは危険 ~運動が大事~
【南雲つぐみ】温泉の安全な入り方
【南雲つぐみ】七草がゆ
ミカンのうんちく ~延命長寿の果実~
【南雲つぐみ】鍋で養生 ~今年1月5日は小寒~
【南雲つぐみ】お雑煮の食べ方 ~事故の防止法~





【南雲つぐみ】座りっぱなしは危険 ~血栓~

2017年01月17日 | 医療・保健・福祉・介護
 「エコノミークラス症候群」は、飛行機の狭い座席に長時間座っていて発症することから、そのネーミングがついた。正式には「急性肺動脈血栓塞栓症」。長く同じ姿勢でいると、特に下半身の血流が悪くなり、足の静脈に血栓ができやすくなる。血栓とは血の塊のことで、これが立ち上がったり、歩き出したりした勢いで血流に乗って肺に入り、血管を詰まらせる。
 最近でも、東北や熊本の震災など、車中で避難生活をしていた人にエコノミー症候群で倒れる人が見られた。飛行機だけでなく、自動車に長く乗っていることも危険であることが分かったのだ。
 特に、寒い季節は体の動きが鈍くなり、じっとしていることが多くなる。また、冬場は空気が乾燥するのでこまめに水分を取る必要があるが、発汗しないので、のどが乾きにくく脱水になりやすい。そのため血液が濃くなって血栓ができやすくなるという。
 まずは水分補給をしっかり心がけよう。さらに長時間同じ姿勢で仕事をする人も、足首をゆっくり曲げ伸ばしするなどして血流を促すとよい。

□南雲つぐみ(医学ライター)「座りっぱなしは危険 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2017年1月16日)
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 【参考】
【南雲つぐみ】小正月には小豆がゆ ~むくみによる体重増の対策~
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【加賀野有理】慢性腰痛の実態 ~急性腰痛との違い~

2017年01月17日 | 医療・保健・福祉・介護
 日本人のけがや病気のうち、腰痛を訴える人は多い。男性は1位で女性は2位である(厚生労働省「国民生活基礎調査」平成25年)。
 このほど塩野義製薬(本社・大阪市)と日本イーライリリー(本社・神戸市)が共同で、慢性腰痛症の患者2,350人、整形外科医111人を対象に慢性腰痛に関する調査を行った。その中で9割以上が日常生活に、5割以上が趣味や外出に支障があると回答した。
 また、3人に1人が腰痛で仕事を辞めたいと思ったことがあると回答。腰痛が原因で生活の質が著しく低下してしまうことが判明した。
 痛みが3カ月以上続くものを「慢性腰痛」といい、急性腰痛と区別される。特に生活の質を低下させるのは、前者だ。
 治療についても問題が浮き彫りとなった。「明確な治療目標を設定している」と回答したのは、患者、医師とも半数に満たなかったのだ。また、病状改善の目標設定をした患者の治療法に対する満足度は、設定していない患者の2倍以上となり、患者と医師が合意して行われる治療の大切さが分かる結果となった。

□加賀野有理(サイエンスライター)「腰痛の実態 ~歳々元気~」(「日本海新聞」 2016年12月8日)
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 【参考】
【加賀野有理】大腸がんの調査 ~早期発見・早期治療なら95%以上が治る~
【加賀野有理】美肌体操で体力向上 ~日女体大と化粧品メーカーが開発~
【加賀野有理】健康サポート薬局 ~地域包括ケアシステム~
【加賀野有理】ヨーグルトに漬け込んでパスタに入れても ~栄養満点のブリ~
【加賀野有理】雁が音茶の風味
【加賀野有理】三つが乱れる正月病 ~食生活・生活リズム・睡眠リズム~
【加賀野有理】カキの長所と短所
【加賀野有理】クリスマスは2週間 ~その秘密~
【加賀野有理】地図を見る ~方向オンチを治す法~
【加賀野有理】アパートの屋上で暮らすファッションモデル ~ミニマリスト~
【加賀野有理】脳の栄養 ~EPAとDHA~
【加賀野有理】今年の冬の天気、ラニーニャ現象
インフルエンザワクチン
【加賀野有理】大掃除の道具
【加賀野有理】サザンカとツバキ

【佐藤優】露外交官の追放問題に見るトランプ氏の能力

2017年01月16日 | ●佐藤優
 (1)米ロ間で奇妙な外交ゲームが行われている。2016年12月29日、オバマ大統領は、ロシアがサイバー攻撃を仕掛けて米大統領選挙に介入したとの理由で、米駐在のロシア外交官35人に72時間以内の国外退去を命じた。
 <サイバー攻撃を巡っては、米大統領選中、民主党全国委員会やクリントン民主党候補陣営がハッキング被害に遭い、大量のメールが内部告発サイト「ウィキリークス」で暴露された。トランプ氏はメール内容を材料に攻め、選挙戦に影響を及ぼしたとされる。
 オバマ氏はロシアの関与を指摘、今月の記者会見で、プーチン大統領が関与した可能性に踏み込んだ。29日の声明でも「すべての米国民はロシアの行動を警戒するべきだ」と訴えた。
 オバマ政権は同日、サイバー攻撃は、ロシアの軍参謀本部情報総局(GRU)や連邦保安局(FSB)など計5機関・団体の仕業と断定。GRUが主導して情報職員や技術を使って攻撃を仕掛け、FSBなどが技術協力や職員の訓練などで支援していたと指摘した。
 その上で、報復措置として、情報機関幹部に制裁を科すと同時に、スパイと認定した外交官ら35人に72時間以内の国外退去を命じた。ニューヨーク州とメリーランド州にあるロシア政府関連施設をスパイ活動の拠点と認定し、閉鎖。さらにオバマ氏は「公表されないものもある」とし、米国がサイバー攻撃をやり返すことに含みを持たせた。>【注1】

 (2)ロシア、米国、中国、イスラエルなどのインテリジェンス機関がサイバー工作を行っていることは公然の秘密だ。米国の大統領選挙でもGRUやFSBは「いつものように」サイバー工作を行い、民主党、共和党などの情報を入手したのだろう。
 ただし、ロシア国家指導部の高度な政治的判断によって、共和党に関する情報のみをリークしたことに対してオバマ大統領は腹を立てているようだ。ロシアによるサイバー攻撃がなかったならば、民主党のクリントン候補が大統領に当選していたということを強く滲ませる主張だ。米国の民主主義は、ロシアのサイバー攻撃によって基盤を覆されるほど脆弱であるということになる。
 この種の問題を外交の場に持ち出しても不毛な結果になる。サイバー攻撃を実際に行っていてもいなくても、ロシアが否定するのは自明の理だからだ。ロシアがシラを切っている場合、それを覆すためには米国がロシアのサイバー攻撃であることを示す証拠を提示しなくてはならない。しかもオバマ大統領は、プーチン大統領が今回のサイバー攻撃に関与しているとの見方を示しているわけだから、その証拠も開示しなくてはならない。
 しかし、これらの証拠を開示するならば、米国の通信傍受能力とプーチン大統領に対する情報収集能力がロシアを含む諸外国に知られてしまうことになる。だから、米国は決定的な証拠を開示することはできない。そのため、米国とロシアの間で「やった」「やっていない」の水掛け論になるのは目に見えている。

 (3)外交の世界では、相互主義が原則だ。A国がB国の外交官をX人追放した場合、B国はA国の外交官をX人追放する。各国の防諜機関は、追放順位を記した外交官の国別リストを作成している。翌30日、ロシア外務省は、露駐在の米国人外交官35人を国外退去させる案をプーチン大統領に示したと発表した。
 しかし、意外なことにプーチン大統領は、対抗措置は当面見合わせ、今月20日に就任するトランプ次期大統領の対応を見るという見解を述べた。
 ロシア政府が運営するラジオ兼インターネットサイト「スプトーニク」は、次のように伝えた。
 <プーチン大統領は米国の新たな対露制裁にコメントし、米政権の新たなアプローチは煽動であり、この先の露米関係を損なう目的で出されたものと語った。声明はクレムリンのサイトに掲載された。
 プーチン大統領、ロシアはこの先の露米関係回復の歩みをトランプ氏の行なう政治に基づいて構築する プーチン大統領は、ロシアには相応する報復のための根拠は揃っていると補足した上で 「報復措置を採る権利を手元に残した上で我々は「台所(世間話)」レベル、無責任な外交レベルまで自分を貶めることはしまい。この先に採る露米関係の回復のアプローチはトランプ大統領政権が行う政策に依拠して構築していく」と語った。>【注2】

 (4)外交常識に照らして、米国がロシアの外交官を35人も追放したのに、ロシアがそれに対する対抗措置を見合わせるのは異例の事態だ。米露間で35人の外交官の大量追放合戦が行われれば、米露関係は2、3年停滞する。サイバー攻撃を含むインテリジェンス戦は「裏世界」に限定して、表の世界では、淡々と仕事をすべきであるというプーチン大統領の意向を反映しているのだろう。
 これに対するトランプ氏の反応が興味深い。
 <ロシアが米大統領選を狙ったサイバー攻撃をしたとされる問題について、トランプ次期米大統領は12月31日、「ロシアではなく、他の誰かがやった可能性もある」と、南部フロリダ州パームビーチで記者団に対し語った。その上で「みんなが知らない情報を持っている」と述べ、数日中にその内容を公表する考えを明らかにした。>【注3】

 (5)米国は、現在、政権移行期だ。CIAは、プーチン大統領の承認下、GRUとFSBが米国の民主党、共和党に対するサイバー攻撃を行ったというインテリジェンス情報をトランプ次期大統領の政権移行チームにも伝えているはずだ。当然、トランプ氏もこの情報を得ている。その上で、トランプ氏は、「ロシアではなく、他の誰かがやった可能性もある」と述べたのだろう。
 オバマ大統領は、米露関係の障害になる大きな置き土産をして政権を去ろうとしたが、プーチン大統領とトランプ氏によって、体をかわされてしまった。
 トランプ氏は、インテリジェンスに関しては素人のはずだ。しかし、サイバー戦のような裏世界のインテリジェンスに関する問題を表の世界に上げて、外交を混乱させるのはよくないと考えているようだ。
 このセンスの持ち主ならば、CIAやNSA(国家安全保障局)やFBIなどが入手した機微に触れる情報を、裏で巧みに用いて、政権を運営できる。正義感が過剰なオバマ大統領と比較して、トランプ氏は、裏と表を使い分けることができるインテリジェンスン能力に長けていることが、今回のロシア外交官の追放問題をめぐって垣間見えた。
 トランプ氏が外交やインテリジェンスの素人であると軽く見てはならない。通信傍受やヒュミントにとどまらず、外国の政権転覆のような工作活動を含むインテリジェンスを最大限に活用して、米国の国益の極大化を図る可能性がある。

 【注1】記事「サイバー攻撃巡り、米が報復措置 ロシアは強く反発」(朝日新聞デジタル 2016年12月30日)
 【注2】記事「プーチン大統領、ロシアはこの先の露米関係回復の歩みをトランプ氏の行なう政治に基づいて構築する」(スプトーニク 2016年12月30日)
 【注3】記事「トランプ氏「ロシアでない可能性も」 サイバー攻撃巡り」(朝日新聞デジタル 2017年1月2日)

□佐藤優「露外交官の追放問題に見るトランプ氏の能力 ~飛耳長目 第127回~」(「週刊金曜日」2017年1月13日号)
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 【参考】
【佐藤優】北方領土交渉に必要な反日ロビー活動の封印
【佐藤優】沖縄に対する構造的差別 ~「土人」発言~
【佐藤優】尖閣諸島から米国が手を引く可能性 ~北方領土交渉と日米安保~
【佐藤優】ウズベキスタンにIS流入の危険 ~カリモフ大統領死去~
【佐藤優】国後島で日本人通訳拘束/首脳会談への影響は ~実践ニュース塾~
【佐藤優】モサド長官から学んだインテリジェンスの技術
【佐藤優】ロシア大統領府長官にワイノ氏就任の意味 ~北方領土交渉~
【佐藤優】西郷と大久保はなぜ決裂したのか ~征韓論争~
【佐藤優】開発独裁とは違う明治維新 ~目的は複数、リーダーも複数~
【佐藤優】岩倉使節団が使った費用、100億円 ~明治初期~
【佐藤優】反省より不快示すロシア ~五輪ドーピング問題~
【佐藤優】 改憲を語るリスクと語らないリスク ~改憲問題~
【佐藤優】+池上彰 エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】スコットランドの動静と沖縄の日本離れの加速
【佐藤優】沖縄の全基地閉鎖要求・・・・を待ち望む中央官僚の策謀
【佐藤優】ナチスドイツ・ロシア・中国・北朝鮮 ~世界の独裁者~
【佐藤優】急進展する日露関係 ~安倍首相が取り組むべき宿題~
【佐藤優】日露首脳会談をめぐる外務省内の暗闘 ~北方領土返還の可能性~
【佐藤優】殺しあいを生む「格差」と「貧困」 ~「殺しあう」世界の読み方~
【佐藤優】一時中止は沖縄側の勝利だが ~辺野古新基地建設~
【佐藤優】情報のプロならどうするか ~「私用メール」問題~
【佐藤優】テロリズムに対する統一戦線構築 ~カトリックとロシア正教~
【佐藤優】北方領土「出口論」を安倍首相は訪露で訴えよ
【佐藤優】ラブロフ露外相の真意 ~日本政府が怒った「強硬発言」~
【佐藤優】プーチンが彼を「殺した」のか? ~英報告書の波紋~
【佐藤優】北朝鮮による核実験と辺野古基地問題
【佐藤優】サウジとイランと「国交断絶」の引き金になった男 ~ニムル師~

【佐藤優】矛盾したことを平気で言う「植民地担当相」 ~島尻安伊子~
【佐藤優】陰険で根暗な前任、人柄が悪くて能力のある新任 ~駐露大使~
【佐藤優】世界史の基礎を身につける法、決断力の磨き方
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【佐藤優】知を身につける ~行為から思考へ~
【佐藤優】プーチンの「外交ゲーム」に呑まれて
【佐藤優】世界イスラム革命の無差別攻撃 ~日本でテロ(3)~
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【佐藤優】小泉劇場と「戦後保守」・北方領土、反知性主義を脱構築
【佐藤優】【中東】「スリーパー」はテロの指令を待っている
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【佐藤優】多忙なビジネスマンに明かす心得 ~情報収集術(2)~
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【佐藤優】世の中でどう生き抜くかを考えるのが教養 ~知の教室~
【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
【佐藤優】『佐藤優の実践ゼミ』目次
『佐藤優の実践ゼミ 「地アタマ」を鍛える!』
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【佐藤優】『知の教室 ~教養は最強の武器である~』目次
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【佐藤優】表現力と読解力を向上させる技術 ~超したたか勉強術~
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【佐藤優】ロシアが警戒する日本とウクライナの「接近」 ~あれかこれか~
【佐藤優】【沖縄】知事訪米を機に変わった米国の「安保マフィア」
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【佐藤優】エリートには貧困が見えない ~貧困対策は教育~
【佐藤優】バチカンの果たす「役割」 ~米国・キューバ関係~
【佐藤優】日米安保(2) ~改訂のない適用範囲拡大は無理筋~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】日米安保(1) ~安倍首相の米国議会演説~
【佐藤優】外相の認識を問う ~プーチンからの「シグナル」~
【佐藤優】ヒラリーとオバマの「大きな違い」
【佐藤優】「自殺願望」で片付けるには重すぎる ~ドイツ機墜落~
【佐藤優】【沖縄】キャラウェイ高等弁務官と菅官房長官 ~「自治は神話」~
【佐藤優】戦勝70周年で甦ったソ連の「独裁者」 ~帝国主義の復活~
【佐藤優】明らかになったロシアの新たな「核戦略」 ~ミハイル・ワニン~
【佐藤優】北方領土返還の布石となるか ~鳩山元首相のクリミア訪問~
【佐藤優】米軍による日本への深刻な主権侵害 ~山城議長への私人逮捕~
【佐藤優】米大使襲撃の背景 ~韓国の空気~
【佐藤優】暗殺された「反プーチン」政治家の過去 ~ボリス・ネムツォフ~
【佐藤優】ウクライナ問題に新たな枠組み ~独・仏・露と怒れる米国~
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【佐藤優】【ピケティ】『21世紀の資本』が避けている論点
【ピケティ】本では手薄な問題(旧植民地ほか) ~佐藤優によるインタビュー~
【佐藤優】優先順序は「イスラム国」かウクライナか ~ドイツの判断~
【佐藤優】ヨルダン政府に仕掛けた情報戦 ~「イスラム国」~
【佐藤優】ウクライナによる「歴史の見直し」をロシアが警戒 ~戦後70年~
【佐藤優】国際情勢の見方や分析 ~モサドとロシア対外諜報庁(SVR)~
【佐藤優】「イスラム国」が世界革命に本気で着手した
【佐藤優】「イスラム国」の正体 ~国家の新しいあり方~
【佐藤優】スンニー派とシーア派 ~「イスラム国」で中東が大混乱(4)~
【佐藤優】サウジアラビア ~「イスラム国」で中東が大混乱(3)~
【佐藤優】米国とイランの接近  ~「イスラム国」で中東が大混乱(2)~
【佐藤優】シリア問題 ~「イスラム国」で中東が大混乱(1)~
【佐藤優】イスラム過激派による自爆テロをどう理解するか ~『邪宗門』~
【佐藤優】の実践ゼミ(抄)
【佐藤優】の略歴
【佐藤優】表面的情報に惑わされるな ~英諜報機関トップによる警告~
【佐藤優】世界各地のテロリストが「大規模テロ」に走る理由
【佐藤優】ロシアが中立国へ送った「シグナル」 ~ペーテル・フルトクビスト~
【佐藤優】戦争の時代としての21世紀
【佐藤優】「拷問」を行わない諜報機関はない ~CIA尋問官のリンチ~
【佐藤優】米国の「人種差別」は終わっていない ~白人至上主義~
【佐藤優】【原発】推進を図るロシア ~セルゲイ・キリエンコ~
【佐藤優】【沖縄】辺野古への新基地建設は絶対に不可能だ
【佐藤優】沖縄の人の間で急速に広がる「変化」の本質 ~民族問題~
【佐藤優】「イスラム国」という組織の本質 ~アブバクル・バグダディ~
【佐藤優】ウクライナ東部 選挙で選ばれた「謎の男」 ~アレクサンドル・ザハルチェンコ~
【佐藤優】ロシアの隣国フィンランドの「処世術」 ~冷戦時代も今も~
【佐藤優】さりげなくテレビに出た「対日工作担当」 ~アナートリー・コーシキン~
【佐藤優】外交オンチの福田元首相 ~中国政府が示した「条件」~
【佐藤優】この機会に「国名表記」を変えるべき理由 ~ギオルギ・マルグベラシビリ~
【佐藤優】安倍政権の孤立主義的外交 ~米国は中東の泥沼へ再び~
【佐藤優】安倍政権の消極的外交 ~プーチンの勝利~
【佐藤優】ロシアはウクライナで「勝った」のか ~セルゲイ・ラブロフ~
【佐藤優】貪欲な資本主義へ抵抗の芽 ~揺らぐ国民国家~
【佐藤優】スコットランド「独立運動」は終わらず
「森訪露」で浮かび上がった路線対立
【佐藤優】イスラエルとパレスチナ、戦いの「発端」 ~サレフ・アル=アールーリ~
【佐藤優】水面下で進むアメリカvs.ドイツの「スパイ戦」
【佐藤優】ロシアの「報復」 ~日本が対象から外された理由~
【佐藤優】ウクライナ政権の「ネオナチ」と「任侠団体」 ~ビタリー・クリチコ~
【佐藤優】東西冷戦を終わらせた現実主義者の死 ~シェワルナゼ~
【佐藤優】日本は「戦争ができる」国になったのか ~閣議決定の限界~
【ウクライナ】内戦に米国の傭兵が関与 ~CIA~
【佐藤優】日本が「軍事貢献」を要求される日 ~イラクの過激派~
【佐藤優】イランがイラク情勢を懸念する理由 ~ハサン・ロウハニ~
【佐藤優】新・帝国時代の到来を端的に示すG7コミュニケ
【佐藤優】集団的自衛権、憲法改正 ~ウクライナから沖縄へ(4)~ 
【佐藤優】スコットランド、ベルギー、沖縄 ~ウクライナから沖縄へ(3)~ 
【佐藤優】遠隔地ナショナリズム ~ウクライナから沖縄へ(2)~
【佐藤優】ユニエイト教会 ~ウクライナから沖縄へ(1)~ 

【小池百合子】都議会自民党への宣戦布告 ~その独特な視点~

2017年01月15日 | 社会
(1)小池知事の東京都政改革
 豊洲と東京五輪は、知事に就任する前から存在する議題なんどえ、後始末が一筋縄ではいかないことは想定していた。完璧な成果には届かなかったが、今まで隠されていた問題を明らかにできた意味は大きい。
 真に目指すものはその先にある。セーフシティ(安全な街)、ダイバーシティ(多様性のある街)、スマートシティ(環境・金融先進都市)。私は東京をこの三つのシティにしたい。東京は人・モノ・カネ・情報のすべてを兼ね備えた希有な都市だ。これを存分に活かし、万全の態勢でオリンピックを迎えたい。
 私はあくまでも「都民ファースト」が大事だと考えている。そのためには税金の使われ方をはじめとして、政策決定のプロセスを「見える」ようにすることが重要だと情報公開を徹底するようにした。
 東京都の予算は、一般会計だけで7兆円、公営企業会計・特別会計を合わせると13兆円。スウェーデンの国家予算に相当する額だ。だから、歴代の知事は「政党復活予算枠」200億円で都議会が言うことを聞くのだから「御の字」だと考えていたのだろうが、それは筋が違う。だって、財源は都民の税金ではないか。廃止は当然だ。

(2)小池知事の独特な視点
 小池百合子は、アラビア語を学ぼうとし、まずカイロのアメリカン大学に入った。英語でアラビア語の基礎をゼロから学び、その後カイロ大学に転入した。留学中の1973年には第四次中東戦争に遭遇した。中東和平の名のもとに、米国、英国、仏国、独国、ソ連と、あらゆる国々の首脳が毎週のようにサダト大統領と会談し、その裏では武器を売りつけて帰って行った。だから、エジプト軍の戦闘機は、ソ連製のミグ、フランス製のミラージュ、米国製のファントムと何でもあり。まさに「国際政治の坩堝」を目の当たりにした。
 そうした原体験があるから、小池知事は日本政治を鳥瞰する眼差しを持っている。
 彼女は、政治の世界で物事を動かすには三つの目が必要だと考えている。
  ①鳥の目・・・・物事を鳥瞰する目。
  ②虫の目・・・・ミクロの細やかな視点。
  ③魚の目・・・・トレンドを追う視点。寒流から暖流へ、餌となるプランクトンが多い潮流を追う目。小池自身は群れるのは好きなタイプではないが、トレンドや人々の関心がどの方向へ流れていくのか観察することは重要だと考えている。

□小池百合子×立花隆「都議会自民党への宣戦布告 選挙に勝って東京大改革を成し遂げる」(「文藝春秋」2017年2月号)
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 【参考】
【豊洲】都庁は伏魔殿 ~小池百合子・都知事の力量~