万 葉 歌 :萬葉集 巻十四東歌三五三九 「崩岸の上に 駒をつなぎて ・・・」
揮 毫 :大野篁軒
建 立 日 :平成8年3月吉日
建 立 者 :飯能市万葉の歌碑を建る会
所 在 地 :埼玉県飯能市阿須 阿須運動公園・万葉広場
飯能市の阿須を詠んだとされる万葉和歌が、巻14東歌3539・3541の2首あると言います。
その一つである巻14東歌3539の歌碑が、飯能市の阿須運動公園の万葉広場に建立されているとのことから訪ねて
みました。
万葉広場の一画に、二基の碑と説明板が並んでいます。
二基の碑が並んでいますので、便宜上、右の大きな碑を主碑 左の小さな碑を副碑と呼びます。
主碑の背面には何も刻まれておりませんので、副碑が主碑の碑陰の役目を果たしていると、私は、理解しました。
【主碑 碑文(歌)】
安受乃宇敝尓 古馬乎都奈伎弖 安夜抱可等 比等豆麻古呂乎 伊吉尓和我須流
あずの上に 駒を繋ぎて 危ほかど 人妻子ろを 息に吾がする
《訓読》 崩岸(あず)の上に駒をつなぎて危(あや)ほかと人妻児(ひとづまこ)ろを息(いき)にわがする
《大意》 崩れた崖の上に馬をつなぐと危ないように、私も人妻のあの子を命がけで思うのだ。
【副碑 碑文】
万葉集の東歌二首に歌われている安受(阿須)は後方の崖である。
前方に入間川、また遠く山並みを望む景勝の地である。
万葉の詩心が永く受け継がれることを願い、ここに歌碑を建立した。
万葉集には、阿須にちなんだ歌が主碑(歌碑)に書かれた歌のほかにもあり、阿須のことを詠んだものは2首あ
るということのようです。
【副碑 碑陰碑文】
この歌碑は、阿須共有地権者五十三名の協力により、古典の会、歌人会と共に「万葉歌碑を建てる会」を
設け、多くの方のご賛同を得て、飯能市地域づくり事業の一環として建てたものである。
平成八年三月吉日
飯能市万葉の歌碑を建る会
【説明板】 『萬葉集「安受」の二首』
副碑に書かれている2首について、それぞれの白文と書き下し文および説明が書かれているようですが、褪色し
ており読めません。
歌碑越しに入間川方向を見ています
歌碑は「アズ」=「もろく崩れそうな崖」に向って建てられています。
丁度、木が邪魔していて全体が見えませんが、写真左側の地肌が見える部分がその一部です。
ちょっと位置を変えて見ていますが、崩れた崖がよく見えます。
なお、巻14東歌3541の歌は
安受倍可良 古麻乃由胡能須 安也波刀文 比等豆麻古呂乎 麻由可西良布母
《訓読》 崩岸(あず)辺(へ)から駒の行(ゆ)ごのす危(あや)はとも人妻(ひとつま)子ろを目(ま)ゆかせらふも
《大意》 崩れた崖の上を駒が行くような危ない。そのように恋することは当てにならないと云っても自分の
思うようにならない娘子の、その娘がまばゆく感じられる。
のようです。
散策日:令和元年(2019)6月20日(木)