漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

紛らわしい漢字 「予ヨ」 と 「矛ム」

2017年11月29日 | 紛らわしい漢字 
 「予ヨ」と「矛ム」は似ている。両字の違いは「ノ」があるかないかだけ。最も簡単な覚え方は、「よ()の()ほこる(ほこ)は、盾(たて)を突きぬけムジュンなし」。つまり、+ノ=矛である。
 もっと詳しく両字の成り立ちを知りたい方は以下をご覧ください。

  予は、機織りの杼・シャトル
 ヨ・われ・あたえる  亅部           

 杼ひ
解字 金文は状のもの二つがずれて重なった形。篆文はがかさなり下の△から糸がでている形。いずれも機織りの横糸を左右に走らせるための道具である杼(ひ・シャトル)の象形で、杼が上方から下方へ移動するさま(実際は横に移動する)を描いている。隷書レイショ(漢代の役人などが主に使用した書体)から形が変わり現代字の予につながる。現在の予のマは上の杼、下部の「㇖+㇚」は下の杼と糸を表している。予は杼の原字である。本来の意味では使われず、仮借カシャ(当て字)して、「われ」の意味を表わし、また与(あたえる)に通じて、与える意を表す。本来のシャトルの意は、木をつけた杼チョ・ひが受け持っている。
意味 (1)われ(予)。=余。「予輩ヨハイ」(われら) (2)あたえる(予える)。「賜予シヨ」(身分の高い者から下の者に与える)「予奪ヨダツ」(あたえることとうばうこと=与奪)

なお、予は旧字・豫ヨ・あらかじめの新字体も兼ねるので、予(あらかじ)めの意も表す。
[豫]  ヨ・あらかじめ・かねて   亅部
解字 旧字は豫で 「象(ぞう)+予(行って帰る)」 の会意形声。予は機織りの杼(ひ)の形であり、タテ糸に横糸を通すため行き来するので「行って帰る」イメージがある。豫は、ゆっくりした象が行って帰ること。この動作は、あらかじめ予測できる意。豫は、新字体で象が略され、予と同じ字体になった。
意味 (1)あらかじめ(予め)。かねて(予て)。かねがね(予予)。まえもって。「予感ヨカン」「予告ヨコク」「予鈴ヨレイ」(本鈴の前に、あらかじめ鳴らす鈴) (2)ためらう。「猶予ユウヨ」 (3)たのしむ。


               矛ム <ほこ>
 ム・ボウ・ほこ  矛部

 銅矛の穂先
解字 長い柄の先に、鋭い両刃の穂先をつけた槍のような武器の象形。金文・篆文ともにかなり字形が変わっており、遺物の形と隔たりがある。矛は部首となるが、「ほこ」の意で音符ともなる。予(われ)と矛の混同に注意。
覚え方 よ()の()ほこる(ほこ)は、盾を突きぬけ盾なし 「予+ノ=矛
意味 ほこ(矛)。長い柄の先に両刃の剣をつけた武器。「矛盾ムジュン」(ほことたて。つじつまが合わない)「矛戈ボウカ」(矛と戈。戈は一つの枝のあるほこ)「矛戟ボウゲキ」(矛と戟。戟は二つの枝のあるほこ)
<紫色は常用漢字>




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