外務省 令和2年2月26日
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日本政府を代表して,人権理事会でステートメントを行う機会を得たことを大変光栄に思います。
まず,国際社会における喫緊の課題となっている新型コロナウイルス感染症への対応に関して一言申し上げます。
日本は,クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」について,国籍を問わず,乗客,乗員の健康確保に最大限配慮して対応してきています。同クルーズ船への対応も含め,引き続き,中国を始め世界各国と協力して,感染拡大の防止と一日も早い事態の収束に向けて,全力で取り組みます。そうした中,最近,東アジア系であることのみを理由として,施設の利用停止や心ない誹謗中傷が行われているとの情報に接しており,心を痛めています。そうした行為が起きないよう,人権理事会のこの場を借りて全ての人に呼びかけたいと思います。
さて,日本は,昨年までの3年間に引き続き,本年からの3年間も再び人権理事会の理事国を務めることとなりました。日本政府は,国際社会及び市民社会と緊密に連携しながら,国際社会における議論に積極的に参加し,人権の保護・促進に一層貢献していきます。
副議長,
日本は本年,様々な重要な国際イベントを主催します。それらにおいて,人権の観点の重要性を強調し,世界における人権の保護・促進を後押しします。
まず,女性活躍,女性の人権の保護・促進は日本が特に力を入れている分野です。本年4月に,第6回国際女性会議(WAW!)開催いたします。昨年は,バチェレ高等弁務官に参加いただきましたが,今年も,世界の様々な分野の第一線で活躍する方々に参加いただく予定です。今回の主題は,誰もが生きやすいジェンダー平等な社会を男性と女性が共に造るHeForSheの理念です。
続いて,日本は,法の支配と,それに基づく人権の擁護に強くコミットしています。4月には,第14回国連犯罪防止刑事司法会議,通称京都コングレスを開催し,法の支配の推進の重要性を世界に改めて発信します。
そして何よりも本年は,2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会が開催されます。同大会は,国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則して準備・運営される初めての大会です。日本は,同大会の開催を通じて,多様性と調和への理解を促進し,障害者の権利を含めた人権に配慮した共生社会の実現を目指し,SDGsの達成にも貢献していきます。
副議長,
日本は,アジア太平洋地域の人権理事会理事国として,この地域における人権状況の改善にも貢献していきます。同地域では,めざましい経済発展の陰で,民主化や基本的人権の保護に関して課題が残されていることは否めません。どこの国でも,表現の自由を含む基本的な自由が確保され,人権擁護者の抑圧・弾圧は防止される必要があります。人権状況の改善に向けた課題,そして,改善への道筋や速度は国ごとに異なりますが,基本的価値を共有し,同じ方向を向いて進んでいくことはできると考えます。
こうした考えの下,我が国は,各国との意思疎通を重視しています。例えば,我が国はミャンマー政府を含むいくつかの国と人権対話を実施しています。ラカイン州北部における人権侵害疑惑につき,ミャンマー政府が,独立調査団の最終報告書を踏まえ,犯罪行為に対する捜査,訴追を進めるとの立場を明らかにしており,我が国は,その速やかな実施を強く期待するとともに,引き続き,ミャンマー自身の取組を後押ししていきます。
北朝鮮による拉致問題は,日本の最重要課題の一つです。昨年の国連総会で北朝鮮人権状況決議が15年連続で採択されたことを歓迎します。日本は,各国政府及び国際社会と緊密に連携し,北朝鮮が拉致問題の早期解決に向けた具体的な行動を取るよう,引き続き強く求めていきます。
日本はアジア以外の地域の人権状況にも関心を持っています。例えば,ベネズエラにおける恣意的拘禁等の人権侵害の拡大を懸念しており,国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)や事実調査団(FFM)の活動を通じ,人権状況が改善されることを期待しています。
副議長,
日本のいくつかの直近の取組について,ご紹介します。
日本は,児童の権利の保護・促進に精力的に取り組んできており,現在,児童に対する暴力撲滅に関する国の行動計画を策定しています。また,本年6月の児童の権利委員会委員選挙には,日本から素晴らしい専門家が立候補していますので,皆様のご支持をお願いいたします。
日本は,ハンセン病差別撤廃に関する国際的な議論を主導してきています。日本はハンセン病差別撤廃特別報告者の活動をサポートしてきており,今月には同特別報告者の訪日が実現しました。ハンセン病に対する差別の撤廃に向け,各国の理解と協力に期待いたします。
本年4月,先住民族であるアイヌの人々の文化を復興・発展させる拠点として,アイヌ語で「おおぜいで歌うこと」を意味する「ウポポイ」とよばれるナショナルセンターを開設します。
日本は,第三国定住による難民の受入れをアジアで最初に開始した国ですが,本年から,その受入れ人数等を更に拡大します。
副議長,
昨日,韓国の代表が,慰安婦に言及しました。日本政府は,2015年の日韓合意を含め,長きにわたって慰安婦問題に真摯に対応してきています。また,日韓合意に基づく事業については,多くの元慰安婦の方々から評価を得ています。
副議長,
最後に,日本は国連及び人権理事会の機能改善・強化にコミットします。我々は,人員・財源・時間といったリソースが限られる中,人権の保護・促進を実現させるには,一層効率的かつ効果的な国際的な人権メカニズムとしていく必要があります。本年予定されている人権条約体のレビュー,来年以降の人権理事会のレビューの機会等を通じ,国際的な人権メカニズムの強化に向け,各国が主体的に考え,改善すべき点について議論を提起することが必要です。日本も自身の経験及び他国からの意見を踏まえつつ,同議論に積極的に参画していきます。
副議長,
今年は,国連憲章の75周年に当たります。この機会に,日本は,同検証を想起し,「人間の安全保障」の考え方に基づき,人権の保護・促進に,国内外で引き続き積極的に取り組んでいく決意です。
ご清聴ありがとうございました。
https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page3_002814.html