北海道新聞02/23 05:00
釧路川左岸河口、太平洋に突き出た岬の高台に厳島神社はある。今月3日の節分祭は、厄払いを受ける人が続々と訪れた。権禰宜(ごんねぎ)の菊池吉史さん(35)は「コロナ対策で分散をお願いしましたので、節分当日としてはこれでも例年より少なめです」と話す。
神社が立つ米町1丁目の一帯は“釧路市発祥の地”と呼ばれる。江戸時代の地名はアイヌ語の「クスリ」。アイヌ民族と和人が交易するクスリ場所があり、神社の北東にある「佐野碑園」(南大通8)の辺りにクスリ会所が置かれた。神社は1805年(文化2年)、佐野碑園辺りに創建され、91年(明治24年)に現在地に遷座した。
■「素晴らしい街」
菊池さんは4代目宮司の次男として生まれ、米町で育った若き神職。このかいわいの活性化に取り組む「くしろ元町青年団」の団長という顔もある。
東京の大学に進学し、学生時代にリュック一つで海外を旅した。故郷に戻って感じたのは「どこにも負けない景観なのに、地元が価値を感じていない」。道外からの長期滞在者にも言われた。「こんな素晴らしい街が寂れていくのに若者は何もしないのか」
同世代を集め、2015年に青年団を結成した。釧路市に「元町」という住所はないが、米町、南大通、浦見、弥生、大町、入舟、港町、知人町、弁天ケ浜、宮本の10地区を総称して元町と呼ぼうと決めた。熱い思いと活動が市民に通じ、元町の名は定着した。
結成の翌年、事務局長として加わったのが相原真樹さん(44)だ。神奈川県逗子市出身。大学を卒業し、2002年に大手メーカーに就職、初任地が釧路だった。「すぐに友だちができて、4年半たって札幌への異動を打診された時には、釧路を離れたくなくなっていた」と振り返る。
釧路市内に転職。14年に太平洋を一望する米町の高台に家を建てた。「湘南海岸でこんなロケーションの土地を買ったら億単位ですよ」と笑う。以前から市民活動に携わってきた経験を生かし、青年団を支える。
■臨港線活用に力
青年団員は現在16人。「若者・子育て世代も元町に来て、みんなで過ごしたくなるまちづくり」をコンセプトに、「元町MAP」の作製や、街歩きイベントなどさまざまな活動を展開してきた。
現在、力を注ぐのは、19年に廃止された石炭輸送の専用鉄道「太平洋石炭販売輸送臨港線」の跡地利用を考える「つなぐ道プロジェクト」。20年、観光客に人気だった「弁天ケ浜踏切」を踏切跡地近くに再現。資金は全国からの募金を充てた。釧路出身のピアニスト木原健太郎さんに作曲を依頼してイメージソング「つなぐ道」も作った。
目標は、臨港線跡地の遊歩道化。菊池さんは「釧路全体にとって貴重な観光資源になるはず。道も人もつないでいく活動にしたい」と力を込める。
◇
釧路、根室管内の街角の移り変わりと今の姿を描く「釧根まち物語」。第2部は、釧路市発祥の地と呼ばれる「元町かいわい」です。(大倉玄嗣が担当し、6回連載します)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/648753
釧路川左岸河口、太平洋に突き出た岬の高台に厳島神社はある。今月3日の節分祭は、厄払いを受ける人が続々と訪れた。権禰宜(ごんねぎ)の菊池吉史さん(35)は「コロナ対策で分散をお願いしましたので、節分当日としてはこれでも例年より少なめです」と話す。
神社が立つ米町1丁目の一帯は“釧路市発祥の地”と呼ばれる。江戸時代の地名はアイヌ語の「クスリ」。アイヌ民族と和人が交易するクスリ場所があり、神社の北東にある「佐野碑園」(南大通8)の辺りにクスリ会所が置かれた。神社は1805年(文化2年)、佐野碑園辺りに創建され、91年(明治24年)に現在地に遷座した。
■「素晴らしい街」
菊池さんは4代目宮司の次男として生まれ、米町で育った若き神職。このかいわいの活性化に取り組む「くしろ元町青年団」の団長という顔もある。
東京の大学に進学し、学生時代にリュック一つで海外を旅した。故郷に戻って感じたのは「どこにも負けない景観なのに、地元が価値を感じていない」。道外からの長期滞在者にも言われた。「こんな素晴らしい街が寂れていくのに若者は何もしないのか」
同世代を集め、2015年に青年団を結成した。釧路市に「元町」という住所はないが、米町、南大通、浦見、弥生、大町、入舟、港町、知人町、弁天ケ浜、宮本の10地区を総称して元町と呼ぼうと決めた。熱い思いと活動が市民に通じ、元町の名は定着した。
結成の翌年、事務局長として加わったのが相原真樹さん(44)だ。神奈川県逗子市出身。大学を卒業し、2002年に大手メーカーに就職、初任地が釧路だった。「すぐに友だちができて、4年半たって札幌への異動を打診された時には、釧路を離れたくなくなっていた」と振り返る。
釧路市内に転職。14年に太平洋を一望する米町の高台に家を建てた。「湘南海岸でこんなロケーションの土地を買ったら億単位ですよ」と笑う。以前から市民活動に携わってきた経験を生かし、青年団を支える。
■臨港線活用に力
青年団員は現在16人。「若者・子育て世代も元町に来て、みんなで過ごしたくなるまちづくり」をコンセプトに、「元町MAP」の作製や、街歩きイベントなどさまざまな活動を展開してきた。
現在、力を注ぐのは、19年に廃止された石炭輸送の専用鉄道「太平洋石炭販売輸送臨港線」の跡地利用を考える「つなぐ道プロジェクト」。20年、観光客に人気だった「弁天ケ浜踏切」を踏切跡地近くに再現。資金は全国からの募金を充てた。釧路出身のピアニスト木原健太郎さんに作曲を依頼してイメージソング「つなぐ道」も作った。
目標は、臨港線跡地の遊歩道化。菊池さんは「釧路全体にとって貴重な観光資源になるはず。道も人もつないでいく活動にしたい」と力を込める。
◇
釧路、根室管内の街角の移り変わりと今の姿を描く「釧根まち物語」。第2部は、釧路市発祥の地と呼ばれる「元町かいわい」です。(大倉玄嗣が担当し、6回連載します)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/648753