北海道新聞02/13 18:32 更新
【小樽】小樽・祝津沖で養殖するホタテを「おタテ」と名付けてブランド化しようとする本年度の事業が着々と進んでいる。小樽市や漁業団体、小樽商大など市内の産学官17団体でつくる実行委員会が事業を展開しており、1月には観光客にかまくら内でホタテ料理を味わってもらうツアーを行った。新年度のPR戦略も練っており、新型コロナウイルス禍で打撃を受ける地域経済を活性化するため、隠れた逸品の知名度向上に向けた取り組みが熱を帯びている。
「かまくらの中でホタテ料理なんて『映える』。自慢したくなった」。1月22日夜、小樽の観光スポット・堺町通り商店街に程近い場所に設置されたかまくら内で、小樽市在住の主婦堤優さん(36)は友人と写真を撮りまくった。
■インスタ映え
小樽産ホタテをもじった「おタテ」のブランド化を推進するプロジェクト実行委が企画した無料のモニターツアーだ。かまくらで刺し身やすし、海鮮鍋などのホタテ料理を楽しみ、市内のホテルに1泊できるお得な内容で、10組20人の募集に145組290人の応募が殺到した。小樽市出身で埼玉県伊奈町から参加した会社員寺林香織さん(26)は「小樽のホタテは知らなかったけどユニークな取り組み。インスタグラムで広めたい」と笑顔を見せた。
元々、小樽市はホタテの稚貝生産地として知る人ぞ知る存在だ。市内のホタテ漁は明治から昭和初期にかけ、ニシン漁と並び盛んだった。一時は乱獲で漁は途絶えたが、地元漁協などが1979年にホタテの養殖試験を始め、82年に事業化に成功。その後、約1年の成育で安定的に出荷できる稚貝の生産を本格化し、今は宗谷管内枝幸町や岩手県大船渡市など全国8カ所に出荷している。
稚貝の2020年漁獲量は過去最多の2856トン、漁獲高は7億7千万円に上る。一方、成貝の漁獲量は38トン、漁獲高は1千万円と市内でも出回る機会が少ない。コロナ禍の地域経済立て直しに寄与するため、成貝も含めた知名度アップを図ろうと始まったのが「おタテ」のブランド化事業だ。
昨年3月に小樽商科大や石狩・後志管内漁業士会、小樽市などがプロジェクト実行委員会を発足させて活動を本格化させていた。同5月にはコロナ禍で失われた観光需要の回復を後押しする観光庁の「域内連携促進に向けた実証事業」(事業費1200万円)に選定された。
■バイヤー納得
実行委は、巨大ホタテやベビーホタテで有名な他地域と差別化を図るため、2年ほど養殖した約100グラムの中サイズを成貝として売り出している。大手スーパーの水産バイヤーに試食してもらい、「貝柱の弾力が非常に強く、コリッとした食感とうま味がある」とお墨付きを得た。
昨年10月には飲食店100店に独自のホタテ料理を提供してもらうフェアを1カ月間行った。前後して市内スーパーでの活ホタテの販売やPRポスターの配布、プロモーション動画の発信など周知に力を入れた。今月11~13日には人力車観光後に市内のレストランでホタテ入り魚介スープを味わってもらうツアーも行っている。市内のホタテ漁師中村貞夫さん(56)は「知名度を上げる効果はかなりあった。今後も需要があれば供給していく」と成貝の生産拡大に意欲的だ。
観光庁の実証事業は本年度限りだが、実行委は新年度以降も活動を継続する方針。実行委のメンバーで小樽商大の高野宏康学術研究員(47)は「大きすぎず小さすぎない『おタテ』は他地域のホタテと競合しない。料理のバリエーションも多く万能な観光資源になる」とし、祭りの開催などさらなる一手をもくろんでいる。(平田康人)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/644921
【小樽】小樽・祝津沖で養殖するホタテを「おタテ」と名付けてブランド化しようとする本年度の事業が着々と進んでいる。小樽市や漁業団体、小樽商大など市内の産学官17団体でつくる実行委員会が事業を展開しており、1月には観光客にかまくら内でホタテ料理を味わってもらうツアーを行った。新年度のPR戦略も練っており、新型コロナウイルス禍で打撃を受ける地域経済を活性化するため、隠れた逸品の知名度向上に向けた取り組みが熱を帯びている。
「かまくらの中でホタテ料理なんて『映える』。自慢したくなった」。1月22日夜、小樽の観光スポット・堺町通り商店街に程近い場所に設置されたかまくら内で、小樽市在住の主婦堤優さん(36)は友人と写真を撮りまくった。
■インスタ映え
小樽産ホタテをもじった「おタテ」のブランド化を推進するプロジェクト実行委が企画した無料のモニターツアーだ。かまくらで刺し身やすし、海鮮鍋などのホタテ料理を楽しみ、市内のホテルに1泊できるお得な内容で、10組20人の募集に145組290人の応募が殺到した。小樽市出身で埼玉県伊奈町から参加した会社員寺林香織さん(26)は「小樽のホタテは知らなかったけどユニークな取り組み。インスタグラムで広めたい」と笑顔を見せた。
元々、小樽市はホタテの稚貝生産地として知る人ぞ知る存在だ。市内のホタテ漁は明治から昭和初期にかけ、ニシン漁と並び盛んだった。一時は乱獲で漁は途絶えたが、地元漁協などが1979年にホタテの養殖試験を始め、82年に事業化に成功。その後、約1年の成育で安定的に出荷できる稚貝の生産を本格化し、今は宗谷管内枝幸町や岩手県大船渡市など全国8カ所に出荷している。
稚貝の2020年漁獲量は過去最多の2856トン、漁獲高は7億7千万円に上る。一方、成貝の漁獲量は38トン、漁獲高は1千万円と市内でも出回る機会が少ない。コロナ禍の地域経済立て直しに寄与するため、成貝も含めた知名度アップを図ろうと始まったのが「おタテ」のブランド化事業だ。
昨年3月に小樽商科大や石狩・後志管内漁業士会、小樽市などがプロジェクト実行委員会を発足させて活動を本格化させていた。同5月にはコロナ禍で失われた観光需要の回復を後押しする観光庁の「域内連携促進に向けた実証事業」(事業費1200万円)に選定された。
■バイヤー納得
実行委は、巨大ホタテやベビーホタテで有名な他地域と差別化を図るため、2年ほど養殖した約100グラムの中サイズを成貝として売り出している。大手スーパーの水産バイヤーに試食してもらい、「貝柱の弾力が非常に強く、コリッとした食感とうま味がある」とお墨付きを得た。
昨年10月には飲食店100店に独自のホタテ料理を提供してもらうフェアを1カ月間行った。前後して市内スーパーでの活ホタテの販売やPRポスターの配布、プロモーション動画の発信など周知に力を入れた。今月11~13日には人力車観光後に市内のレストランでホタテ入り魚介スープを味わってもらうツアーも行っている。市内のホタテ漁師中村貞夫さん(56)は「知名度を上げる効果はかなりあった。今後も需要があれば供給していく」と成貝の生産拡大に意欲的だ。
観光庁の実証事業は本年度限りだが、実行委は新年度以降も活動を継続する方針。実行委のメンバーで小樽商大の高野宏康学術研究員(47)は「大きすぎず小さすぎない『おタテ』は他地域のホタテと競合しない。料理のバリエーションも多く万能な観光資源になる」とし、祭りの開催などさらなる一手をもくろんでいる。(平田康人)
https://www.hokkaido-np.co.jp/article/644921