先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

森追われた先住民、現状訴え コンゴ共和国の2人、北大で講演

2024-12-22 | アイヌ民族関連

武藤里美 有料記事

北海道新聞2024年12月21日 22:09

コンゴでの伝統的な暮らしと現状を語る先住民族の男性(左から2人目)ら

 アフリカ中部のコンゴ共和国の森の中で暮らしてきた先住民族が21日、札幌市北区の北海道大学で講演会を行った。

 長年同国で森林保全に取り組んできた日本森林管理協議会(東京)の西原智昭事務局長が企画。「ピグミー」と呼ばれていたアフリカ熱帯雨林の先住民族の2人の男性らが登壇した。

 コンゴの先住民族はかつて森で狩猟採集生活をしており、野生動物や植物について深い知識を持つ。近年は先進国の資本による森林伐採や鉱物資源開発で森を追われ、森近くの集落に暮らす。

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https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1103884/


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星野リゾート統括総支配人、白老で講演「ここだけの観光体験を」

2024-12-22 | アイヌ民族関連

武内敦貴 有料記事

北海道新聞2024年12月21日 19:22

【白老】白老町議会、登別市議会の両議員会による議員研修会が20日、両市町の議員29人が出席して町コミュニティセンターで開かれた。星野リゾート北海道統括総支配人の相内学さん(51)が、地域資源を生かした観光振興をテーマに講演した。

 相内さんは、星野リゾートトマム(上川管内占冠村)の経営改善策を中心に紹介。雲海が発生しやすい地形を生かしてテラスを設置したり、厳しく冷え込む冬には、氷のホテルやバーなどが立ち並ぶ「氷の街」を敷地内に造ったりしていることを説明した。

 その上で自然環境や芸能など、その土地ならでは特性を活用し「『ここでしか体験できない』という価値を提示することが大切」と訴えた。

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https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1103836/


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戦争問うた 伝説の共演 幕別で「カフカ経由 シスカ行き」再び 斎藤歩×沢則行

2024-12-22 | アイヌ民族関連

 

会員限定記事

北海道新聞2024年12月21日 5:00

 「札幌座」の俳優、脚本家、演出家の斎藤歩(60)と小樽出身でチェコ在住の人形劇師、沢則行(63)。昨年末、北海道を代表する2人の共演で話題となった演劇「カフカ経由 シスカ行き」の一度きりの再演が1日、十勝管内の幕別町百年記念ホールで行われた。斎藤はがんで闘病中で、観客からは「伝説を目撃しているよう」との声も出た。

「カフカ経由 シスカ行き」のラストシーン。沢則行(手前左)に操られるように踊る斎藤歩(同右)。星座のように輝く円盤を出演者らが人力で回す(高橋克己撮影)

 「物語」をなくした俳優(斎藤)が人形劇師(沢)と、稚内市抜海の海辺で語り合う―という内容で、演劇と人形劇を融合。斎藤が作・演出・音楽を、沢が人形デザインを担当し、昨年12月に札幌のシアターZOOで初演した。

 礼文島の香深(かふか)に残るアイヌ民族の物語やサハリンのポロナイスク(敷香(しすか))のウイルタ民族の伝説などを描く一方、ウクライナなど戦争が続く現在を鋭く批判。評判を聞いたNPO法人まくべつ町民芸術劇場の依頼で、再演が実現した。

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「カフカ経由 シスカ行き」の再演を終え、ホッとした表情で出演者と記念撮影する斎藤歩(前列右)と沢則行(同左)=12月1日(赤木国香撮影)

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https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1103731/


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「偏見なくし正しく知って」 武四郎記念館など県内3施設でアイヌ文化紹介

2024-12-22 | アイヌ民族関連

 

中日新聞2024年12月21日 05時05分 (12月21日 12時51分更新)

伊勢出身の測量士村上島之允が記した「蝦夷島奇観」を紹介する山本館長=松阪市小野江町の松浦武四郎記念館で

 松阪市小野江町の松浦武四郎記念館は、「アイヌ文化でつながる博物館等ネットワーク」との協働展示「三重から北海道へ-アイヌ文化と出会った人々」を開催している。記念館の山本命館長(48)は「アイヌ民族への偏見をなくすためにも、アイヌ文化を正しく知ってもらえたら」と話す。 (芦原遼)

 松阪出身の松浦武四郎は幕末に蝦夷地を探検し、北海道の名付け親として知られる。今展は国立アイヌ民族博物館(北海道白老町)と市が主催。同記念館の他、大黒屋光太夫記念館(鈴鹿市)、石水博物館(津市)でも協働展示を行い、アイヌ民族と縁のあった三重の偉人を通じて、アイヌ文化を紹介している。...

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https://www.chunichi.co.jp/article/1002739


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【書評】人間と羆との死闘の歴史を刻む名著が復刻『羆吼ゆる山』

2024-12-22 | アイヌ民族関連

 

山と渓谷 2024.12.22

評者=伊藤健次

なんと彫りの深い記憶だろう。

著者は1917年生まれ。製炭業に携わる家族と北海道の奥山で過ごした日々の回想記だ。67歳で利き手の右手を負傷し、左手で字を書く練習をしつつ、つづられた一冊。過去を振り返った記述のはずだが、そこには驚くべきリアリティがあり、ページをめくる手が止まらなくなる。

本書は『アラシ 奥地に生きた犬と人間の物語』に続く、ヤマケイ文庫での今野作品復刻第2弾である。

主な舞台は日高(ひだか)山脈。西側の原始河川、染退川(しべちゃりがわ、現在の静内川)から元浦(もとうら)川にかけての広大な流域だ。私も思い入れの深いフィールドで、もう一冊の名著『秘境釣行記』とともに何度も読んだ。そのたび、あまりに鮮やかなディテールに、その場で同じ時を過ごし、同じ空気を吸っているような錯覚を覚え、今野保という人間の「記憶の質」に圧倒されるのである。

小学2年生の時、初めてヒグマに出会った日から物語は始まる。

「おじさーん、どこへ行くのー。裸足で山を歩くとトゲがささるよー。早く降りておいでよーっ」

片道5㎞の学校帰り。黒い人影らしきものと裸足の足跡を見た少年は、野生の世界に呼び寄せられるようにその影を追ってしまう。母に注意されていた異界の入口でもある桑の林を抜けて――。

戦前~戦後の北海道での山暮らしとはつまり「羆吼ゆる山」に踏み込んだ生活だ。傍らには命に関わる強力な野生動物がいる。それを狩り、生活の糧としてきたアイヌ民族の先達がいる。

12歳で銃猟を始めた少年は、腕利きのアイヌの猟師と親交を深め、狩猟の知恵や驚異的な経験を聞く。大グマの懐にしがみつき刺し違えた七郎。金毛と呼ばれるヒグマと仙造の切ない交流。沢造が語るぺテカリ源流の詳細な狩猟記はまるで、朗々と謡われるアイヌ神謡。今は失われた毛皮猟師の生活が、つぶさに浮かび上がる。

本人の体験だけでなく、他者が語る狩りの話さえ実写映像を目前にしたように具体的だ。この描写の源泉はどこにあるのか――。

今野一家は夏には猟師らと日高の源流に分け入り、20日あまりも釣りや狩りをして過ごしたという。日常も山の中なのに、さらに足を延ばし奥山に密着している。少年は幼い頃から原始の山谷の声に耳を澄まし、人の語る声を聞き取ってきたのだ。優れた書き手である前に、とても繊細で鋭敏な聞き手なのだと思う。熱気に満ちたヒグマとの死闘はもちろん、川で遭難した弓子の話が胸を突くのは、そうした著者の心根によるだろう。

日高山脈の地下に眠る地層が鮮やかに露出したかのような一冊。『羆吼ゆる山』には今野保という豊かな川が滔々と流れている。

今、同じ川をたどりながら、私は今野さんが語る日高の残像に嫉妬している。

羆吼ゆる山

今野

発行

山と溪谷社

価格

1,210円(税込)

今野

1917年生まれ。製炭業を経て、炭鉱に26年間勤務。その後、土木会社を設立。事故で右手を負傷するが、左手で文字を書く練習を行ない、執筆活動を始める。著書に『アラシ 奥地に生きた犬と人間の物語』(ヤマケイ文庫)、『秘境釣行記』(25年春にヤマケイ文庫から復刊予定)ほか。2000年逝去。

https://www.yamakei-online.com/yama-ya/detail.php?id=3681


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ナウマンゾウの化石発掘 幕別町 飯田晴義町長~わがまちこの1年

2024-12-22 | アイヌ民族関連

 

十勝毎日新聞 2024/12/21 19:00

 【2024年を振り返って】
 町千住のアイヌ文化拠点空間の工事に着手できた。アイヌにはアットゥシ(樹皮衣)や言語、料理など貴重な独自の文化が多数ある。地域に伝承する文化拠点として、来...

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https://kachimai.jp/article/index.php?no=623015


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ハカの気合を児童に伝授 名張・箕曲小でニュージーランドのザビエルさん

2024-12-22 | 先住民族関連

 

中日新聞 2024年12月21日 05時05分 (12月21日 12時50分更新)

ザビエルさん(左)の指導を受けながら、ハカを覚える児童たち=名張市の箕曲小で

 ニュージーランド(NZ)の先住民族マオリの文化を学ぶ授業が、名張市の箕曲(みのわ)小で開かれた。NZ出身で、名張市役所に国際交流員として勤務するフルグリーナス・ザビエルさん(29)が5、6年生の児童たちに、マオリの伝統舞踊「ハカ」を伝授した。

 ハカはラグビーのNZ代表が試合前に披露して知られるようになった。戦いに挑む気持ちを表現する。ザビエルさんは、学生時代にラグビーに打ち込み、ハカの指導者の経験もある。6年生17人が参加した10日の授業でハカを披露し「強い感情を表すときに踊り、人々と心を通わせる」と紹介した。...

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https://www.chunichi.co.jp/article/1002733?rct=mie


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遠征チームはペルーのアルトメイヨーで27の新しい種を見つけます:さまざまな種類のバタフライに水陸両用ネズミがいます

2024-12-22 | 先住民族関連

 

VOI 21 Desember 2024, 15:00 

新しい動物の発見。(出典:保全国際/ロナルド・ディアス)

ジャカルタ-ペルーの保護地域を調査した遠征チームは、水陸両用ラットからさまざまな種類の蝶まで、27種の新しい動物を見つけることができました。

動物は、アマゾンの熱帯雨林を含むアルトメイヨーへの遠征中に、非営利団体の保護インターナショナルの科学者と地元の先住民族グループのメンバーによって発見されました、とBBCは12月20日に言ったと伝えられています。

「非常に多くの新しい哺乳類や脊椎動物の種を見つけることは、特に人間の影響を受ける風景において、絶対に驚くべきことです」と、保全インターナショナルのシニアディレクター、トロンドラーセンは述べています。

これらの動物とは別に、少なくとも48の他の新種も発見された可能性があるが、それらが新鮮であるかどうかを判断するにはさらなる研究が必要である、と保全インターナショナルは述べた。

アルトメイヨーは、ペルー北部の保護地域であり、さまざまな生態系と慣習的な地域があります。

人口密度は比較的高いため、森林伐採や農業の拡大を通じて環境を抑制している、と保全インターナショナルは述べた。

水陸両用マウスに加えて、2022年の遠征中に首尾よく発見された新種には、有刺鉄マウス、リス、8種類の魚、3匹の水陸両用動物、10種類のバタフライが含まれるとラーセン氏はロイターに語った。

2022年6月から7月にかけて開催されたこの遠征には、13人の科学者と地元の技術者、先住民族のメンバーが参加しました。

「アワジュンの人々と協力できることは驚くべきことです。彼らは森林、動物、植物について幅広い伝統的な知識を持ち、それらと共存しています」とラーセンは説明しました。

遠征隊の調査結果から、ラーセンは硬い毛皮の有刺ラット、水陸両用ラット、14cmの矮性リスに焦点を当てました。

「(トゥパイは)あなたの手のひらにとてもふさわしいです。愛らしい美しいカンテンニーンチョコレートの色は、とても速いです」とラーセンは説明します。

「彼はすぐに飛び上がり、木の中に隠れました」と彼は付け加えました。

もう一つのお気に入りの発見は、塊状の頭の魚、一種の装甲ナマズです、と彼は言いました。

一方、研究を手伝ったアワジュンの女性、ユリサ・トゥウィ氏は、この報告書は生態系をよりよく理解することを彼らに与えたので、報告書は「アワジュン人が私たちの文化、天然資源、地域を守ることを可能にした」と述べた。

「(アワウンの人々は)森林、動物、植物について幅広い伝統的知識を持ち、それらと共存しています」とラーセンは説明しました。

合計2,046種が、カメラトラップ、バイオ急性センサーを使用してDNAサンプルを採取する38日間にわたって遠征によって首尾よく文書化されました。

調査結果から、黄色い尾のサルや木のサルなど、49種が絶滅危惧種と分類されています。

ラーセン氏は、この発見は地域を保護する必要性を強化したと述べた。

「これらのサイトを保護し、風景の一部を回復するための措置が今取られていない限り、これらのサイトが長期的に生き残れない可能性が高い」とラーセン氏は述べた。

https://voi.id/ja/news/444973


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焦点:「金のDNA」を解読、ブラジル当局が新技術で違法採掘捜査

2024-12-22 | 先住民族関連

 

ロイター2024年12月21日午後 12:17 GMT+918時間前更新

By Ricardo Brito, Anthony Boadle

[1/2] 福音派の牧師であり、不動産業と鉱山事業を営むハーレイ・サンドバル容疑者は、2023年7月に逮捕された。写真は、連邦警察の国立犯罪学研究所で示された金のサンプル。2月21日、ブラジリアで撮影(2024年 ロイター/Ueslei Marcellino)

[ブラジリア 14日 ロイター] -   福音派の牧師であり、不動産業と鉱山事業を営むハーレイ・サンドバル容疑者は、2023年7月に逮捕された。ブラジルのアマゾン川流域から米国、ドバイ、イタリアに金294キロを密輸した容疑だった。

この金は書類上、サンドバル容疑者が開発権を持つ北部トカンティンス州の合法的な鉱脈から採掘されたとされていた。だが警察によれば、植民地時代以来、その地で金が採掘された例はまったくないという。

ブラジル連邦警察は、衛星画像も含めた最新の犯罪捜査テクノロジーを駆使し、輸出された金がトカンティンス州の鉱脈に由来するものではないことを証明できたとしている。これまで報道されていなかった2023年11月の訴訟書類をロイターが閲覧したところ、実際には、隣接するパラ州にある違法鉱山3カ所から採掘されたものだった。一部は、保護対象である先住民居住地域で採掘されたと見られる。

今回の訴追は、ブラジルが金の違法取引の取締りに最新のテクノロジーを採用した先駆的な例の1つだ。ブラジルは金の主要生産・輸出国だが、生産量の実に半分が違法に取引されている可能性がある。アマゾンの熱帯雨林地域で行われる金の違法採掘は数万カ所にまで急増しており、この地域における環境破壊と暴力犯罪の源となっている。

ロイターが独占的に入手した連邦警察の記録によると、過去7年間で違法採掘による金の押収量は7倍に増加した。

サンドバル容疑者は保釈されて公判を待つ身だが、ブラジル中部の都市ゴイアニアにあるペンテコステ派福音教会で妻とともに説教を行っており、容疑を否定している。

サンドバル容疑者は、金を溶かして輸出用のインゴット(金の塊)に加工してしまえば、どこから採掘したものかを確認する方法はないと主張している。ロイターの電話取材に対し、彼は「そんなことは不可能だ。金を輸出する際には必ず溶かさなければならないのだから」と語る。

 <金の「DNA」を解読>

歴史的に、金の由来を追跡するのは困難だとされてきた。特に、さまざまな出所からの金を溶かして混ぜてしまえば、元々の特徴は失われてしまう。その後は、金融資産としての取引や宝飾品産業での利用も簡単だ。

だが捜査担当者は、状況は変わりはじめているという。「金ターゲティング」と呼ばれる警察のプログラムでは、ブラジル全土からのサンプルを集めたデータベースを作成し、放射性同位体スキャンと蛍光分光法を用いて、元素の固有の組成を特定している。

考古学の分野では以前から使われていた手法だが、鉱業分野で合法な金と違法採掘の金を見分けるために応用したのは、プレトリア大学の地質学者ロジャー・ディクソン氏だ。

大学の研究者との協力で開発されたこのプログラムでは、サンパウロの研究所にある粒子加速器で得られる強力なビームを使い、泥であれ鉛や銅といった他の金属であれ、金に混入したナノサイズの不純物を調べることにより、出所を追跡する材料とする。

連邦警察に最近創設された環境問題・アマゾン担当局のフンベルト・フレイレ局長は、このテクノロジーによって科学者は「ブラジルで産出される金のDNA」を分析できるようになった、と語る。

「自然は金に同位体という目印をつけている。放射性同位体スキャンを使えば、この唯一無二の痕跡を読み取れる」とフレイレ局長。「このツールによって、輸出用に精錬される前までさかのぼって、違法採掘の金を追跡できる」

このプログラムの力もあって、昨年左派のルラ大統領が就任して以来、金の押収量は増加した。ロイターが閲覧した政府統計によると、2023年の押収量は前年に比べて38%増加した。フレイレ局長によれば、すべての取引に電子納税証明を義務付け、疑わしい取引に対する監視を強化する、ブラジル中央銀行が導入した新たな金市場規制も一役買っているという。

フレイレ局長はロイターに対し、「アマゾン地域で産出する金の約40%は違法採掘だと推定している」と語った。公式統計によればブラジルは2020年に110トン、50億ドル(約7,700億円)相当の金を輸出しており、世界の上位20位に名を連ねた。昨年は77.7トンと減少したが、政府は違法採掘の取締りが強化されたことが原因だとしている。

<先住民との対立>

ルラ大統領の前任である極右のボルソナロ前大統領は、アマゾン地域における環境規制を緩和し、これを機に、ブラジルでは新たなゴールドラッシュ(金採掘ブーム)が生じた。地政学的な緊張の高まりと中国を筆頭とする各国中央銀行の購入により、世界の金価格が空前の高騰を見せたことも追い風となった。

金価格は高値更新を続けており、13日の時点では1オンス2650ドル前後で取引された。

ゴールドラッシュは、鉱産資源に富むブラジルでは過去のポルトガル植民地時代からよく見られた現象だ。だが、ボルソナロ政権下で始まった最近の違法採掘の急増は前代未聞である。アマゾン熱帯雨林地域の衛星画像を見ると、違法採掘と見られる箇所が従来の記録を上回る約8万カ所も確認できる。

かつては選鉱鍋を手にした「ヤマ師」が職人技を頼りに金を採取していたが、現在では大型の掘削機や100万ドルもする河川浚渫(しゅんせつ)船が活躍する産業規模の活動だ。犯罪組織は、秘密の滑走路を使うヘリコプターや飛行機によって、労働者や機器類をアマゾン地域に運び込み、金を運び出している。

こうした掘削跡には、金を泥や他の鉱物から分離するために用いられる水銀で汚染された残滓が溜った池がぽっかりと残されている場合が多い。

昨年、北の隣国ベネズエラとの国境に面したブラジル最大の先住民ヤノマミ族の居住地域に数万人の採掘業者が侵入し、暴力と疾病を持ち込んだ。ヤノマミ族のあいだでは栄養失調と人道危機が生じ、ルラ大統領が軍を派遣する事態となった。

だが、今年に入って軍が撤退すると、多くの採掘業者が戻ってきた。違法な金採掘の根絶を公約としていたルラ大統領は、国立再生可能天然資源・環境院(IBAMA)所属の特殊部隊を先住民居住地域と森林保護公園に派遣し、採掘業者を追い返そうと試みた。

警察は、金違法取引の阻止に向けた次の段階は、違法採掘者の背後にいる犯罪組織の摘発だという。政府の貿易統計によれば、ブラジルが輸出する金の70%を購入しているのは、スイスの宝飾品・時計産業だ。

警察や外交関係者によれば、コロンビアや仏領ギアナなどアマゾン地域の近隣諸国でも、自国における金違法取引への対策として、ブラジルの金分析手法の採用を検討している。スイスや英国など、カナダ産に次いでブラジル産の金の輸入量が多い欧州諸国も関心を示している。

グローバルな金取引の中心地であるスイスが輸入する金のうち、ブラジル産は1%にすぎない。スイス大使館は声明で「合法的に採掘された金のみを輸入するよう対策している」と述べた。

スイス大使館は、他の輸入国とともにトレーサビリティ(生産履歴管理)や偽造対策ツールを研究する作業部会を設けたと説明した。

非営利の監視団体「インスティチュート・エスコルハス」は2022年の調査の中で、アマゾン地域から輸出される金の52%は違法採掘によるもので、そのほぼすべてが、保護対象である先住民居住地域や国立森林保護公園で採掘されたと述べている。

保守派優位のブラジル国会には、ボルソナロ政権後も非公式な金採掘を擁護する活発なロビー団体が生き残っており、違法採掘の合法化を提案する法案が審議されている。

現在、ブラジリアの連邦警察犯罪研究所では、科学者らの助けを借りて、ブラジル全土から採取された金のサンプルがデータベースに追加されつつある。犯罪科学の専門家エリッヒ・モレイラ・リマ氏による指導のもとで、金庫に保管された小さな金塊に対する高精度のスキャンが行われている。

リマ氏はロイターの取材に対し、「チームの体制は整ったので、ブラジル地質サービス局が収集した3万種の金のサンプルを分析したいと考えている。2-3年以内に、ブラジルで金を産出する24地域をすべてマッピングできるはずだ」と語った。

ブラジリア国立大学の地球科学研究所では、地質学者のマリア・エミリア・スチュテスキー氏率いるチームが、金のサンプルに対する大規模分光分析スキャンにより混入した鉛などの分子を特定し、金の産出地を突き止めようとしている。

スチュテスキー氏は、「私たち研究者は金のトレーサビリティーを100%に高めようと努力しているが、警察による犯罪立証のためには、そこまでは必要ない。警察が求めるのは、金が容疑者の主張する地域で採掘されたものではないという証明だけだ」と話した。

(翻訳:エァクレーレン)

https://jp.reuters.com/world/us/C3PECER3LBNGPBSJIDYFJT4IAQ-2024-12-21/


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SBS Examines: シオニズム(Zionism)とは?反イスラエルであることは、反ユダヤ主義なのか?

2024-12-22 | 先住民族関連

 

SBS21 December 2024 4:03pm

オーストラリアで、反ユダヤ主義(アンチセミティズム)の事件が増えています。しかし、反ユダヤ主義と反シオニズムの境界線には意見の相違があります。

オーストラリアユダヤ人評議会(the Executive council of Australian Jewry)のCo-CEO、アレックス・リブチンさんがSBS Examines に話すところによると、「シオニストの定義は、ユダヤ人コミュニティ内でさえ、広く理解されてはいません。」としています。

シオニズムとは「ユダヤ人が祖国の権利を持ち、祖先の土地の一部で民族として自決権を行使できるという信念やその支持」

アレックス・リブチン

シオニズムの考えは19世紀にはじまり、20世紀にかたち作られました。宗教的、人種的マイノリティとして世界中で直面した迫害に対する、ユダヤ人の反応でもありました。

これにより、1948年、イスラエルは国として建国と独立を宣言しました。

昨年の10月7日、イスラエルとハマス戦争勃発以来、イスラエルは、パレスチナ、ガザの攻撃で人権・戦争犯罪の非難を受けています。

「私は、イスラエルやその政策、行動を批判することが、反ユダヤ主義に当たるとは考えていません。」

オーストラリアユダヤ文明センター(Australian Centre for Jewish Civilisation)所長、デイビッド・スルーキー准教授は話します。

しかし、反ユダヤ主義は反イスラエルとして偽装できるともしています。

スルーキー教授は、議論が二極化していることがわかるとはSBS Examines に話しました。

「シオニズムと反シオニズムの問題は、イスラエルを無条件に支持するのか、無条件に反対するのかという問題に変わったようです。」

「そして、私たちが話しているのは二元論ではないと思うし、議論が二極化するのは約にたちません。思考をめぐらすかわりに、善と悪、友人と敵という観点で考えることにつながることが多いためです。」

最近、オーストラリアユダヤ人評議会( Jewish Council of Australia)という新しい組織を立ち上げた、人権問題を担当する弁護士、サラ・シュワルツは、シオニズムに関して異なる定義を持っています。

シオニズムは政治的イデオロギーであり、人々がそれをどう受け止め、どう考えるかに関係なく、パレスチナ人の土地の剥奪を正当化するために使われている。

サラ・シュワルツ

SBS Examines のこのエピソードでは、シオニズムに関するさまざまな考え方を取り上げ、イスラエル国家に対する批判が反ユダヤ主義であるかどうかを問います。

https://www.sbs.com.au/language/japanese/ja/podcast-episode/what-is-zionism-and-is-it-antisemitic-to-be-anti-israel/fau8s49yz


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台湾、スロートリップをアピール 鉄道旅行テーマの観光PRムービー公開

2024-12-22 | 先住民族関連

 

中央社フォーカス台湾2024年12月21日(土)19:26

20日の記者会見でポーズを決めるワン・マンチャオさん(後列左から5人目)、周永暉観光署長(同4人目)ら

(台北中央社)交通部(交通省)観光署(観光庁)は20日、鉄道旅行をテーマに制作した台湾観光PRムービーを公開した。俳優のワン・マンチャオ(王満嬌)さんやフィガロ・ツェン(曽少宗)さんらが出演し、ノスタルジックな視点から台湾の魅力を楽しむスロートリップをアピールしている。

ムービーは、台湾西部と東部をつなぐ鉄道風景と文化を結び付けた。南部・嘉義県の景勝地、阿里山の森林や古い町並み、観光列車、台湾原住民(先住民)などが登場し、台湾の豊かな自然や文化を表現している。

この日台北市の交通部で開かれた記者会見で周永暉(しゅうえいき)観光署長は、ムービーを通じて今年4月に東部海域で起きた地震により被害を受けた東部の観光産業の支援につなげたいと期待を寄せた。

観光署は、英語や日本語、韓国語などの字幕を付けた上で海外でのPRを行い、より多くの国内外からの観光客を東部に引き付けたいとしている。

(汪淑芬/編集:齊藤啓介)

https://www.excite.co.jp/news/article/Jpcna_CNA_20241221_202412210005/


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「クロニクル 千古の闇」シリーズ訳者・さくまゆみこさんインタビュー 「生きる力」を光に太古の森を突き進む冒険物語

2024-12-22 | アイヌ民族関連

 

好書好日2024/12/21 10:00

 冬に読みたい児童文学の長編ファンタジーを2回に分けて紹介します。後編は「クロニクル 千古の闇」シリーズ(評論社、現在第8巻まで翻訳刊行中)。イギリスの作家ミシェル・ペイヴァーによる紀元前4000年の太古の森を舞台とした物語です。第1巻『オオカミ族の少年』から翻訳者として関わってきた、さくまゆみこさんにインタビューしました。(文:大和田佳世)

お話を聞いた人さくま ゆみこ

東京都生まれ。翻訳家。訳書は絵本からYA小説、研究書まで250点を超え、産経児童出版文化賞大賞、日本絵本賞翻訳賞、IBBYオナーリスト・JBBY賞など受賞多数。著書に『エンザロ村のかまど』(福音館書店)他、翻訳作品に「クロニクル 千古の闇」シリーズ(評論社)、「リンの谷のローワン」シリーズ(あすなろ書房)など。アフリカ子どもの本プロジェクト代表。日本国際児童図書評議会(JBBY)前会長。長野県在住。

紀元前4000年の太古の森が舞台

――極北の森が目前にまざまざとあらわれるような「クロニクル 千古の闇」シリーズ。この壮大な物語をさくまさんが翻訳されることになったのは、どのような経緯だったのでしょうか。

 20年ほど前の秋、ドイツのフランフルトで開催されているブックフェア(書籍見本市)で、第1巻『オオカミ族の少年』の原書の冒頭部分を入手した編集者から、内容について意見を聞かせてほしいと頼まれました。送られてきた原稿を読んでみると、内容も文章もおもしろくて。ちょっと特別な感じがしました。それで翻訳を引き受けることになりました。

――どんなところに特別な印象を受けたのでしょう。

 まず、舞台が紀元前4000年、つまり今から約6000年前の北欧の森だというところです。人はまだ文字も金属も車輪も持たず、小さな氏族のまとまりで野営し、狩猟採集生活を送っています。そんな中で孤児になった12歳の少年とオオカミがなんとか力を合わせて生きていく。人と動物が助けあいながら生きのびていくところが、私は「おもしろいなぁ」と思いました。

――読んでいくうちに原始の森にどんどん引き込まれ、主人公のトラクと、オオカミのウルフと一緒に旅をしているような気持ちになります。

 主人公のトラクは赤ん坊のときにオオカミの巣で育ち、オオカミの言葉がわかる少年なんですよね。動物の痕跡をたどるのに長けていて、他者の霊にわたっていくこともできる。そういうことも含め、当時の自然のありよう、人々の暮らしぶり、宗教的な概念、氏族の多様性などを、作者がとてもよく調べたうえで物語が展開していきます。それが具体的な描写につながっているので、当時の人々がリアルに立ち上がってきて、私たちも引き込まれるのだと思います。

物語の舞台となる森の地図。『オオカミ族の少年』(クロニクル 千古の闇」シリーズ1巻)より Illustration © Geoff Taylor

 作者のペイヴァーさんは文化人類学や考古学の本をたくさん読むだけでなく、ラップランドやグリーンランド、シベリアなどを石器時代の遺物を求めて歩きまわっています。北米先住民やイヌイット、日本のアイヌの暮らしも参考にされたそうです。

石器時代の暮らしにドキドキ

――ビャクシンの樹皮を丸めた火口(ほくち)に火をつけ、シカの脂に浸し日干しした灯心草の髄をろうそくに。皮袋で煮炊きし、カバの樹皮でコップをつくる。宴のごちそうはヘラジカのシチュー、ハンノキの火で焼いた汁気たっぷりのコイ、アシの花粉をかためたさくさくした金色のケーキ……。暮らしのこまかな描写に圧倒されます。

 例えばトラクが背負っている「荷かご」ですが、原文ではpackとあるだけなので、1巻ではどんな形のどういうものかがわかりませんでした。お手紙でペイヴァーさんにおたずねしたところ「枠組みはハシバミの枝で箱のような形につくり、あとの部分はヤナギの細枝を編んでつくってあるものです」と教えてくださいました。

――トラクたちは、いぶした魚や肉の保存食を持ち歩き、食料が尽きたら猟をします。獲物が見つからず、凍った木の実やまずいキノコを食べることも。動物を倒せたら森に祈りをささげ、皮を剥ぎ解体し、新鮮な内臓を生のまま食べる様子も克明に書かれます。

 作者が文献を読み、あちこちに出かけて実地に体験したことを通して作品を構築しているという意味で、「クロニクル 千古の闇」シリーズはまるで歴史小説のような趣を持っています。当時の暮らしや行動の一つひとつが作者の中で克明だからこそ、読者も物語世界にどっぷりと入り込み、ハラハラ、ドキドキすることができるのでしょう。アカデミック(学術的)な土台の上につくられている物語だと思います。

――1960年生まれのペイヴァーさんはオックスフォード大学で生化学の学位を取得後、薬事法専門の弁護士となり、その後作家になられたそうですね。

 詳細に調べるのは、法律事務所で弁護士として働いていた経験も関係あるのかなと想像します。以前、『生霊わたり』(2巻)刊行後に来日され、日本の小学校を訪問されるのにご一緒したことがあるのですが、物静かで、物事を深く考える方だと感じました。

 同シリーズの『決戦のとき』(6巻)によって、2010年、ペイヴァーさんはイギリスの優れた児童文学に贈られるガーディアン賞を受賞しています。

闇の支配の中の光

――『オオカミ族の少年』『生霊わたり』『魂食らい』『追放されしもの』『復讐の誓い』『決戦のとき』の1~6巻では、魔術を扱う魔導師が物語を動かします。トラクは、巨大な権力を持とうと画策する魔導師たち、邪悪な〈魂食らい〉の一団と戦うことになりますが……。

 リアルだなと私が思うのは「闇」や「悪」についてです。6000年前も、大きな悪の権力を持とうとする人はいたでしょうし、自然現象を利用してうまく自分が大きな力を持っているように見せかけた人もいたでしょう。そしてそういう人は、今以上に強い力を持っていたのではないかと思います。合理的な解釈がまだできなかった時代、「闇」や「悪」の支配する力は強かったのではないかと。

――旅の途中のケガや飢えの描写もあります。

 死もいっぱい出てきますよね。当時の社会だと当然のことなんだろうけど、そのたびに悲しい。トラクが幾度も厳しい状況に突き落とされ、あまりに過酷な描写が続くので、訳しながら寒々とした気持ちになるけれど……。でもそんな中でウルフや、友達になった少女レンと一緒に危機を乗り越えながら信頼関係が深まっていくところや、途中から登場する二羽のワタリガラスのユーモラスな行動など、なにげない場面に救いがあります。

――さくまさんが訳される中でこのシリーズの好きなところや、好きなキャラクターはありますか。

 好きなのは、やっぱりオオカミのウルフです。ウルフの存在は、闇の中の光です。

 このシリーズの特徴であり魅力だと思うのが、人間の視点で書かれている物語部分と、オオカミの視点で書かれた物語部分の両方がある点なのです。ウルフは火を「熱い舌で刺すまぶしい獣」、雪を「明るくてやわらかくて冷たいもの」などと言います。ウルフの言葉だと人間は「尻尾なし」、トラクは「背高尻尾なし」です(笑)。オオカミの見方、感じ方で表現されることで、物語はより味わいが深くなります。

ファン待望のシリーズ続編もいよいよ最終巻へ

――6巻まででいったん完結したシリーズは、原書で11年ぶりの続編が出たことでファンを驚かせています。

 当初作者は続編を書く予定はなかったようですが、イメージがおりてきて3冊を書いたそうです。イギリスでは刊行済みで、日本でも『魔導師の娘』(7巻)に続き『皮はぐ者』(8巻)が2024年秋に翻訳出版されました。今、最終巻を来年に向けて訳しているところです。『追放されしもの』(4巻)あたりからだんだん性別も意識するようになってきたトラクとレンですが、続編ではさらに若者らしくなったふたりの関係性も描かれます。

――最終巻はどうなるのでしょうか。

 トラクとウルフとレンは、またまたものすごーーーく危険な状態に陥ります。だけど、彼らの結びつきは試練を経つつ、強まっていきます。トラクとウルフとレン、この3者にとっては未来がある終わり方にはなるはずです。

――あらためて、タイトルにある「クロニクル」とはどういう意味でしょう?

 クロニクルは「年代記」です。原書のシリーズタイトルは「Chronicles of Ancient Darkness」だったので、直訳すると「古代の闇の年代記」。今より深い闇に覆われていた時代の、闇の歴史書というふうにとらえることもできるかもしれません。それを「クロニクル 千古の闇」と訳しました。

 ペイヴァーさんが作品の意図についてインタビューなどで語ることはあまりないようですが、私が思うのは、文明の利器も便利な道具もない、むきだしの自然にさらされた状況下で子どもが生きのびるという冒険を、物語世界の中だけでも楽しんでくれたらと思っていらっしゃるんじゃないかなと。巻を追うごとにだんだん私自身もそんなふうに思うようになりました。闇に覆われた時代の記録だけど、野性の中で取り戻せる「生きる力」がある。闇の中で、光に向かって歩いている若者たちを書いているんじゃないかと思います。

イギリスでの生活と子どもの本

――さくまゆみこさんご自身のことについても聞かせてください。絵本からYA小説、研究書まで、250点を超える訳書を手がけていらっしゃいますが、子どもの本に関する仕事をするようになったきっかけは?

 就職した出版社で、児童書の担当になったのがきっかけです。私は中高と私立の女子校で、大学もそのまま私立大学に進学しそうになったところ、「このままではあまりに世の中のことを知らない」と危機感をおぼえ、進路変更して公立の大学に入りました。学生運動の時代でもあり、大学ではベトナム戦争や南アフリカのアパルトヘイト(人種隔離政策)問題などについて意見を問われることも多く、自然に世界へ目を向けるようになっていきました。

 卒業後は出版社に入ったのですが、おしゃれな女性雑誌や素敵な暮らしの本が主力の出版社の中で、違和感をおぼえることも多くて。そんなとき、会社の同僚のお姉さんが、ロンドンの下町の一般家庭にベビーシッターをしながら下宿しているけれど、帰国することになり後釜を探しているという話があり……。私はすぐ飛びついて、大学でフランス文学専攻だったので英語もほとんどしゃべれないのに、ロンドンに行ったわけです。児童書の編集はおもしろいけれど私はあまりに子どもの本のことを知らないし、世界のことも知らないから、違う国へ行って、違う景色をみて、色々考えた方がいいんじゃないかと思ったのです。

 ロンドンというところは今はだいぶ変わりましたけど、テムズ川の北か南かで、住んでいる層が全く変わるんですね。私が住んでいたのは南側で、労働者階級の人たちがいっぱい住んでいるところでした。下宿させてもらいながら、3人の子どものベビーシッターをして、自分でもイギリスの児童文学のことを勉強したいと思って、図書館や子どものいる場所をまわったり、カレッジの英文学のコースに通ったりしました。

 何より経験としておもしろかったのは、いろんなアルバイトをしたことです。ワインバーのウェイトレスや、日本から勉強しにくる美容師さんたちの通訳、イギリスで犯罪を犯した日本人が裁判を受けるときの通訳もしていました。一時期、保険会社の社員食堂でウェイトレスをしていましたが、働いているのはジャマイカ、スコットランド、アイルランド、ナイジェリア……そういうところから来た人たちばかりで、イギリス人がしゃべる英語とは全然違うんです。そんなふうにイギリスで暮らした3年9カ月間が私にとっての大学のようなものでした。いわゆる正統なイギリス英語だけでなく、労働者階級の人の英語や、アフリカをルーツにする人々の言葉や文化など、いろんなものに触れて学ぶことができました。

 アルバイトが順調だったこともあって、いくらでも滞在できそうだったのですが、だんだん日本語の微妙な言い回しがとっさに出てこなくなってきて日本に帰ることを決めました。帰国後は再び出版社に就職して子どもの本に関わり、1997年からフリーの翻訳者となりました。

「本は窓」という思い

――昨年までは国際児童図書評議会(IBBY)の日本支部、JBBYの会長も長年つとめてこられました。子どもの本に対して今思うことはどんなことですか?

 やっぱり子どもの本って、まず「おもしろい」ということがとても大事だと思います。おもしろくないと子どもは読まない。だから翻訳でも自分なりにおもしろくなるように工夫はしています。

 この「クロニクル 千古の闇」シリーズの1~6巻は、小学校6年生から読める表記にしています。でも最近ますます300ページを超える子どもの本は出版が難しくなっていて。近年、日本の子どもたちの読解力は、英語圏の子どもに比べると低いと感じることも多いのです。英語圏の学校では、長いテキストをみんなで読んで意見をぶつけあう授業をしているのですが、日本ではやっていない。教科書にも短いぶつ切りの文章しか載っていない。だから「長いものを読む」ということに慣れていないし、読んで意見の違う人と話しあうという体験も圧倒的に不足しています。これで、日本の子どもたちは大丈夫なのでしょうか。

 子どもの本は、子どもが自分で開けていくことができる「窓」だと思っています。日本は島国なので他国のことが対岸の火事のようになってしまう。だからこそ視野を広げるために、単純におもしろいものから社会問題を扱ったものまで、いろんな「窓」を子どもたちの周りに用意してあげたい。単なる情報ではなく、異なる文化や価値観に触れたうえで、子どもが自分なりの考えをもつようになることが大事なので、出版社も、そのためのいろいろな窓づくりをしてほしいものです。

冬に読みたい児童文学の長編ファンタジー【前編】

https://news.goo.ne.jp/article/book_asahi/trend/book_asahi-15555920.html


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