先住民族関連ニュース

先住民族関連のニュース

「ウレシパモシリ」への願い

2009-05-20 | 日記
(読売新聞2009年5月17日)
 今年2月26日、首相官邸の大会議室。アイヌ政策のあり方に関する有識者懇談会で、国立科学博物館の研究者が「自然人類学から見たアイヌ民族」と題して講演した。
概(おおむ)ね次のような内容である。
 《アイヌも本土人も縄文人を基盤としているが、本土人は弥生時代に大陸から渡来した人々と混血することで成立した。アイヌは、縄文人を母体としながらも、周辺集団との交流を続けながら変化していった。北方の少数民族のDNAがアイヌに伝えられていた》
 これを聴いた懇談会メンバーの北海道アイヌ協会理事長・加藤忠さん(70)は実にうれしかったという。「今までアイヌって何?という眼(め)で見られてきたのに、首相官邸で、我々のルーツと、北海道と本州とは違うことが明確にされたのですから」
 アイヌ民族に対する認識は劇的に変化している。2007年9月に国連総会で「先住民族の権利に関する国連宣言」が採択され、アイヌ復権の機運が高まった。08年6月、国会決議を受けて、政府は、初めてアイヌを先住民族と認定した。加藤さんら有識者による懇談会は今夏、アイヌ民族の地位向上に向けた施策を提言する。
 江戸後期以降の近代化の中でアイヌ民族は差別を受け、同化政策を強いられてきた。戦後は、アイヌ民族の存在すら明確ではなかった。そんな歴史と現状を知り、互いの立場を尊重することが、施策を講じる前提になる。
 先住民族の土地や資源の権利を巡っては、難問もあるだろう。
 「ウレシパモシリ」というアイヌ語がある。加藤さんの敬愛する野村義一・元理事長が1992年12月、国連総会の演説の際に用いた言葉だ。「互いに育みあう大地」という意味である。懇談会の提言は、この言葉を実現するための第一歩になる。
      ◇
 ちょうど2年間連載してきた「日曜コラム」は、今回で終わります。様々な人と出会い、取材を重ねるたびに、北海道への愛着が深まりました。ありがとうございました。
(編集部長 飯田政之)
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/hokkaido/feature/hokkaido1197698160920_02/news/20090518-OYT8T00274.htm
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 生活支援新法制定を 道アイ... | トップ | 植樹祭:シマフクロウの森づ... »
最新の画像もっと見る

日記」カテゴリの最新記事