私の実家がある山代温泉(石川県加賀市)に2つ目の総湯、「古総湯」がオープンしました。
明治の初めにあったものを再現したそうですが、もちろん設計図など残っているはずもなく、
いくつか残されていた写真や記録をもとに再現したようです。
そして、これがその当時の貴重な写真と現在の姿。
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Before After
ところで、この古総湯。ちょっとした特徴があります。
というか、無いのが特徴。
券売機で入浴券を買って、湯番のおばちゃんに渡したまでは普通。
「はい、こちらね」とおばちゃんがすぐ後ろの引き戸を開けたところ、いきなり湯けむりがモアーッ。
湯船も見えます。
「あのう。服はどこで脱げばいいんですか」
「ここ、入ったら左横に棚があるから、脱いだものはそこいれてね」
脱衣場が無いのです。
それどころか、洗い場もなければもちろん蛇口やシャワーなんてものもありません。
入浴だけを単純に楽しむ。
すなわち、湯治(とうじ)。
よくぞ、ここまで忠実に再現したものです。
現代社会へのアンチテーゼというか、ここには不便さを楽しむ心地よさがあるような気がしました。
ただ、見逃してはならないのが内装。床は九谷焼のタイルが貼られ、壁の明かりとりにはステンドグラスが使われていました。
当時でももちろん、今でも贅沢な作りです。シンプルな中に心の豊かさを求めた当時の山代温泉の人々に敬服する思いでした。
山代の泉に
遊ぶ楽しさを
たとへて云えば
古九谷の青 与謝野鉄幹
さて。
充分に温まったら、これも忠実に再現された二階の休憩所へ。
引き戸を思いきり開けると
涼しい風が吹き抜けていきました。