久しぶりに訪れた夕暮れの渚。
非常事態宣言解除後の週末だけに
日中はまとまった人出があったのか
砂浜には無数の足跡が残されていた。
ふと...。
砂浜にポツンと黒い塊が見える。
Sony α7S2 Vario-Sonnar 24-70㎜/f2.8 (70mm f/5.6,1/160sec,ISO100)
「人がうずくまっているのかな」最初はそう思ったが
逆光の中とはいえシルエットだけでもいかつい機械のようだった。
近寄ってみると、耕運機のエンジン部分のようにも思えたが
機械から海に向かって一本のワイヤーが伸びて
途中で砂に潜り込んでいる。
小さな船を浜へ上げるために置かれた巻き上げ機ではないだろうか。
それも誰かがあり合わせの機械を使って作ったもの。
想像でしかないがそんなふうに思えたのだった。
そしてまた、このあと何十年も後になって
さらに朽ちて原型を留めないこの機械を誰かが見たとして
「これはいったい誰が何のために置いたのだろう」
と私以上に不思議がるのではないか、と愉快に思えてもきたのだった。
さて...。
そんなことを思いながらこの光景を眺めていたら
ふと、若い頃に読んだ星新一のショートショートを思い出した。
確かこんな話だったと思う。
ある博士が『ひとつの装置』を作り上げ、町の広場に置いた。
それは円筒の郵便ポストのような形で
胴体には押しボタンがひとつと
アームが一本着いただけのシンプルな姿だった。
近寄った人々は皆もの珍しげにボタンを押す。
すると、アームが動きだし、
押されたボタンをつまんで元に戻す。
そして、アームも元の位置に戻るのだが
その後はなにも起こらなかった。
それだけのことでしかないのだが
なぜか誰もがボタンを押したがった。
それから長い時を経て、
装置に近づく人はいなくなり
ボタンが押されることもなくなった。
人類が滅亡したからだった。
さらに長い時間が流れ、
ボタンが最後に押されてから1000年が経ったある日。
突然その装置が別の動作を始めた...。
...その結末は本を読んでください。
ということで折にふれての選曲は
スキーター・デービスの名曲を。
Skeeter Davis ~ The End of The World (1962)
ブレンダ・リーやカレン・カーペンターなど名だたる歌手もカヴァーしており
題名は知らなくてもメロディに覚えのある方は多いかもしれない。