はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

はがき随筆投稿規定

2006-01-26 19:32:16 | アカショウビンのつぶやき
 はがき随筆は、だれでも投稿できるミニ随筆です。日常生活の印象的な出来事を日記がわりに、気楽に書いて下さい。
作品は文章部分が250字前後(17字×15行)。他に7字以内の題。
住所(番地まで)、氏名、年齢、電話番号を明記し、
〒892-0817 鹿児島市小川町3の3、毎日新聞鹿児島支局「はがき随筆」係へ。
 はがき、封書など書式は問いません。新人の投稿を歓迎します。

   1月26日掲載記事より

はがき随筆12月度入選

2006-01-26 14:55:53 | 受賞作品
鵜家さん「程がある、しかし」 鹿児島市
川端さん「ラッキョウの花」 鹿児島市
竹之内さん「300円の値札」 鹿児島市

 はがき随筆12月度の入選作品が決まりました。
△鹿児島市武、鵜家育男さん(60)の「程がある、しかし」(11日)
△鹿児島市鴨池、川端清一郎さん(58)の「ラッキョウの花」(2日)
△鹿児島市城山、竹之内美知子さん(71)の「300円の値札」(21日)の3点です。

 今月は、深みがあって、しかも何とも面白い味のある文章が出そろいました。年の終わりを迎えて、ご年配の方々が様々な人生経験を思い起こされたかなと思ったりしています。まず、鵜家さんの「程がある、しかし」でしょうか。お孫さんとデパートに行って、会った皆から可愛い可愛いと褒められたので、帰宅後に孫の父親である息子さんにその話をしたら、喜んで何回も聞き返したのです。親バカにも程があると鵜家さん、「バカ者、いい加減にせい」と大声で叫んだとか。「しかし、そうは言うものの、もう一人の満足そうにほほ笑む自分がいるのに気づくのであります」と結びました。この結び、さらりとした中に読み手をくすりと笑わせる鵜家さんの人間味が出ていますね。この味は、蠅と遊ぶ岩田昭治さんの「珍客万来」や、ご自分を車に見立てた清田文雄さんの「私とだんな様」、竹之内さんの「300円の値札」などなどたくさんの文章にもあり大いに楽しませてもらいました。
 さて、川端さんの「ラッキョウの花」にはびっくり。ラッキョウを酢味噌で食べてシャキシャキ感を楽しんだ後で、食べ残りを庭先に植えて花を楽しむ人がいるとは驚き。そして川端さん最後に一句、「堂堂のラッキョウの花秋深し」。ついでに、詠み人知らず……とまであって、つい大笑いしてしまいました。楽しい人生ですねえ。
 人生と言えば、今月はご自分の人生観をストレートに書いた方も多かったように思います。谷山潔さんの「人生航路」、上村泉さんの「ユックリズム」、浅山清子さんの「戌年生まれ」など。有村好一さんの「殿様湯」、竹之内さんの「晩秋の露天風呂」も、生き方を楽しむ意味で立派な人生論です。ともかく、今月は、楽しい思いをさせていただきました。
 (日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)

 係から 入選作品のうち1編は28日午前8時40分からMBC南日本放送ラジオで朗読されます。作者へのインタビューもあります。
 「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。


月間賞作品の紹介


程がある、しかし

 久しぶりに大阪から帰鹿した初孫をデパートへ。私にとって念願の女児。バッタリ2組の知人に出会う。皆が「可愛いね」と言ってくれる。
 帰宅後、父親の息子に話すとニヤリのしたり顔で更に催促する。「まだ何かほかに言ってなかったね」と何回も聞き直すのである。親バカにも程があるとはこのことか。
 可愛いのはわかるが「バカ者、いい加減にせい」と、つい叫んでしまった。
 しかし、そうは言うものの、もう一人の満足そうにほほ笑む自分がいるのに気づくのであります。
   鹿児島市武 鵜家 育男(60)


ラッキョウの花
 ある日、八百屋から生ラッキョウを買ってきた。生で食べたらこの世の物とは思えないあのしゃきしゃき感、酢味噌とのハーモニーは堪らない。二日ぐらい食べたが残った分をうっかり忘れていた。袋の中を見ると芽が出ているではないか。庭先に植えてみた。花が咲いた。初めて見るラッキョウの花だ。線香花火に似た花は、線香花火に似て命短くはかないもとの思いしや、周りの植物を押し退けて堂々と咲いている。ひ弱そうに見えてしゃんとした姿は、私をとりこにした。
 「堂々のラッキョウの花秋深し」詠み人知らず。
   鹿児島市鴨池 川端清一郎(58)


300円の値札
 洋服ダンスの中が片付き、すっきりとなった。しかし、なぜか寂しさがこみあげてきて、過ぎ去りし長い日を思い出す。ある時は同窓会に、旅行に、慶事にと私をエレガントにさせてくれた。あなたたちは、もういない。フリーマーケットに出店するからと、娘が私のタンスをターゲットにやってきた。デザインが古いと言う。どれも素敵だったと私は反論する。「でも、もう着ないでしょう。だったら出してよ」と決断を迫る。いつかは、この日が来ると思いつつも、私の気持ちは揺れ動いていた。氷雨降る日。300円の値札をつけて、みんなとお別れした。
   鹿児島市城山 竹之内美知子(71)


感動

2006-01-26 14:49:55 | はがき随筆
1月26日
 先日、温泉に行った時のこと。昼食のため席に着くと、見知らぬご婦人が「ご一緒によろしいでしょうか」。「どうぞどうぞ」と答えると「いいお天気ですね」と、にっこり。
 注文の品が届く間に会話も弾み、親しい友人といるような気分で楽しい食事ができた。
 その人は目が不自由で、家事一切をご主人がなされるとのこと。白い杖を頼りにバスで温泉に来られたとのこち。たった一つの楽しみはカラオケで歌うことだと笑顔で話された。
 楽しみを自分で探し、明るく暮らしておられる姿に感動した。
   出水市上鯖淵 橋口 礼子(71)