はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ぼけ対策

2006-12-04 17:55:57 | はがき随筆
 つり目は垂れ目に、乳も腹も日々垂れていく……。脳細胞もプツンプツンと音をたててつぶれていく。顔、体は鏡を見ない努力で解決できそう。でも頭だけは、ある程度、まともでないと生活できない。何か対策をと考えていた矢先、水曜版に〝数独〟が載るようになった。興味のない分野のものであるが、やってみたら面白く虜になった。1から9までの数字を縦・横の列、3×3のブロックに一つずついれるルールで、既に書いてある数字以外のマスを埋めていくというもの。心身共に色あせていた私に福音がもたらされたような気持ちだ。
   鹿児島市 馬渡浩子(59)2006/12/4掲載 特集版-6

重篤なる病

2006-12-04 17:48:12 | はがき随筆
 毎年給料が下がり続けて8年目、この4月からは3%のカットも。市内に越してからは住居関連の支出が6万余り、と結構きつい。
 これまでの芝居三昧で貯金もほとんどゼロ。「野口英世の世界」で暮らしている。
 ある会合でカラオケ代を立て替えてほしいと頼まれた時なぞは青ざめて、管理費を入れた封筒からン千円を支払ったような次第。
 大好きな芝居を見るにも通帳と相談しながら、赤字覚悟で出かけている。芝居を見たい病と金欠病。どちらもかなりの重態である。
   鹿児島市 本山るみ子(54) 2006/12/4 掲載 特集版-5

写真は「博多座」但し、本文とは関係ありません。

お巡りさんに感謝

2006-12-04 17:20:07 | はがき随筆
 朝夕は深まる秋を感じるこのごろ、早朝散歩にジャケットも要るようになった。それでも雨が降らない時は散歩に行く。ある日、暗い道を夫と歩いているとパトカーが目の前で急に止まった。「何事だろうか……」と驚き、胸がドキドキした。お巡りさんが車から降りて「これを2人とも身につけてください」と反射帯を着けてくださった。「ありがとうございます」と言う間もなく、パトカーは闇に消えた。反射帯を着けるたびにあの時の喜びと感謝の気持ち、またお巡りさんに対しての優しさと温かいイメージを忘れない。
   出水市 橋口礼子(72) 2006/12/4 掲載 特集版-4

愛車と共に

2006-12-04 17:15:34 | はがき随筆
 冬の木枯らしにも負けず、颯爽と駆けた若いころのようにはいかない年齢になったけれど、年を重ねてなお手放せない唯一、私の愛車「ミニバイク」。5年間隔で新車に買い替え、現在6台目で運転歴30年の初老ドライバーである。四季折々、近隣の町周辺を遠出したり、小回りの利く利点もあり日常の用達はもとより、気の向くままに乗り回して来たが、加齢と共に時折、心身の機能低下の不安がよぎる。人生、立ち止まる事も大事かと肝に銘じ、急がず、ゆっくり、年相応に可能な限り、分身のような「ミニバイク」とかかわって生きたい。
   鹿屋市 神田橋弘子(69) 2006/12/4 掲載 特集版-3

錦繍の秋

2006-12-04 17:10:11 | はがき随筆
 いつの間にか柿の葉は散り、子守柿もなくなっていた。暖かいせいか庭の木は紅葉しないまま落葉していく。ころころ転がる落ち葉を集めていると、わずか枝先の1、2枚を真っ赤にしたモミジがあった。美しいなと眺めているうち壮大な錦繍(きんしゅう)の秋を思い出した。
 6年前、中国を旅した折、万里の長城に行った。階段を上がりながら辺りの木々の紅葉に感嘆の声を上げた。やっと上りついた時、遠く延々と続く長城に驚いたが、更に眼下に広がる錦に彩られた風景。それも長城に沿って続いていた。もう一度、訪ねてみたい。
 出水市 年神貞子(70) 2006/12/4 掲載 特集版-2

妻の背中

2006-12-04 17:05:49 | はがき随筆
 妻は朝刊が届くと、まず折り込みチラシを入念に見る。「今日はポイントが5倍」とか「商品によっては定価の半額よ」と独り言。主婦の仕事を済ませ、スーパーの開店時間に会わせて自宅を出る。先日、スーパーに行った妻から電話があった。品物が安いので買い過ぎた。自転車に積みきれないので迎えに来てと言う。「老生の俺まで呼び出して」と、つぶやきながら電動自転車にまたがり向かった。スーパーの入り口に妻がいて、買った品物を私の電動自転車の荷台にも積んだ。帰路、妻が自転車を懸命にこぐ姿を見て、なぜか目頭が霞んできた。
   姶良町 谷山 潔(80) 2006/12/4 掲載 特集版-1