はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

皿ば! さらぱ!

2006-12-13 08:57:09 | はがき随筆
 今は亡き父の逸話である。ある日、父は釣ってきた魚を刺身にして知人宅に持って行って「晩酌のおかずにしやんせ。皿はいつか取りに来いでえ」。数日後、遠方に単車で出掛けた帰りに、知人宅付近を通過しようとすると、知人の奥さんが「皿ば!皿ば!」と叫んだ。奥さんは皿を持って行ってと言うのであるが、皿のことはすっかり忘れていた父は「さようなら」と言っていると思い「さらば! さらば!」と手を振って通り過ぎたという。私は時々、思い出し笑いをする。他界でもいつもの調子で周囲を笑わせているのだろうか。
   鹿児島市 川畑清一郎(59) 2006/12/13 掲載