はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

重荷を下ろす

2006-12-16 09:11:37 | はがき随筆
 父の遺言はただ一つ。「俺の墓は山石を拾って来て建てよ」ということだった。心筋梗塞で急死した父の一周忌に墓を建てることになったが石探しは出来なくて、石屋さんに注文して普通の墓石を建てた。しかし、没後50年近くなる今も父の遺言が頭をかすめる。睨んでいるような気がする。このことを知人に話したら植木屋にいろいろな自然石があると教えられた。そこで早速、出掛けたら黒い無縫塔のような石があった。それを買って我が家の墓地の片隅に据えた。心が軽くなり、仏間の父の遺影が微笑しているように見える。
   肝付町 竹之井敏(81)2006/12/16 掲載