私の好きな岬である。高く丸く突き出し、真っ青な太平洋がはるかに広がり、白い灯台が映える眺望が強く優しく安堵をくれる。28年の自営を廃業、上京が数日に迫り、失意を胸に秘めて来た日。丘に御崎馬が遊ぶ、12月の暖かい日だった。心に「何か」を与えてくれた場所の記憶が残った。しばらく会えない離郷への思いが……。人は遠く離れても、心の中に勇気、安息した場所を残しているが、時として忘れている。失意の時はその場所が生きる勇気をくれる。夕暮れの中、妻が「必ずこの御崎の景色を元気で、再び帰り見たいネ」。強い勇気をくれた。
鹿屋市 小幡晋一郎(76) 2009/2/2 毎日新聞鹿児島版掲載
鹿屋市 小幡晋一郎(76) 2009/2/2 毎日新聞鹿児島版掲載