はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

都井岬

2009-02-02 16:26:39 | はがき随筆
 私の好きな岬である。高く丸く突き出し、真っ青な太平洋がはるかに広がり、白い灯台が映える眺望が強く優しく安堵をくれる。28年の自営を廃業、上京が数日に迫り、失意を胸に秘めて来た日。丘に御崎馬が遊ぶ、12月の暖かい日だった。心に「何か」を与えてくれた場所の記憶が残った。しばらく会えない離郷への思いが……。人は遠く離れても、心の中に勇気、安息した場所を残しているが、時として忘れている。失意の時はその場所が生きる勇気をくれる。夕暮れの中、妻が「必ずこの御崎の景色を元気で、再び帰り見たいネ」。強い勇気をくれた。
   鹿屋市 小幡晋一郎(76) 2009/2/2 毎日新聞鹿児島版掲載

忘れてしまうよ

2009-02-02 16:12:14 | はがき随筆
 「将棋をしようよ」と隣に住む孫がしつこく言う。そこで、未経験の私が、しぶしぶ相手をすることになる。
 一念発起して、毎日1回は対局して覚えよう提案する。孫が勝てるのは唯一、私だけなので、将棋の本をプレゼントしてくれたりする熱の入れよう。彼の優越感をくすぐり、早く言えばカモにされているのである。
 それでも、祖母の私が1回だけ勝ったことがある。勝ってもいいのかなあと思ったぐらい、あっさりと。
 ところが最近、孫はテレビゲームに夢中で休局状態。将棋を忘れてしまいそうな私である。
   霧島市 口町円子(69) 2009/1/31 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はparusさん