はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

縁なき人の

2009-02-12 09:05:48 | はがき随筆
 長い竹のはしで私は骨をつぼに入れた。89歳で老衰で亡くなったおばあさんの骨だ。おばあさんと私は縁もゆかりもない。葬式の写真が初対面であった。
 おばあさんとは、友人の妻の母である。14年前に福岡から娘の住む鹿児島へ越してきた。葬式は参列者も少なく、血縁者も3人だけというこぢんまりしたものだった。私と仲間が夫人に頼まれ、火葬場まで同行したのには、そういう事情があった。
 それにしても、おばあさんにも親友や交流の深かった人などいたろうに。よりによって私に骨を拾われるとは、人生最後のハプニングだったに違いない。
   伊佐市 山室恒人(62) 009/2912 毎日新聞鹿児島版掲載