はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

雪の記憶

2009-02-10 07:41:35 | はがき随筆
 昭和46年2月4日、内之浦も大雪だった。早朝、急に川内へ行くことになった。バスは不通で、鹿屋の青果市場へ行くTさんの車に乗せてもらった。
 鹿屋からはバスやフェリーを乗り継いで、昼過ぎに西鹿児島駅に着いた。売店でTさんからもらった10㌔のポンカンを布袋に移す時、数個があふれた。「おばさん、よかったらもらってよ。おれ今日、いい日でね」
 夕方、川内駅へ着いた。駅前で妻への口紅を買う。その日めざした産院の個室に着くと、妻と生まれたばかりの娘がベッドに並んでいた。窓の向こうは、まだ雪が真っ白だった。
   出水市 中島征士(63) 2009/2/10 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はドナさん