はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

猫は嫌いだ

2009-10-05 22:25:36 | はがき随筆
 犬は好きだけど猫は嫌いだ。ついつい犬と比べるから猫を好きになれないのかも知れない。
 犬は、教えればお座りをするし、待てもする。エサも「良し」と言うまで、ヨダレを垂らしながらでも待つ。
 猫ときたら、飼い主の意向を全く無視している。自分の好きな時に寝て、食いたい時にめしを食う。外に行きたい時は、勝手に網戸を開けて出掛ける。こっちは好意を持っていなくてもシッポであいさつする。
 好きになれない理由は、犬と比べて余りにも気ままで努力していないからである。
 妻は癒やされているらしい。

  出水市 御領満(61) 2009/10/5 毎日新聞鹿児島版掲載

平常心

2009-10-05 22:25:19 | かごんま便り
 高校軟式野球の大会を毎日新聞社が後援している縁で、開幕試合に先立つ始球式を仰せつかっている。登板するのは秋・春・夏と年3回開かれる県大会と、隔年で鹿児島に回ってくる夏の南部九州大会だ。

 初っぱなは着任間もない一昨年の夏。前任者から開会式のあいさつは聞いていたが、始球式は当日まで知らず、あれこれ考えるヒマもなく本番。18・44㍍先の捕手が小さく見える。ワンバウンドだけは避けようと緩い山なりの球を放った。大リーグオールスター戦のオバマ米大統領のように。

 2度目は少々色気が出た。元来、お調子者である。大きく振りかぶり力を込めて投げ込んだのがいけなかった。見事にワンバウンドだった。

 ピッチャーズマウンドの高さは25・4㌢。実際に立つと分かるが、テレビの画面などで見るよりはるかに盛り上がっている感じだ。平地の感覚で投げると球筋は思ったよりも下に向く。力んで放れば言わずもがなだ。

 冷静に考えれば、始球式はいわば余興だ。どんな球を投げても打者は勢いよく空振りしてくれる。捕手が届かない大暴投や打者にぶつけるのは論外だが、格好良く投げる必要などさらさらない。3度目は自分にそう言い聞かせつつ「平常心、平常心」と心の中で繰り返し、力を抜いて投げた。

 結果的には絶妙のコースで捕手のミットに収まったが、その瞬間、平常心は見事に吹き飛んだ。高野連の先生たちから「ナイスボール」と冷やかされたお調子者は舞い上がってしまい、次回はやはり性懲りもなく「力投」する。結果はご想像にお任せするが、以来、こんなことの繰り返しだ。ああ、凡夫の悲しさ。

 言い古されていることだが、平常心が大切なのは何事も同じだ。一方で「言うは易く、行うは難し」とも。昔の人の言葉はやはり含蓄がある。次回の登板は6日の火曜日だが、果たして……。


鹿児島支局長 平山千里 2009/10/5 毎日新聞掲載