09年度の「はがき随筆」年間賞に垂水市市木、竹之内政子さん(60)の作品「金御岳」(昨年10月20日掲載)が選ばれた。表彰式は16日午後1時から、JR鹿児島中央駅前の鹿児島市勤労者交流センターである。竹之内さんに受賞の喜びと作品への思いを聞いた。
「共感誘う作品書きたい」
「宮崎県の綾町からの帰り道で迷ってしまい、たまたま渡り鳥のタカバシラの案内板を見つけて行き着いた先が金御岳。そこで見たサシバのタカバシラに感動したんです」
タカバシラはサシバなどの渡り鳥が上昇気流を求めて群れ飛ぶさま。柱のように見えることからこの名が付いたという。
以来、あの日に鳥たちが見せた不思議な光景が忘れられず、渡りのシーズンになると観察地に出かけるようになった。
88年から営む駄菓子屋の一角に設けたミニ書斎が創作の場。いつも小さな丸テーブルに向かって題材や文の構成を練る。はがき随筆創設のころからの投稿者で、掲載数148回の常連。
「心が穏やかな時でないとなかなか書けませんね。主人がとても穏やかな性格。こうして投稿できるのも夫のお陰だと感謝しています」
「活字を読むのが大好き」と言い「休刊日の翌日は新聞が来ないので落ち着かないんです」と笑う。はがき随筆も「投稿者の皆さんの顔を知っているのでページを開くのが楽しみです」。
これからの創作について「ふだん見逃してしまいそうな瞬間を心に留め、読み手にフフツと笑ってもらえるような、共感を誘うようなものを書きたい」。 【新開良一】
一体感の描写が秀逸
今年も年間賞を選ぶ時期がきました。
1年間分の作品からI編を選ぶのは大変で、大いに迷いました。その結果、次の4作をまず候補として選び、その中から選びました。
出水市高尾野町、清田文雄さんの「四海春」(1月6日)は、雄大な新春の風景に爽快さを感じることができましたが、やや正月向きに過ぎる理由ではずしました。出水市緑町、道田道範さんの「今晩泊めて」(5月11日)は、上質のコントの味わいがあり捨てがたさを感じましたが、少しばかり作りすぎの感が否めませんでした。出水市明神町、清水昌子さんの「風をかわして」(9月24日)は、確かに生活に潜む危機を感じさせる好文章ですが、題名の付け方に一工夫必要だと感じました。
垂水市市木、竹之内政子さんの「金御岳」は、「タカバシラ」という大空で演じられる自然のドラマ、それに感動する人達のはからざる一体感、この両者の組み合わせがすばらしい文章になっていますので、結局この1編を選びました。
最近は新しく投稿される方も多くなり、良い文章が目立ってきました。今年も大いに期待しています。
(鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)
◆ 年間賞作品
金御岳〈かなみだけ〉
「タカバシラ」を初めて見たのは一昨年、偶然通りがかった都城の金御岳(かねみだけ)。それ以来、この時期になると心躍る。今年も早朝に自宅を出発して、現地に着くとすでに大勢の人。立派な望遠鏡が並び車のナンバーも遠くは鳥取、福岡、大分……。金御岳は日本でも有数のサシバ観測点であることがうかがえる。
そのうちタカバシラが確認できると、誰からともなく歓声があがり、一斉にその方向に人が動く。今日、ここで出会った者同士なのにすごい一体感。この日、4500羽のタカバシラがカウントされた。いつの日か生の鳴き声を……。
垂水市市木 竹之内政子〈60〉
「共感誘う作品書きたい」
「宮崎県の綾町からの帰り道で迷ってしまい、たまたま渡り鳥のタカバシラの案内板を見つけて行き着いた先が金御岳。そこで見たサシバのタカバシラに感動したんです」
タカバシラはサシバなどの渡り鳥が上昇気流を求めて群れ飛ぶさま。柱のように見えることからこの名が付いたという。
以来、あの日に鳥たちが見せた不思議な光景が忘れられず、渡りのシーズンになると観察地に出かけるようになった。
88年から営む駄菓子屋の一角に設けたミニ書斎が創作の場。いつも小さな丸テーブルに向かって題材や文の構成を練る。はがき随筆創設のころからの投稿者で、掲載数148回の常連。
「心が穏やかな時でないとなかなか書けませんね。主人がとても穏やかな性格。こうして投稿できるのも夫のお陰だと感謝しています」
「活字を読むのが大好き」と言い「休刊日の翌日は新聞が来ないので落ち着かないんです」と笑う。はがき随筆も「投稿者の皆さんの顔を知っているのでページを開くのが楽しみです」。
これからの創作について「ふだん見逃してしまいそうな瞬間を心に留め、読み手にフフツと笑ってもらえるような、共感を誘うようなものを書きたい」。 【新開良一】
一体感の描写が秀逸
今年も年間賞を選ぶ時期がきました。
1年間分の作品からI編を選ぶのは大変で、大いに迷いました。その結果、次の4作をまず候補として選び、その中から選びました。
出水市高尾野町、清田文雄さんの「四海春」(1月6日)は、雄大な新春の風景に爽快さを感じることができましたが、やや正月向きに過ぎる理由ではずしました。出水市緑町、道田道範さんの「今晩泊めて」(5月11日)は、上質のコントの味わいがあり捨てがたさを感じましたが、少しばかり作りすぎの感が否めませんでした。出水市明神町、清水昌子さんの「風をかわして」(9月24日)は、確かに生活に潜む危機を感じさせる好文章ですが、題名の付け方に一工夫必要だと感じました。
垂水市市木、竹之内政子さんの「金御岳」は、「タカバシラ」という大空で演じられる自然のドラマ、それに感動する人達のはからざる一体感、この両者の組み合わせがすばらしい文章になっていますので、結局この1編を選びました。
最近は新しく投稿される方も多くなり、良い文章が目立ってきました。今年も大いに期待しています。
(鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)
◆ 年間賞作品
金御岳〈かなみだけ〉
「タカバシラ」を初めて見たのは一昨年、偶然通りがかった都城の金御岳(かねみだけ)。それ以来、この時期になると心躍る。今年も早朝に自宅を出発して、現地に着くとすでに大勢の人。立派な望遠鏡が並び車のナンバーも遠くは鳥取、福岡、大分……。金御岳は日本でも有数のサシバ観測点であることがうかがえる。
そのうちタカバシラが確認できると、誰からともなく歓声があがり、一斉にその方向に人が動く。今日、ここで出会った者同士なのにすごい一体感。この日、4500羽のタカバシラがカウントされた。いつの日か生の鳴き声を……。
垂水市市木 竹之内政子〈60〉