はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

神仏人の恩恵か

2010-05-13 20:27:09 | はがき随筆
 降ってわいた幸いか。4月1日以降無職のままの生活かと思っていた。電話が鳴る。「時間給での勤務を、面接は○月○日です」とのこと。面接後3日ほどして、中学校数学担当で勤務がスタートした。
 今、ほとんど給食後退庁である。午後から温泉行き・教材研究・昼寝・創作:・という有り様である。古希にしては、ほどよい案配で、日々に充実・充満さを感じている。
 正規採用時までには、生徒のよさと名前を知る。同時に、体調づくりに、一日勤務に慣れさせる準備期間か。神仏人の与えし恩恵なのか。
  出水市 岩田昭治(70) 2010/5/13 毎日新聞鹿児島版掲載

母へ

2010-05-13 20:25:01 | はがき随筆
 元気でデイサービスなど利用していたあなたが、急に歩くのも食事も困難になり入院して一カ月余り。病室へ毎日通う私です。根気よく声をかけると、目を開け笑顔も見せ、そして時にうなずきます。後は眠り続けています。
 やがて梅の季節。去年は一緒に梅ちぎりに行った。山深いそこには今年も見事な実。「来年も行こうね」と約束したのだった。
 春の草餅、五月のちまきも作りました。あなたから教えてもらった事が多くあります。今まで生きていてくれた事、今生きていてくれる事、感謝です。
  薩摩川内市 馬場園征子(69) 2010/5/12 毎日新聞鹿児島版掲載
画像はストーンフェイスさん


ラプ・アゲイン

2010-05-13 20:24:00 | はがき随筆
 友だち以上、恋人未満だった雅治(名前をお借りしました)さんと、近くのスーパーで、偶然、会いました。
 「わあ、お久しぶりですね」
 「元気そうだね、よかった」
 45年ぶり。彼は70歳です。
 「まだ、もて夫さんですか?過ぎると毛が薄くなるそうですよ。彼女は今、何人?」
 「髪の毛は東シナ海に捨てた。彼女なし。過去も現在も……」
 自販機コーナーーで、缶コーヒーを飲みながら、メール・アドレスの交換をしました。時々、メール。「お腹が空いた」「母の介護で疲れるぅ」。いい感じです。ウフフ。
  阿久根市 別枝由井(68) 2010/5/11 毎日新聞鹿児島版掲載

「いつか分かるよ」

2010-05-13 06:43:58 | 岩国エッセイサロンより
2010年5月11日 (火)
 岩国市  会 員   中村 美奈恵

「お母さんは僕のことを全然大事にしてくれん」と小5の息子が言った。父親のようにゲームや漫画を買わないからだろう。「大事にするって、物を買ったりすることじゃないよ。あっくんのために食事を作ったり、洗濯をすること」

 一人暮らしをしている上の息子も言っていた。「起きたらご飯ができてるだけで幸せ」って。

でもまあ、三男の子育てには手を抜いているのかなあとちょっぴり反省しつつ、夕食は息子の好きな煮魚にした。「おいしい」。ほらね、こういうところに気持ちを込めているの。気づかないだろうけど。
 (2010.05.11 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載