山門の脇の木陰にはベンチが置いてある。風通しがとても良く、境内の中で最も涼しい場所である。寺参りや墓参りに来た人たちの絶好の休憩の場であり、社交の場でもある。
時々、ここで行われる井戸端会議に顔を出すと、思わぬ歓迎を受け話が弾む。会議のメンバーはなぜか70歳過ぎの独り暮らしの女性が多い。
子育ての苦労話、夫を亡くした時の悲しみ、時には姑さんにいじめられた話女性特有の苦労話が女性特有の苦労話が多いのだが、意外に明るい。
この人たちに共通しているのは、子や孫の様子をあまり話したがらないこと。それぞれ家庭を持って県外などにいるようだが、独り暮らしの彼女たちは話題にしようとしない。聞いてみると、話題にすると愚痴になって寂しさが増すという。知り合い同士でにぎやかにしゃべっても、1人になるとやっぱり寂しいと。
数年前、ある寺の「愚痴聞地蔵」さんにこっそり参る老婦人の様子をテレビで見て、心を動かされたことがある。友人で信心深い病院の元理事長に相談したら快諾していただき、わが寺にも「愚痴聞地蔵」さんを迎えることになった。まだあまり知られていないようだが、地蔵さんのひざの上に時々さい銭が上がっている。誰かがお参りに来られているのだろう。
地蔵さんは今日も大きな耳に右手を添えて、静かに笑みながら鎮座していらっしゃる。
鹿児島県志布志市・僧侶 一木 法明・74歳 毎日新聞男の気持ち欄掲載
時々、ここで行われる井戸端会議に顔を出すと、思わぬ歓迎を受け話が弾む。会議のメンバーはなぜか70歳過ぎの独り暮らしの女性が多い。
子育ての苦労話、夫を亡くした時の悲しみ、時には姑さんにいじめられた話女性特有の苦労話が女性特有の苦労話が多いのだが、意外に明るい。
この人たちに共通しているのは、子や孫の様子をあまり話したがらないこと。それぞれ家庭を持って県外などにいるようだが、独り暮らしの彼女たちは話題にしようとしない。聞いてみると、話題にすると愚痴になって寂しさが増すという。知り合い同士でにぎやかにしゃべっても、1人になるとやっぱり寂しいと。
数年前、ある寺の「愚痴聞地蔵」さんにこっそり参る老婦人の様子をテレビで見て、心を動かされたことがある。友人で信心深い病院の元理事長に相談したら快諾していただき、わが寺にも「愚痴聞地蔵」さんを迎えることになった。まだあまり知られていないようだが、地蔵さんのひざの上に時々さい銭が上がっている。誰かがお参りに来られているのだろう。
地蔵さんは今日も大きな耳に右手を添えて、静かに笑みながら鎮座していらっしゃる。
鹿児島県志布志市・僧侶 一木 法明・74歳 毎日新聞男の気持ち欄掲載