はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

庭のアンズに夫思う

2015-05-22 10:46:20 | 岩国エッセイサロンより

2015年5月20日 (水)

   岩国市   会 員   稲本 康代

 わが家の庭にあるアンズの木が、今年もたくさん実を付けた。
 主人は中国・雲南省の麗汪を友人と旅している最中に、体調を崩して異国で急逝した。それは、アンズの花が満開に咲いている里だった。
 その時、一緒だった友人が、アンズの木をわが家の庭に植えてくれた。
 あれから13年が過ぎて、1㍍近い高さになった。春が来ると毎年、桜に似た薄いピンクの花を付ける。
 私は、その花を眺めながら、さまざまな思いを巡らせ、いつも切ない気持ちになっていた。
 しかし、時間の流れはつらさを忘れさせてくれて、近頃はこだわりなく花を見詰めている。
 そのアンズは、6月に入ると実が熟してきて、梅に似た青い実がだんだんと黄色になる。
 その実を自家製のジャムにするのが私の楽しみになった。上手にビワ色に煮上がったときのうれしさは、例えようがない。
 出来たてのジャムの瓶をかざしている私である。

      (2015.05.20 中国新聞 「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載