2015年5月20日 (水)
岩国市 会 員 稲本 康代
わが家の庭にあるアンズの木が、今年もたくさん実を付けた。
主人は中国・雲南省の麗汪を友人と旅している最中に、体調を崩して異国で急逝した。それは、アンズの花が満開に咲いている里だった。
その時、一緒だった友人が、アンズの木をわが家の庭に植えてくれた。
あれから13年が過ぎて、1㍍近い高さになった。春が来ると毎年、桜に似た薄いピンクの花を付ける。
私は、その花を眺めながら、さまざまな思いを巡らせ、いつも切ない気持ちになっていた。
しかし、時間の流れはつらさを忘れさせてくれて、近頃はこだわりなく花を見詰めている。
そのアンズは、6月に入ると実が熟してきて、梅に似た青い実がだんだんと黄色になる。
その実を自家製のジャムにするのが私の楽しみになった。上手にビワ色に煮上がったときのうれしさは、例えようがない。
出来たてのジャムの瓶をかざしている私である。
(2015.05.20 中国新聞 「広場」掲載)岩国エッセイサロンより転載