はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

小さい国際交流

2015-05-30 18:54:54 | はがき随筆
 新緑でいっぱいになる頃、米国ウイスコンシン州からお客さあがやって来た。会話は「どげんなっどかい」と最も心配だったが、蓋を開けてみると「和英辞典」「手話」「絵文字」、そして笑顔と心でほとんど通じた。鹿児島の醍醐味を何か味わってほしいと、かごっま弁を交えながら焼酎蔵と山並みの下に広がる小さな棚田の風景を案内した。蔵のスタッフのおもてなし、棚田の景色と心を打ち感動してくれた。異文化に興味深く、意外な質問に知らなかった古里の再発見もできた。短い交流だったが最後はお互いに「なんだ なんだ」の別れとなった。
  さつま町 小向井一成 2015/5/30 毎日新聞鹿児島版掲載

夫はヒナ鳥?

2015-05-30 18:10:48 | はがき随筆
 今年もツバメが飛んでいる。ヒナが口をあけて親鳥を待っていることたろう。何の疑いもなく親の運ぶエサを食べる様子につい夫を連想してしまう。4人兄弟で育ち、生存競争が激しかったのか食欲旺盛な人で好き嫌いがない。私が調理中に味見のためスプーンを差し出せばパクッと食べる。食材は何かとか熱くないかという躊躇が全くない。これなら私が毒団子を夫の口元へ持っていけば“いちころ”だ。毒は論外としても食事を作ることで私は夫の命を預かっているとつくづく思う。世の男性がた、くれぐれもお連れ合いに優しく。
  鹿児島市 種子田真理 2015/5/29 毎日新聞鹿児島版掲載

あの人と私

2015-05-30 18:01:59 | はがき随筆
 薄墨色のサギが川べりで川面を見ている。猫に呼びかけるように舌を鳴らして「お魚さがしてるの?」と声をかけらた「猫じゃあるまいし」と言わんばかりに飛んでいってしまった。
 ウグイスが林で発声練習をしている。「きれいな声ね」と褒めたら「でしょ、でしょ、でしょ」と、さえずること。一生懸命さがかわいくて、おかしくて相手をしていたら、あの人に置いていかれた。
 苦手な蛇にまで声をかけるので「人じゃないのにおかしいよ」と、あの人はケチを付ける。彼には私の感性が理解できない。私にはそれが理解出来ない。
  鹿屋市 伊地知咲子 2015/5/28 毎日新聞鹿児島版掲載