はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

月間賞に門倉さん

2015-05-27 06:06:08 | 受賞作品
はがき随筆4月度

はがき随筆の4月度の入賞者は次の皆さんです。

【優秀作】4日「ユーモア礼賛」門倉キヨ子(79)=鹿屋市串良町
【佳作】 2日「親の心子知らず」伊地知咲子(78)=鹿屋市打馬
     6日「スマホ春愁」清水昌子(62)=出水市明神町


 「ユーモア礼賛」 自転車に乗ったままで道を尋ねた人に、ユーモラスな格好で、やんわりとその非礼を注意した人の思い出が内容です。私の知人に、車に乗ったまま窓から道を尋ねる人には教えてやらない商店主がいますが、私たちの伝統的な美徳が急速に失われていくことへの郷愁が、明るい文章のなかによく表れています。
 「親の心子知らず」 海外旅行が珍しかった時代、40日の長旅の間、もしものことを危惧して、娘の枕カバーを洗わずにその匂いを残していたという、珍しい母親の愛情が内容になっています。肉親間には、常識では考えられないようなことが起こるものですね。
 「スマホ春愁」 孫がスマホを買ってもらって、電話してきた。まだ小学2年生なのにと、報道される事件などを連想しての心配が率直に書かれています。いわゆるハイテクの使用には、ある世代以上の人には、子どもの教育への懸念が先立つようです。ハイテクをいかに有効活用するか、これから大きな課題になりそうです。
 この他に3編を紹介します。
 高橋宏明さんの「初恋」 は、中学2年の時の、美しい音楽の先生に対する初恋が甘美に描かれています。始業式のニュースを見ると、いまでも楽しい気分になるとは、羨ましいかぎりです。
 中島征士さんの「恋の季節」 は、シジュウカラのために巣箱を仕掛けたら、初めは失敗したが、今年は何組も集まって来る。早いもの勝ちだと、巣箱で恋が実るのを待っているという、楽しくなる文章です。
 西尾フミ子さんの「夢」 は、ご主人が末期がんで亡くなられた、その病状に気付かなかったことを悔いていると、夢に現れたご主人に慰められたという内容です。死にまつわる後悔は取り返しがつきませんが、それでも生きていくよりほかないようです。
 4月分は、なんと13日分が、桜の開花や草花の話題でした。自然の推移を素材にして読む人を動かすのは案外難しいものです。いろいろの工夫をお願いします。
(鹿児島大学名誉教授・石田忠彦)

ザクロに花

2015-05-27 05:51:05 | はがき随筆


 4年前、植木市で買ったザクロ。鉢に植え、昨年は三つの花が咲いたのに、ラジオ体操のときに手が触れてちぎれた。
 昨年の梅雨明け、庭へ移して活着したのに、時が来てもなかなか蕾が見つからない。「ワタシがちぎったとカン違いして、ザクロが怒ったらしい」とやや焦った。
 すると2.3日前、小さな蕾を枝先に見つけた。「よかったー。時が来たのだ。よかったー」とうれしかった。
 隣のキンカンの木には頭デッカチのアゲハの幼虫が10ばかり成長中で、喜びは二重唱になった。
   鹿児島市 東郷久子 2015/5/27 毎日新聞鹿児島版掲載