はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

支えられて

2008-03-11 08:14:18 | はがき随筆
 琵琶湖での再会の様子は心に強く印象づけられている。学友との今回の出会いは、京都であった昨夏のスクーリングと違い親交と観光が私を若返らせる。 
 一日目。何十年ぶりかのボウリング。点数を稼げず悪戦苦闘。しかも1試合目は最下位。3試合目ごろからストライクも入り「昭ちゃん、うまいね」と倍以上に絶賛、賞賛してくれる。
 2日目。嵐山での観光。渡月橋を渡る中、小雪が舞う。初めての経験で、満喫の度合いは学友以上である。通信教育を始めたこの1年、大収穫である。学友に恵まれ支えられている。
   出水市 岩田昭治(68) 2008/3/11 毎日新聞鹿児島版掲載

失敗は笑い飛ばすものである

2008-03-10 17:07:50 | アカショウビンのつぶやき
 久しぶりに図書館へ行き、斎藤茂太の「青春はエンドレス」を借りてきた。
10年以上前の本だが、多いに笑わせてもらった。
その中で、「これだ、これだ」と嬉しくなったのが
 「失敗は笑い飛ばすものである」
 この歳になると、物忘れ・勘違いで人様に御迷惑をかけるような失敗も度々。「誰でも物忘れはあるわよ」と慰めてくださるが、ちょっぴり落ち込む。 ブログに書けば毎日ネタは尽きないだろうと思えるほどに、次から次へと何かやらかしている。

 モタさんの言うところによると、
失敗は心の中に秘めるものではない、「オレはいよいよ駄目になった」と落ち込むとうつへ向かってしまう。
モタさんが実践している〝うつからの脱出〟一番の方法は、自分の失敗や、その時の感情をメモに書き留めること。自分自身を客観的に見つめられるようになり、あとで読み返し「これは傑作だ」と思ったら、どんどん人に話して笑い飛ばしてもらうのだそうな。
私なんか毎日傑作を作りだしているような気がする。

何だか気持ちが軽くなった。これで物忘れも怖くない!
なんて言ってると、また子供たちの「お母さん、しっかりしてよ」の一言が聞こえてきそうな…。家族は厳しい(>_<)のだ。


  


男のギョーザ

2008-03-10 07:15:58 | はがき随筆
 男の料理教室で習ったギョーザを我が家で実践。短縮して〝男のギョーザ〟。
 月に1回とはいえ9回も講習を受ければ、少しは冒険心も芽生える。講習ではニンニクを使わなかったが、カミさんに分量を教わって入れてみた。コショウも入れた。さらに白菜をキャベツに替えた。包み方は以前にカミさんから手ほどきを受けていたので、まずまずの形に。
 どんな味に仕上がるか心配顔だったカミさん。「ウン、おいしい。ちょうとジューシーさに欠けるけど、これなら合格」とOKサイン。料理も結構楽しいものではある。
   西之表市 武田静瞭(71) 2008/3/10 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はbsanchorさんからお借りしました。

支え合って

2008-03-10 07:09:49 | はがき随筆
 「前髪を切って」と風呂上がりの顔をつき出す。お風呂前のほうがよかったのにと言いながらも、まゆギリギリの線で丁寧に切りそろえていく。もうすぐ19歳。初孫のこの子を亡夫と2人でたらいでもく浴させた思い出や、長じて夫を囲んでトランプに興じた日々がよみがえる。 
 私が寝込んでいる間は、母(彼女には曾祖母)の見舞いに何度も行ってくれてありがたかった。車の免許も取り、私をどこまでも運んでもくれる。いつの間にか、支えてくれている。
 ありがとうと手鏡をのぞきながら「幼顔になったね」とニンマリ笑う孫。立春の夜である。
   霧島市 秋峯いくよ(67) 2008/3/9 毎日新聞鹿児島版掲載

血液型のなぞ

2008-03-08 06:39:22 | はがき随筆
 「バッティングセンターのホームラン王」「老人パワーの『鹿児島のイチロー』」と騒がれ、度々テレビに引っ張り出される。しかし、きちょうめんでクソまじめ、地道な実験的仕事大好きの典型的A型人間。なかなかイケイケドンドンの華やかなヒーローにはなれない。
 私よりも陰で支えてくれる人たちを同じように扱ってほしいのだが、テレビ局は〝ヒーロー〟のみを追っかけ回す。
 そんなことに悩み、心いためる私の血液型は、実はB型だった。30年前にわかったけれど、いまだにマイペースで陽気なB型人間には、なれないでいる。
   鹿児島市 満山一朗(68) 2008/3/8 毎日新聞鹿児島版掲載

2人の食卓

2008-03-07 17:28:29 | アカショウビンのつぶやき
ほっそりとした体を保ちたいならば
おなかをすかした人に
食べ物を分けてあげなさい


これは、オードリー・ヘプバーンが好きだった、
米国人作家、サム・レベンソンの詩
「時の試練をへた人生の知恵」の一節です。

 日本発の国際貢献活動「テーブル・フォー・ツー」とは、低カロリーのメニューを選べば、食事代の一部20円が、国連の世界食糧計画(WFP)に寄付され、アフリカなどの学校給食費にあてられる仕組みです。
20円は途上国での学校給食1食分の費用。一つの食事を途上国の見知らぬ子どもと分かち合うという意味で「2人の食卓」と呼ぶという。

 横浜市や伊藤忠商事、富士通などが昨年から社員食堂で導入し、自らの肥満防止や社員の健康増進が途上国支援につながることが共感を呼び、インドや米国にも輪を広げつつあるという。

 レストランで、メニューを決める時、真っ先に考えるのは「食べきれる量かな…」。戦中派の私はモッタイナイが染み込んでおり、残すのは罪悪感を感じる。夫がいた頃はいつも応援して貰ったが、今は独り分の小さな胃袋しかないので、美味しそうなメニューも我慢しなければならない。この運動が広がって、量もカロリーもひかえめなメニューが多くなってほしいとつくづく思う。

 遠い国の子どもと食事を分け合うことができることは素晴らしい
  
 ※ 毎日新聞「発信箱」から引用しました。



小さな希望

2008-03-07 07:47:15 | はがき随筆
 夕方、可燃物だけは自分で持参しようと家を出たが、途中でつえを忘れたことに気づいた。歩行困難で介護してもらう日常生活なのに……。不安が募る。ペースメーカーは異常な強さで動く。倒れるのを覚悟で曲がった背を伸ばし、泳ぐように歩いて家にたどり着く。不思議!!
 わずかだが歩けた。60日ぶりだ。動けば最悪の事態を招くとの恐怖心で何もできず、絶望のどん底で苦しんでいた。助けてくれる知人友人のお陰だと、うれしくて感謝の涙があふれる。少しずつ努力したい希望が見える。夕闇の沈丁花の香りの中から優しい夫の声が……空耳?
   薩摩川内市 上野昭子(79) 2008/3/7 毎日新聞鹿児島版掲載
   写真はネロさんからお借りしました。

ツルの北帰行

2008-03-06 07:23:52 | はがき随筆
 念願だった出水のツル展望室からの眺望に感嘆した。
 遠く広い田に1万羽がひしめき無心に餌を食べている。近くにカラス、ハト、カモたちも仲間入りのユーモラスな風景。悪天候で北帰行がなく少しガッカリするが、若いガイドさんの「北帰行の親子が上空を旋回しながら鳴く声が『ありがとう、ありがとう』と聞こえます」との説明に涙腺が緩み、遠いツルに来年も来いよとつぶやく。次回はこのシーンに出会いたい。
 故郷モンゴルでは人々が白い旗を振って待つと聞く。出水の人たちにも、来年も元気に〝再見〟の温かい希望の灯が残る。
   鹿屋市 小幡晋一郎(75) 2008/3/6 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はBird Watching さんからお借りしました。

冬の使者

2008-03-05 07:39:56 | はがき随筆
 厳しい残暑の後に訪れた短い秋が終わるころ「ヒンヒン」と透き通る声のジョウビタキがまずやって来る。空気が更に冷たく感じるころになると「キリキリコロコロ」とにぎやかなメジロたち。彼らのお目当ては梅の枝に差した甘いミカン。最後は「キョロッ、キョロッ」と鳴くアルトの名手シロハラだ。でっぷり太って地味なこの鳥を夫はシロハラおばさんと呼んでいたが、彼女?は落ち葉をけ散らし庭中を散らかす張本人。
 探鳥の楽しみを教えてくれた亡き夫に感謝しつつ、愛らしい冬の使者に慰められる日々である。
   鹿屋市 西尾フミ子(73) 2008/3/5 毎日新聞鹿児島版掲載
シロハラの写真はBird Watchingさんからお借りしました。

春近し

2008-03-04 13:41:41 | アカショウビンのつぶやき




 慌ただしい日が続き、庭を眺める余裕もない一週間だった。
 やっと一段落して今日は久しぶりに本業の主婦となり冷凍保存食作りに精を出す。途中、ニラを取りに庭に出て驚いた、大きなラッパ水仙が三つも咲いている。エエーッいつの間に…。でもラッパ水仙を植えた記憶がない。
 姉に貰ったままほったらかし、2年越してしまった八重咲きスイセンを、昨年11月末、プランターや庭のあちこちに植えた。その半分がラッパ水仙だったらしい。植え付けが遅かったせいか超ミニだが、寒風の中に凛と咲く姿は花言葉のひとつ「気高さ」を感じる。
 カメラを向けると、強い北風に大きく揺れなかなか撮れない。絶え間なく揺すられながらも、しっかり首を持ち上げている。
 
 私の歩く道も、どんより曇った日、ザアザア降りの日もあるけれど、雲の上には青い空と輝く光があふれている。
春は、もうすぐ! さあ今日は主婦業に専念しよう。

替え歌

2008-03-04 08:46:56 | はがき随筆
 ひさしぶりに同窓会があった。芸のない私は宴会でいつも肩身が狭い。思案の末、替え歌を自作し万一に備えた。出番がないことを祈っていたがやっぱりマイクが回ってきて手に取った。
 「蛍の光窓の雪/七坂八坂重ねつつ/いつしか年も八十路/迎えて今朝は集いきたる」「懐かし友は先に逝けど/残れる我らの幸を祝う/互いに心通わせて/明るく笑いの種をまこう」「喜び悲しみにじむ汗も/根性一つで駆けてきたね/尊き旅路を誇りとして/いとしき命をめでて生きよう」
 どっと拍手が鳴り、うれし恥ずかしだった。
   霧島市 楠原勇一(81) 2008/3/4 毎日新聞鹿児島版掲載

散歩の途中で

2008-03-04 01:20:19 | はがき随筆
 久しぶりの青空に足どり軽く家を出た。風はまだ冷たい。その風を切るように白いワゴン車が走り去り、5歳ぐらいの女の子が泣きながら追っかける。50㍍ぐらい先で止まったがドアは開かず、また車を動かし止める。戒めかな? でも、とすれ違う。「かわいそうに」と自転車に乗った2人の女子中学生。「おばさんも胸が痛む」と3人で見守った。やっと乗せられ走り去る車にほっとして「さようなら」とペダルをこいでいった。やり切れないが何か救われたつかの間の出来事。女の子もさわやかな少女2人のように成長してねと祈りながら先を急いだ。
   薩摩川内市 田中由利子(66) 2008/3/3/
   毎日新聞鹿児島・はがき随筆特集版-6

涙の鬼手

2008-03-04 01:13:19 | はがき随筆
 碁敵が妙齢の女性との対局を勧める。むさ苦しい親父どもにへき易していた私に否やがあろうはずがない。早速盤を囲む。
 日本人形のような美ぼうに目がくらみ、形勢は十数目もリードされている。そこから丁々発止のせめぎ合いを展開。敗色濃厚な私は、起死回生の追い落とし筋を発見した。その瞬間に彼女の目から一粒の真珠がほおを伝った。
 「まれに見る素晴らしい一局でしたよ」。慰めの言葉にも目がうつろ。碁敵が「KY」とささやくも、時すでに遅し。彼女の涙の鬼手に、私の受け手はすべて効かない。
   出水市 道田道範(58)2008/3/3
   毎日新聞鹿児島・はがき随筆特集版-5

武道館にて

2008-03-04 01:05:01 | はがき随筆
 今年の舞台観賞は、日本武道館での南こうせつコンサートからスタート。友人と2人、時間に余裕をもって九段下へ。かつてヒット曲に歌われた「金のタマネギ」が夕日に輝いていた。
 36年前、日本人アーチストで初めて武道館を使ったのは彼だとか。当時の映像も一部映し出されて会場から「若いねえ」の声。懐かしい曲から最新のものまでおよそ40曲、休憩なしの3時間半。聴いている数万人もほとんど同世代。そろいの法被や丁シャツで張り切っているグループもあちこちに。来年は還暦コンサートをつま恋で開くという。行くしかないじゃん。
   鹿児島市 本山るみ子(55) 2008/3/3
   毎日新聞鹿児島・はがき随筆特集版-4

負うた子に

2008-03-04 00:58:48 | はがき随筆
 バイオリンを子供に習わせていた母親4人して、今度は自分たちが習い始めた。 大病を患った私は心の癒しを求めてハープに巡り合った。1時間ぐらいは練習しようと心がけているが、体調の悪い日もあり継続は難しい。この上バイオリンまで?とためらったが、子供もやっていたこと……と。
 先日帰省した次男が私の弾くのを聞いて「お母さんは自分では弾けないくせに、僕にはあれこれと注文をつけていたのだね」。私の楽器も弾き手によってはこんなに良い音を出すのだなと思えるほど、きれいに響く音で弾いてみせた。
   鹿児島市 馬渡浩子(60)2008/3/3
   毎日新聞鹿児島・はがき随筆特集版-3