はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

70歳の幸せ

2010-07-11 20:42:35 | はがき随筆
 果たせるか、果たせぬか。アホかバカになってやるだけのことはやってみよう。成功は一分とも、喜びは倍増することは事実であろう。
 今日の存在があるのは、思い切って実践した結果であろう。老いて挑戦して失敗の結果が生じると、笑い者の自分になる。笑われてもよい。後生に残るかも知れぬ。孫からあざけ笑われてしまうかも知れない。
 37歳の挑戦。68歳の小学校教諭免許状取得。その後、1年半ほど有効になった。純朴・純真の子どもから「ハローハロー」の声が耳から離れない。70歳の幸せ、ほんとうなのだろうか。
  出水市 岩田昭治(70) 2010/7/9 毎日新聞鹿児島版掲載

あなたの笑顔を

2010-07-11 05:30:49 | はがき随筆
 救急病院に搬送された夫は、40度あった肺炎の熱も徐々に下がった。しかし、こん睡状態が続いている。わずかな期待をもって梅雨のさなか病院へ。出口の見えないトンネルをさまよっている夫を思い、今はただ祈るのみ。複雑な思いだけが交錯する。大雨の夜など自然と声をあげて泣いてしまう。13日目奇跡が起きた。「お母さんは」。視力のない夫の微かな声。思わずベッドに身を乗り出し両手を強く握りしめた。点滴だけで頑張ってくれたことに感謝し、胸が熱くなる。トンネルの出口が少し見えてきたよ。「頑張って」。早くあなたの笑顔を見たい。
  鹿児島市 竹之内美知子(76) 2010/7/8 毎日新聞鹿児島版掲載

遅咲きの結婚

2010-07-11 05:16:31 | はがき随筆
 「悲しみを喜びに転じられる、のは人間だけだ」の言葉は私の胸に刺さりました。これまで「何で私ばかりが」と悲しんでばかりでした。
 これは、彼女からもらった手紙の冒頭である。一人っ娘の彼女は祖父母や両親に囲まれ成人した。ところが、20歳を過ぎたころから祖父母をはじめ両親まで病魔におかされ、やがて独りぼっちになってしまった。看病を終えた彼女は30歳の半ばを過ぎていた。彼女に同情し慰めることは難しくない。親から受け継いだ命をどう輝かすかだ。
 彼女の手紙は、遅咲きの結婚をしました、と結んであった
  志布志市 一木法明(74) 2010/7/7 毎日新聞鹿児島版掲載

「病院の母子」

2010-07-10 17:44:02 | 岩国エッセイサロンより
    岩国市  会 員   金森 靖子

 病院の待合室で3人の子供を連れた母親と隣り合って順番を待っていた。赤ちゃんと3歳位の弟の面倒を見ているのは、小学1年くらいの女の子。子供たちは母親にいろんな話をしているが、大声は出さない。

突然、女の子は「えみちゃんがまだお母さんのおなかにいる時、ゼリーみたいなのおなかに塗って検査したでしょ。あの時、お母さん、気持ち良さそうだったなぁ」とうっとりした顔でつぶやいた。

なんと可愛い顔だろうと私は見ていた。やがて母子は「エコー室」に入った。子供たちは今、何を感じているのだろう。
  (2010.07.09 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載


久しぶりの青空

2010-07-07 17:13:49 | アカショウビンのつぶやき
 さわやかな風が吹き抜けて行きます。
久しぶりの梅雨の中休み、やることはいっぱいです。

湿度は70パーセント、やっぱりまだ高いですねぇ。
でも押し入れもシンク下も開け広げて風を入れました。

火山灰や、落葉の片付け…サボったツケは、たっぷり返ってきます。

今年は長雨でお花がだいぶやられました。
65輪も咲かせた、フランネルフラワーは見る影もなく、母の日に届いたカーネーションも、ベゴニアまで怪しくなりました。


でも頂き物のフロックス、病気にやられましたが、今ようやく勢いを取り戻し、ちっちゃいけれど咲きました。


プランターに植えたアスパラガスはどうしたのでしょう。
雨のせいか、よくわかりませんが曲がりくねって伸びています。
今年は収穫できませんが、来年が楽しみ。



時期はずれに植え替えた木瓜は、すっかり枯れたように見えましたが、ぐんぐん新芽が伸びてきました。

植え込みのサツキを思い切って2本抜き、狭いけど花壇にかえました。
とりあえず、ジャーマンアイリスを3株移植し、
あとは手のかからないミリオンゴールドでも植えておきましょう。

春の花壇に想いを巡らしながら、秋植えの花を物色中。


カボチャの花

2010-07-06 13:35:17 | はがき随筆
 この春は天候不順で野菜の生育が悪かった。しかし、5月に入って回復してきた。夏野菜も年中食べられる今、やはり露地で栽培した旬の野菜を食べたいと、毎朝、野菜の生育を見守っている。その中のカボチャは株の中ほどに雄花をいくつも高く咲かせ、伸びたつるには大きな雌花が続いて咲いていく。花は青い空に輝く太陽の光をいっぱい浴びて嬉しそうである。今朝も雌花の数を数えながら受粉作業をした。つるには明日も明後日も約束された小さな花芽があちこちに露にぬれて光っていた。明日も黄色の花が咲くだろう。楽しみだ。
  出水市 畠中大喜(73) 2010/7/6 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はフォトライブラリ

遠足のお弁当

2010-07-06 13:32:41 | はがき随筆
 私が子どものころ、遠足のお弁当といえば決まって巻き寿司だった。
 もう16年も前になるだろうか、遠足の時、必ず赤飯を持ってくる子がいた。赤飯が大好きだから遠足の時は必ず赤飯を炊いてくださるという。また、遠足の時は必ずサンドイッチという子もいた。わいわいがやがやお弁当をいただきながら、遠足のお弁当にはそれぞれの家族の思いがいっぱい詰まっているんだなと思った。青い海のような優しい心をもった子どもたちの笑顔をなつかしく思い出す。もう立派な大人になって、どんな
お弁当を作っているんだろう。
  出水市 山岡淳子(52) 2010/7/5毎日新聞鹿児島版掲載

病院のヒヨドリ

2010-07-05 17:24:08 | はがき随筆
 先ごろ手術のため鹿児島の大学病院に入院した。ベランダのある病室で、ガラス戸越しに外を見ていたら、ヒヨドリのメスがトカゲを咥えてやってきた。しばらく周囲を警戒した後、こちらと向こう側のビルの間のすき間に入っていった。
 窓のひさしのような出っ張りが密接しており、その下にすがあるらしく、ピーピーと元気な雛の鳴き声が聞こえた。
 手術後は病室が変わり、見られなくなってしまったが、私は術後3週間で退院、あのヒヨドリの雛たちも立派に成長して、巣立っていったに違いない。
  西之表市 武田静瞭(73) 2010/7/4 毎日新聞鹿児島版掲載

花嫁と父

2010-07-03 20:48:45 | はがき随筆
 娘と腕を組み、ステップを合わせ、ウエディングロードを歩く。父親の心を揺らす道だ。
 色黒の私が、純白のドレスをまとう色白の娘を引き立てたのか、式場が「きれい!」の声で沸く。花嫁と父は感謝の気持ちを腕で伝え合う。まぶたに幼い姿の娘が浮かぶ。浴槽でおぼれかけたり、韓国岳で転げ落ちそうになったこと。万里の長城で、へたり込んだ初めての海外旅行。母を助けて登った富士の山など、思い出は尽きない。
 腕を離す時がきた。13歳まで風呂を共にした愛娘の背中をそっと押し、笑顔で″六月の花嫁″を花婿に託した。
  出水市 清田文雄(71) 2010/7/3 毎日新聞鹿児島版掲載
写真はフォトライブラリより


3枚の書き物

2010-07-03 20:29:08 | はがき随筆
 本棚から会社時代の書き物が出てきた。営業社員の人柄、仕事ぶりを「色」「漢字」「その他」に例えた3枚の用紙。仲間を奇抜な表現で実に特徴をつかみ、的を得たものだと当時、感心したものだった。
 それは人柄を色の12色、漢字一文字で静、熱、努などで表現し極めつけは「その他」。動きの鈍い社員をかたつむり。講釈を並べる者を壊れた拡声器。積極性に欠ける土偶。そして切れ味鋭い包丁、弾丸、イチローなどと仕事ぶりを見事に例えた。
 え? 今の私ですか。色は黄。漢字は快。その他は真夏に咲く大輪のヒマワリ!かな。
  鹿児島市 鵜家育男(65)2010/7/2 毎日新聞鹿児島版掲載

活火山桜島

2010-07-01 20:33:10 | はがき随筆
 薩摩の赤富士……。紫原高台地より錦江湾の壮大な桜島。昭和47年秋、桜島噴火を目の当たりにした。静寂な夜に耳をつんざく爆発音。恐怖に心臓の鼓動も高鳴り、脚も震えた。空は真っ赤に染まり島全体が溶けるのではと不安だった。近所の人も裸足で戸外へ飛び出し興奮気味。大人も子供も顔が紅潮した。マグマの爆発。私は出産を控えていた。噴火も出産も自然現象。審美的で不思議。
 出産は潮の干満に繋がるものか……。私の原の中の児も元気旺盛で原を蹴飛ばしていた。万物は自然現象と友に生きている。その後、女児の誕生……。
   姶良市 堀美代子(65) 2010/7/1 毎日新聞鹿児島版掲載