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はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

赤い糸

2011-10-16 21:35:48 | はがき随筆
 私は、お父ちゃん(夫)に出会うまで40年かかった。泣いたり笑ったり、すべったり転んだりしながら、やっと本物の赤い糸を持ったお父ちゃんに出会った。お父ちゃんは私よりも15年も長く待っていてくれた。55歳のお父ちゃんは両親もなくし、相続問題などに傷つきながらも歯科医師としての仕事をしながら、私を待っていてくれた。
 一人娘が生まれて10年、15回目の結婚記念日の夜、お父ちゃんは脳出血で倒れ、重度の半身マヒとなった。私は、赤い糸を結び直し、ずっと待っていてくれたお父ちゃんに感謝し一日一日を共に寄り添い生きている。
  鹿児島市 萩原裕子 2011/10/14 毎日新聞鹿児島版掲載

募集人数1名

2011-10-16 21:29:41 | はがき随筆
 テレビで厳しい就職状況のニュースを見ていた。リクルートスーツの娘さんたちがいっぱい映っている。
 思わず「うちも募集を出したいな」と言うと、息子は不可解そうに私を見た。
 『募集人数1名。
 才少々、見目まあまあ、情けもほどほどある女性求む。恒久優遇す。委細面談! 当方草食系男子』
 こんな状況だ。1人くらい応募してこないかな。息子よ、早くお嫁さん連れておいでよ。じゃないと母さん本気でハローワークに張り紙をしに行くよ。
  出水市 清水昌子 2011/10/13 毎日新聞鹿児島版掲載

映画と思い出

2011-10-16 21:22:43 | はがき随筆
 20代のころ、一番の楽しみといえば映画を見て一日を過ごすことだった。西部劇が好きで映画館に通った。私が選ぶ傑作3本は、シェーン、駅馬車、荒野の決闘。アパッチに襲われた駅馬車に騎兵隊が駆け付ける場面には館内で拍手が起きた。少年のシェーンカムバックの叫び声に、すすり泣きが聞こえた。
 最近、映画やドラマを見ても感動しなくなったような……。涙も枯れたオヤジになっちまったのか。怖いですね-。悲しくなりますねー。それでは、また、ハガキ随筆でいつかお会いしましょうね。サイナラ! サイナラ! サイナラ!
  指宿市 有村好一 2011/10/12 毎日新聞鹿児島版掲載

恵みの雨

2011-10-10 22:33:55 | はがき随筆
 魚拓の取り方を聞かれた時、すぐ中学時代の田植えを思い出した。当時の学校には水田があり、季節になると全員で田植えをする。雨になると男子はにんまりした。ぬれたシャツは肌にピッタリ張り付く。女性徒たちのブラウスはシルクのように輝きまぶしかったものだ。
 「ぬれた紙や布は物に張り付きます。適度に湿らせた布や紙を、ヌルヌルをふき取った魚にピタリと貼り付け、その上から墨汁をつけたタンポてたたいてウロコやヒレの形を浮き彫りにしていきます。そうすると魚を墨で汚すことなくできます」まさに恵みの雨であった。
  出水市 中島征士 2011/10/10 毎日新聞鹿児島版掲載

歌で父をしのぶ

2011-10-10 22:26:47 | はがき随筆
 千昌夫さんの「津軽平野」と、今は亡き父とが重なり、聞くたび、泣けてきます。当時は、病弱な母と、祖母、5人の子どもの世帯でした。郵便局の窓口業務より農業がはるかに金になると自信の転換も、いつしか行き詰まり、やむなく出るはめに。学校から帰ると、すでに父の姿はなく、心にポカーンとした穴があいたよう。上京した父は、言葉のなまりで苦労したそうです。
 1年ぶりに夫を迎える母はやはり、そわそわしていました。「父ちゃんだよ!」。手を差し出す父に、幼い妹が恐れをなして、納戸の隅で泣きながら震えていたのを思い出します。
  指宿市 池元民子 2011/10/9 毎日新聞鹿児島版掲載

イケメンと遊ぼう

2011-10-08 17:42:01 | はがき随筆
 二十数年来の友だちの輝防が汗を拭き拭きやってきました。
 「介護疲れで、泣いとらせんな」
 阿久根大島が見える部屋で、「二人ともよか顔で安心した。でも55歳で転職した時は、みんな心配したんだよ」
 「ドジョウと一緒に泥舟に乗せられ、大泣きしたわ。そんな時、川内会のイケメン軍団が、金の櫂付きの象牙の舟に移してくれたのね。実家への直行便だった」
 「今年は『天城越え』を見たかなあ」「そうね、アキラ節やカウンターダンスもやろうね」
 踊りの練習に早速入ります。
  阿久根市 別枝由井 2011/10/8 毎日新聞鹿児島版掲載

親指も

2011-10-07 21:15:09 | はがき随筆
 「親指」とは、よく言ったものだ。
 最近、右手の親指を負傷し、外科に通うことになってしまった。包帯を巻かれた親指は、ハサミも使えず、卵を割ることもボタンをかけることも、ままならず。他の4本の指の助けを借りるものの容易でない。顔を洗うことすら、不自由である。
 いままで、この指の有り難さに気付くはずもなく、普通に楽々と暮らしていたことが、うそのようだ。
 親指を負傷して、その手助けを母親に委ねている。親も、親指も、本当に有り難いものである。
  肝付町 永瀬悦子 2011/10/7 毎日新聞鹿児島版掲載

「一挙両得」

2011-10-07 11:58:31 | 岩国エッセイサロンより
2011年10月 7日 (金)

   岩国市  会 員   安西詩代

 プロ野球が佳境に入ってきた。阪神ファンの夫は「なぜ、そこで打たないんだ」「バカだな、おまえは」「何をぐずぐずしているんだ」と大声でテレビに怒鳴る。近所の人には2人暮らしの我が家ゆえ、夫婦げんかとしか思えない。

今年は対処法を考えた。夫が文句を言い始めると一緒になって「そうよ、ダメな選手よね。何億ももらい過ぎよね」「こんないい球、打たないなんて」と夫の数倍の悪口を言うと「そりゃ、仕方ないよ。毎回打てることはないよ」と選手の肩を持つ。この作戦、功を奏したと同時に私のストレス発散にもなる。

 (2011.10.07 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩國エッセイサロンより転載

秋です

2011-10-06 19:22:24 | アカショウビンのつぶやき




夏の花はそろそろ終わりです。

7月初めから、何回も何回も蕾をつけては、咲き誇っていたフロックスも
次第に寂しくなりました。

数日前から、カマキリが一匹花の上でじっとしています。
獲物が捕れるのか、毎日同じ花から動く様子がありません。

カマキリは苦手なのですが、
このカマキリ君ちょっかいを出しても鎌を振り上げないんです。
こんなに闘争心のないカマキリも珍しい…。

昨日から桜島が活発になり、今日は朝から9回も噴き上げています。
2000㍍に上がった噴煙はまっすぐ鹿屋の上空へ。
明日は一面灰色の世界でしょう。

カマキリ君どうするかなあ。

千代美

2011-10-06 13:36:32 | はがき随筆
 寄る年波には勝てず、静かにその時を迎えようとしている風にさえ見える。おぼつかない足どりであるくが、その範囲は極く狭く、視力の衰えも目立つ。重湯状のペーストを口の前に運んだスプーンで与えるのだが、思うように飲み込んでくれない。そなん老猫千代美が犬舎に入って眠っている。遼太郎は番犬よろしくその入り口を守る。20年前、たった1回の出産を経験した千代美は不妊手術を受け、食べて野原を駆け回ることを楽しむ猫になった。しかし、1日の大半を寝て過ごす今、遼太郎を自分の息子のように思っているように見えてしまう。
  志布志市 若宮庸成  2011/10/6 毎日新聞鹿児島版掲載

笑っちゃう

2011-10-06 13:25:14 | はがき随筆
 出水平野を真っ二つに裂き、米ノ津川が八代海に注ぐ。川の両側に広がる稲田が、平野を薄黄色に染める。点在する濃い緑の木々が彩りを添える。四季の中で一番美しい。古里の自慢の風景だ。
 私の田は一枚もない。でも、日照りの具合を心配したり、台風などに一喜一憂する。そして、熟れていく稲を見ると、心がわくわくして足取りも軽やかになる。
 東光山から見下ろして、殿様のような気分で、稲の生育や取れ高に気をもむ。自分を私か笑う。還暦を過ぎても、その理由がわからない。
  出水市 道田道範 2011/10/5 毎日新聞鹿児島版掲載

ロイド君

2011-10-06 13:18:36 | はがき随筆
 夫婦2人の家に7月半ばから仲間が加わった。猫である。妻の友人宅で生まれた3カ月の子猫を譲り受けた。当初は一緒に生まれたオスとメスをもらった。ところが、初体験の飼い猫生活。そのうえ2匹そろっての好奇心旺盛の活動力にまいり1週間でメスは返してしまった。
 雄猫の名前はロイド。雌猫の名は貰う前からセルと決めており、それと対にと名付けた。三毛猫だが、白地に黒の模様が背と頭にありブチ猫のように見える。昼間は妻の遊び相手になっているようだが、私にとっては両手をついて玄関で送り迎えをしてくれる唯一の家人だ。
  鹿児島市 高橋誠 2011/10/4 毎日新聞鹿児島版掲載

九電報告書

2011-10-04 18:31:36 | ペン&ぺん
 九州電力の「やらせメール」問題。それを調査してきた第三者委員会の最終報告書が発表された9月30日。鹿児島支局のファクスは、報告書のコピーを次々と吐き出し続けた。
 最終報告書は、添付資料を含めてA4判約200ページ。それが、福岡社会部から順次、ファクスされた。一度には送れず、5分割されたが、その膨大な量に、圧倒された。
 報告書を読み始めた。多くは佐賀県の玄海原発に絡む記述で川内原発に関する部分は極めて少ない。
 鹿児島県議会で原子力発電本部副部長が「やらせメール」の存在を否定した虚偽答弁疑惑に関する部分は、1ページほどの記述だけ。しかも結論は「当委員会の調査結果からは、鹿児島県議会での答弁が虚偽答弁だったと認めるに足る根拠はない」というものだった。読んでいて、肩すかしされた印象を抱いた。
 県議会の金子万寿夫議長も「中間報告と最終報告で、ものの言い方が変わっており、ベールに包まれた感じ。すっきりしない」と語り釈然としない様子だったという。
 また、最終報告書は川内原発3号機増設に向けた第1次公開ヒアリングに関しても若干、記述している。このヒアリングで、九電側は傍聴人の参加を呼びかけ、意見陳述人を確保したが、陳述人は九電社員ではなく、地元住民。意見の内容も自分の体験や見解を踏まえて決めていたという。こう事実認定し、このヒアリンクでは、九電社員が賛成の立場から事前に質問を準備した「仕込み質問」はなかったという結論を導き出した。玄海原発関連の結論とは対照的だ。
 報告書で共感したのは「はじめに」の部分だ。「九州で圧倒的な企業規模を誇る公益企業としての信頼回復を切に願う」と記している。まさに、そう思う。消費者は九電以外から電気を買うことはできないのだから。
  鹿児島支局長 馬原浩 2011/10/3 毎日新聞


勉強会

2011-10-03 14:17:22 | アカショウビンのつぶやき
毎日ペンクラブ鹿児島の、大隅地区勉強会を開催します。
日時 10月16日日曜 正午から
場所 北田町この路
会費 昼食代のみ1000円

今回は、講師なし、会員同士での合評会です。
持ち寄った原稿は、ペンクラブの会報「マイペン」に掲載させていただきます。
会員以外の参加、大歓迎です。
参加ご希望の方は、大隅地区運営委員の竹之内さんまでご連絡ください。
電話 0994-32-2434です。

季節

2011-10-03 13:10:07 | はがき随筆


干ばつの日々を越え、山茶花の下で、きっちりつぼみを持ち上げた彼岸花だよりに明け暮れた今年の彼岸。
気温の下がった日からコスモスがつぼみをもって反応し始めた。
「どうして分かったの? 鋭い感覚ね」と
言いながら花色を茎から類推して心待ちにしている私。
 毎日、東風に噴煙で街は汚れてしまった。
あなたが花開く日まで大雨一過を願っている朝夕である。
今年も種をまいて芽が出て葉が出て、つぼみになる。
成長買い手をしっかり見守ってきた。
まさしく四季折々に感謝しながら。
次はマリーゴールドとコスモス、菊へ変わる楽しみ。
  鹿児島市 東郷久子 2011/10/3 毎日新聞鹿児島版掲載