はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ウイルスとの闘い

2020-06-23 10:52:22 | はがき随筆
 畑に緑色が一面に広がりつつある。新しい芋が順調に育っているとは感じている。
 昨年、基腐病というウイルス性の病気が流行し、甘藷農家は大打撃を受けた。芋が腐れて商品にならなかった。我が家も10月に収穫、貯蔵した藷はほとんどダメだった。この病気に効く薬がなく、土壌、苗など消毒の徹底しかない。正にコロナだと思ってしまう。先の見通しがつかず廃業や減反する農家が増え、我が家も4反減らした。
 築き上げた地域ブランドが消え去るのではないかと危惧している。今年は正念場。感染が広がらないことを願っている。
 宮崎県串間市 林和江(63) 2020/6/23 毎日新聞鹿児島版掲載
 

休刊日

2020-06-23 10:43:49 | はがき随筆
 今日は新聞の休刊日。読み手の勝手な言い分だと思うが、何とも寂しい朝になる。ましてや読者参加の「はがき随筆」大ファンの一人としては相当につまらない。働く人の休養以上に待ち遠しい。
 自粛、自粛の毎日が続き、心も体も限度と言っている。「今日は休刊日よ」と言うと怪訝な顔をする相棒。休肝日と言われたと呑み助の考えそうな事だ。「新聞の事ばい」と言われて急に安堵の顔。子供だ。
 最近チラシがとんと少ない。三蜜を避ける為か? なんだか心もとない。そろそろ日常に戻ってほしい。みな頑張っている。
 熊本県八代市 鍬本恵子(74) 2020/6/22 毎日新聞鹿児島版掲載

沖縄慰霊の日

2020-06-23 10:35:41 | はがき随筆
 6月23日、沖縄慰霊の日。思い起こせば私が初めて沖縄の地を踏んだのは本土返還の前年、早稲田の学生のときでした。赤線が存在し、車は右側通行、流通貨幣はドルの時代です。その沖縄で……。ディスコで踊っていた私の顔に突然浴びせられたビール。気色ばんだ私とMPの仲裁に入った店主の言葉は「ここは沖縄だから……」。横断歩道を渡っていた少女をはねた米兵がおとがめなしに本国に送還された話も聞かされました。
 <日米地位協定>。あれからどれほどの年月が流れたでしょう。沖縄は今日も叫び続けています。
 鹿児島県霧島市 久野茂樹(70) 2020/6/21 毎日新聞鹿児島版掲載

コロナウイルス

2020-06-20 20:04:18 | はがき随筆
 透き通るような青空にヒコーキ雲がくっきりと白い線を引く。どこに行くのだろう。
 下界は新型コロナウイルスが蔓延し「不要不急」の掛け声に人は惑い、うろたえ右往左往している。
 機内は機長さん、乗務員さん、それに数えるほどのお客さんだろうか。人はそれぞれの想いを白いマスクに秘めて黙して語らず。ああ、悲しいかな。
 機体は我が使命を銀翼にかけ、天空を突き進む。もの言わない機体と、牧水が詠んだ「白鳥はかなしからずや……」の白鳥が混然一体となって目に映る。
 鹿児島市 内山陽子(82) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載

八十の手習い

2020-06-20 19:50:29 | はがき随筆
「お久しぶり」「会いたかったわ」。3カ月ぶりの仲間の顔が生き生きと弾んでいる。
 25年続けた「はがき随筆」グループのお世話をKさんに託して引退したのが6年前。高齢だったし、ほっとしたのも事実。けれど何となく身辺が物足りない。この物足りなさは何だろう。そう「書くことを語り合う人が身近にいないからだ」と気付く。そんな時、市広報で「俳句教室」の案内を知り、一も二もなく飛び付いた。あれから3年、すっかりはまっている私。
 指導者がいる気楽さも存分に味わっている。
 宮崎市 松尾順子(88) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載


なんてこっちゃ

2020-06-20 19:43:42 | はがき随筆
 近ごろオンラインという言葉がにわかに氾濫するようになったが、その事に全く無関心だった私にはさっぱり分からない。折から10万円給付金の申請がオンラインでできるという。この際、良い勉強の機会だと思っておっかなびっくりマイポータルサイトを開いた。ところがいけません。マイナンバーカードの暗証番号をスコッと忘れていた。我ながら間抜けだなあ。結局郵送申請の方が簡単で6月の初めにはちゃんと振り込まれていた。皮肉な事に同じ日にアベノマスクがやっと届いた。そのどちらも使うべきか使わざるべきかハムレット的心境である。
 熊本市中央区 増永陽(89) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載

誕生

2020-06-20 19:35:24 | はがき随筆
 私は分娩台の上にいた。ベルトで両手両足を留められて。陣痛が強くなり、大波のように寄せて返す。拷問のよう。おなかの子よ早く出て来てえ……。
 いよいよとなった。分娩時に麻酔をかけると聞いていた。胎児を押し出すように、助産師が腹を押して加勢した。それからはもうろうとして覚えがない。
 赤子を始めて見たのは翌日だった。可愛いというより、何か不思議なものにみえた。人形を抱くようにその子を抱いた。子は乳首に舌を巻きつけて、初乳を飲もうとするけれど、うまくいかない。それでも5日を待たずに私達は親子になっていた。
 宮崎県延岡市 佐藤桂子(72) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載

復興の兆し

2020-06-20 19:28:07 | はがき随筆
 熊本地震は、我らに自然の恐ろしさを教えてくれた。それから4年、今、新型コロナウイルスの流行で世界中がゆれているが、阿蘇には、復興の気配が感じられる。豊肥線、国道57号、阿蘇大橋の建て替え、更には、二重の峠を貫通したトンネルで新しい道が完成予定である。また、熊本の至る所で復興の兆しを感じる。
 最近、地震や津波等の自然災害の恐ろしさと共に、そこから立ち上がる人間の底力を知る。現実は、厳しいことの連続であるが、力強い復興から多くのことを学び、我らに生きる勇気を与えてくれる。
 熊本県大津町 小堀徳広(72) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載

改革は起きる?

2020-06-20 19:19:26 | はがき随筆
 働き方改革がうたわれて、娘の職場でも改革が。木曜に加え、土曜も半ドンになった。娘の配偶者の休みは土曜日終日なので喜んだ。が、患者さんの一人は休みが土曜の午後のみらしく、そこの医院はお客様を失うこととなった。やむを得ない。
 さて、我が家の改革はどうか。夫と2人の生活も長い。夫は退職後、ご飯炊き、おみそ汁作りもできていた。なのに気がつけば台所仕事はほとんど私。昼食後、話を向ける。「お茶わん洗いでも……」に「俺がやるとお前のすることがなくなるではないか」と。体よく断られた。仕方ない。やるっきゃない。
 鹿児島県いちき串木野市 奥吉志代子(71) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載

三かき

2020-06-20 19:11:19 | はがき随筆
 老化防止のために、汗かき、物書き、恥かきの「三かき」が大事だという。
 散歩して汗をかく。四季折々の花々をめでながらの散歩は気分爽快である。そして「はがき随筆」を書いて恥をかく。また毎週1回、団地の仲間と「ヘボ碁」を打って頭をかく。つまり、何かに挑戦した結果、得られるだいごみである。
 世の中には使えば減るものが多いが、頭と筋力は使わなければ衰える。その対策は「今日用(教養)」と「今日行く(教育)」が大事。四季折々の花をめでながらの散歩と週1回の碁会への参加が欠かせない。
 宮崎市 高岡善徳(85) 2020/6/20 毎日新聞鹿児島版掲載

分散教育

2020-06-20 17:51:00 | はがき随筆
 コロナ一色で憂欝な毎日ですが懐かしい言葉に出会いました。分散という言葉です。国民学校4年生の時、学校に兵隊さんが来るのでこれからは分散教育になりますと言われて、集落ごとにお宮などに集まって授業を受けることになりました。学校が近かったので机は持ち出しましたが、黒板もなく先生も足りません。女学校を卒業したばかりの人が来ました。
 古い小さなお宮の境内での青空教室。どれ位の期間だったのか追憶の彼方ですが大木の木陰に机を並べての勉強はそれなりに新鮮でした。そのまま夏休みに入り終戦の日を迎えました。
 熊本市中央区 山口妙子(84) 2020/6/19 毎日新聞鹿児島版掲載

いいこと一つ

2020-06-18 11:51:31 | はがき随筆
 花も木も萌えいずる春なのにコロナウイルスで巣ごもりすることになり、いつもの調子が出ない。それでも一つだけいいことがあった。築山の草をさっぱりと除草したこと。毎年ドクダミの深い根からの除草に追われる春、取り終えないうちに夏になり、草取りを中途半端に終えていたのだが、今年は違う。暇なのでひたすら草取りをするしかなかったのだ。きれいになると何度も眺めて自己満足に浸る。さっぱりとなった築山を見る達成感がいい。ミョウガの芽も出て、黄のリボンのような花を見つける日が楽しみ。コロナ禍の終息が待たれる。
 鹿児島県霧島市 口町円子(80) 2020/6/18 毎日新聞鹿児島版掲載

懐かしい題名

2020-06-17 13:00:44 | はがき随筆
 テレビの画面に青々とした麦畑。そばを自転車で走りながら火野正平が言った。「麦がそよいでる、ええ景色やなあ。『ライ麦畑でつかまえて』やね」と。
 わあ、懐かしい題名。息子が大学生だった頃「先生に薦められたから」と買った本である。彼の本たての隅にずっと並んでいた。40年近く過ぎたいま、内容も品の行方も忘れてしまった。
 秋田に単身赴任中の当の息子は、コロナ騒動で横浜の家族の元へ帰れない。「本を読む時間が増えた」と言う。「『ライ麦畑でつかまえて』でも読んだら」と言うと、゜「なに、それ?」だって。
 宮崎県延岡市 島田千恵子(76) 2020/6/16 毎日新聞鹿児島版掲載

はがき随筆5月度

2020-06-17 12:28:39 | はがき随筆
 月間賞に廣野さん(熊本)
佳作は逢坂さん(宮崎)、田中さん(鹿児島)、竹本さん(熊本)

はがき随筆の5月度受賞者は次の皆さんでした。(敬称略)

【月間賞】13日「手仕事」廣野香代子=熊本県八代市
【佳作】11日「生きることの尊さ」逢坂鶴子=宮崎県延岡市
▽18日「ヒゲダンス」田中健一郎=鹿児島市
▽16日「家内へ」竹本伸二=熊本市東区

「手仕事」は、手作りマスクにまつわる、姉妹間の優しい思いやりが内容になっています。5月の投稿には、新型コロナウイルスに関するものが非常に多く、またそのほとんどがマスクに関するものでした。興味深いのは、いわゆるアベノマスクへの風刺などはなく、完全に無視されていて、手作りマスクを通じて、人と人とのつながりや、手作業の楽しさなど、皆さんの耐えて生きる賢さが現れていることでした。「手仕事」を取り上げたのは、手作りマスクの詳細な描写、それを作ってくれる姉の作業の様子やその心境、妹への思いやりなどが、美しく描かれているためで、コロナ禍の中の涼風を感じました。
 「生きることの尊さ」は、夫君と死別された後の、子息との生活の困難さと、現在のコロナ禍の苦痛とを比べてみたという内容です。今考えるとその頃は生きるのに精いっぱいではあったが、悲しみは生きることの尊さを教えてくれた。さて現在は、何を見つければよいのか、私たちに付きつけられた難しい問題です。
 「ヒゲダンス」は、急逝された志村けんさんに関する挿話です。彼が好きで、会社の忘年会でヒゲダンスを必死に踊ったら、大喝采であった。機会があればまたやってみたい。私は彼のテレビも見たことがありませんが、一芸能人の死がこれほどの影響を与えたことには驚きました。政治家の棒読みの答弁などよりもはるかに切実に、コロナの恐ろしさを私たちに教えてくれました。思いやりのある追悼文として読みました。
 「家内へ」は、急逝された奥様への哀悼と感謝の言葉です。全くの他人同士が60余年を共に暮らしたこと、それに感謝の言葉ひとつかけなかったこと、すべてが後悔してももう遅い。せめて遺影に「ありがとう」と声をかけたら「幸せでしたよ」とほほ笑んでいるように見えた。私たちの人生はみな似たようなものかもしれませんが、それを淡々と書かれたことに、静かに落ち着いた気分が流れていることを感じました。
 鹿児島大学名誉教授石田忠彦

◆ 係から
 廣野さんの月間賞を巡るインタビューが28日(日)午前7時10分からのМRT宮崎放送ラジオ番組「潤子の素敵に朝!」で放送予定です。「宮崎ほっとタイム」(水曜午前9時15分から5分間)の中でも掲載作が朗読されることがあります。
 また、МBC南日本放送ラジオでも、掲載作が27日(土)午前9時半すぎから朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。


呼吸筋の運動

2020-06-17 12:18:47 | はがき随筆
 体の老化を遅らせるには体を動かせば効果があるのは理解している。でも、外出して手を振りながら足を交わしていると腰が痛く歩くのがつらい。
 あるパンフレットに呼吸筋を鍛えるタオル体操という見出しがあった。肩幅に広げた両手でタオルを握り、手を上に伸ばして、息を吐きながら上体を左側に傾け、息を吸いながら上体を起こす。右側も同じ動作をして、これを2分間繰り返すと、呼吸筋が活発化するそうだ。
 実行してみると肩や腰が痛い。そんな凝りや痛みを我慢して続けていると、痛みが和らいでいる。
 熊本市東区 竹本伸二(91) 2020/6/16 毎日新聞鹿児島版掲載