月間賞に廣野さん(熊本)
佳作は逢坂さん(宮崎)、田中さん(鹿児島)、竹本さん(熊本)
はがき随筆の5月度受賞者は次の皆さんでした。(敬称略)
【月間賞】13日「手仕事」廣野香代子=熊本県八代市
【佳作】11日「生きることの尊さ」逢坂鶴子=宮崎県延岡市
▽18日「ヒゲダンス」田中健一郎=鹿児島市
▽16日「家内へ」竹本伸二=熊本市東区
「手仕事」は、手作りマスクにまつわる、姉妹間の優しい思いやりが内容になっています。5月の投稿には、新型コロナウイルスに関するものが非常に多く、またそのほとんどがマスクに関するものでした。興味深いのは、いわゆるアベノマスクへの風刺などはなく、完全に無視されていて、手作りマスクを通じて、人と人とのつながりや、手作業の楽しさなど、皆さんの耐えて生きる賢さが現れていることでした。「手仕事」を取り上げたのは、手作りマスクの詳細な描写、それを作ってくれる姉の作業の様子やその心境、妹への思いやりなどが、美しく描かれているためで、コロナ禍の中の涼風を感じました。
「生きることの尊さ」は、夫君と死別された後の、子息との生活の困難さと、現在のコロナ禍の苦痛とを比べてみたという内容です。今考えるとその頃は生きるのに精いっぱいではあったが、悲しみは生きることの尊さを教えてくれた。さて現在は、何を見つければよいのか、私たちに付きつけられた難しい問題です。
「ヒゲダンス」は、急逝された志村けんさんに関する挿話です。彼が好きで、会社の忘年会でヒゲダンスを必死に踊ったら、大喝采であった。機会があればまたやってみたい。私は彼のテレビも見たことがありませんが、一芸能人の死がこれほどの影響を与えたことには驚きました。政治家の棒読みの答弁などよりもはるかに切実に、コロナの恐ろしさを私たちに教えてくれました。思いやりのある追悼文として読みました。
「家内へ」は、急逝された奥様への哀悼と感謝の言葉です。全くの他人同士が60余年を共に暮らしたこと、それに感謝の言葉ひとつかけなかったこと、すべてが後悔してももう遅い。せめて遺影に「ありがとう」と声をかけたら「幸せでしたよ」とほほ笑んでいるように見えた。私たちの人生はみな似たようなものかもしれませんが、それを淡々と書かれたことに、静かに落ち着いた気分が流れていることを感じました。
鹿児島大学名誉教授石田忠彦
◆ 係から
廣野さんの月間賞を巡るインタビューが28日(日)午前7時10分からのМRT宮崎放送ラジオ番組「潤子の素敵に朝!」で放送予定です。「宮崎ほっとタイム」(水曜午前9時15分から5分間)の中でも掲載作が朗読されることがあります。
また、МBC南日本放送ラジオでも、掲載作が27日(土)午前9時半すぎから朗読されます。「二見いすずの土曜の朝は」のコーナー「朝のとっておき」です。