時遊人~La liberte de l'esprit~

優游涵泳 不羈奔放 by椋柊

あきない世傳金と銀<特別巻/上> 契り橋

2023-09-01 | 読書
シリーズを彩った
様々な登場人物たちのうち
四人を各編の主役に据えた短編集
五鈴屋を出奔した
五代目店主・惣次が
如何にして
井筒屋三代目保晴となったのかを描いた「風を抱く」
生真面目な佐助の
恋の今昔に纏わる「はた結び」
女衆奉公から幸に望まれ
江戸店で小頭役となったお竹が
老いを自覚し
どう生きるか悩む「百代の過客」
そして
多くの苦難にぶつかる度
己の知恵と周りの教えに助けられ
女衆(おなごし)から御寮さん
そして女主人へと登りつめてった幸に対する
賢輔の長きに亘る秘めた想いの行方を描く「契り橋」
商い一筋
ひたむきに懸命に生きてきた人々の
切なくとも幸せに至る物語の開幕



『大海篇』
完結した
「あきない世傳金と銀」
満足のいく
完結ではありましたが
今回
特別巻が
しかも上下巻
2巻構成で出版されました
何と言う幸せ

「風を抱く」
今回
五鈴屋五代目徳兵衛こと惣次が
両替商井筒屋三代目店主・保晴になる経過が
明らかにされました
ぞっこんだった幸を残し
江戸に向かった総次は
江戸で商いに精進する幸を
陰ながら
時に
表だって見守りつつ
義理父となった先代保晴と
雪乃との親子&夫婦暮らしは
決して長くないけれど
確かに幸せだったようです

「はた結び」
大阪での奉公時代
佐助と心を通わせていた
おさよの死を知った佐助の落胆
最愛の女性の妹・ちかとの
運命的な出会いからの…
実は
五鈴屋のメンバーは
佐助とおさよのこと
知ってたみたいで
そこから
佐助とちかの
両想いを
じれったい思いをしながら
見守る五鈴屋メンバー
言うべきことを
キチンと伝える幸
も~なんていい人達

「百代の過客」
お竹さんが
自身の老いを自覚し
暇乞いを考えるも
最終的に
江戸で
五鈴屋の現役を貫こうと決意する
心の揺らぎが
丁寧に語られていました
大阪に戻ることなく
生涯(江戸)ここで!
と決めたのには
奉公人・大七が
五鈴屋を退く経緯が関係していました
医師・柳井道善のもと
医術の道を進むはずだった大七が
道善な亡くなり
五鈴屋で奉公することになりました
そして
近い将来
江戸店を担うであろう
商人として成長したのに
幸は
再び
医術の道へもどす事を決意します
本人の望む道があり、その道で生かすことの出来る才もある
むざむざと潰してはならないのです
ひとの一生には限りがあります
大七にとって大事な時を
無駄に過ごさせたくはありません
 … (第三章『百代の過客』219頁13行目以降一部抜粋)
この時代には
考えられないことです
この一連の出来事を通し
お竹もまた
己に出来ること、成すべきことをしたいたい … (第三章『百代の過客』223頁6行目以降参照)
と江戸に留まることを
幸に伝えます
涙なしでは
読めませんでした

そしてそして
「契り橋」
賢輔の初恋は
賢輔が7才の時
勿論相手は幸(当時14才)
己が
近い将来
大阪本店
五鈴屋九代目当主として
店を守っていかなければと
わかっちゃいるが
そうなれば
幸と離れ離れになる
生涯
幸の傍らで
支えた行きたいと言う気持ちもある
今回
不幸中の幸いか
賢輔が怪我をしたことで
お互いの思いを
伝え合うことが出来ました
とは言え
大阪の本店当主となる賢輔と
江戸支店を守る幸は
どうしたって
離れ離れになってしまう訳ですよ

菊栄さま
私の口からお願いすることと違いますやろが
ふたりを何とか…何とか…。
口にせんでも、皆、前々から賢輔どんの想いに
気ぃついてましたやろ
今回のことで、幸の気持ちもようわかりました
誰もが、佐助どんと同じように思うてますのや
 … (第四章『契り橋』289頁5行目以降参照) 

大阪は無論の事
江戸でも女主人と手代が正式に添うのは前代未聞
それでも
容易に変えることはできないけれど
変えなければならない時がくる
体面よりも心の方を出来る限り大切に
と言い放った
菊栄の言葉に
希望を繋ぎたいと思うのです

どんな形であれ
周囲の人たちに
祝福されて
幸と賢輔が
幸せになって欲しい
最後は
大ハッピーエンドで
終わって欲しいと思います

下巻
これが
本当にほんとの
最後となる(ハズ)
読むのが楽しみです

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