昨秋、ノーベル賞に決まって以来、日本出版界はイシグロ特需が少しはあったのでしょうか。
主な小説はハヤカワ文庫で読めるし、文芸誌もこぞって特集を組んでいた。
これはその一冊。年末に読了。イシグロ作品の表現方法など、いろいろと参考になった。
日本の作家と違うのは作品ごとにテーマがうんと違うこと、長編がほとんど、数年に一度の発表と寡作であることなどかな。
英語で書く強みは、とりあえず多くの読者を得られること。で、ここからは私が思ったことですが、翻訳もとても読みやすいことから振り返って、英語もきっと母国語でない人にも読みやすい、わかりやすい表現ではないだろうかと。
今はほとんど日本語が話せない、というか、五歳で止まっている日本語の語彙力と、ご本人がどこかで言っていたけど、どこかよそ者であるという感覚が作り出した文体、表現ではないだろうか。
難しい表現をするから深いことが言えるのではなく、難しいことをやさしく、やさしい言葉で深く表現する。これは文学の要諦であります。
イシグロを読んでしまうと、巷にあふれるハウツー本やその他、お金と時間を使って読む気がしなくなった。