ブログ

 

「切羽へ」 井上荒野

2019-05-18 | 読書

井上荒野の直木賞受賞作。

大変面白く読みました。

九州のどこかの離島、セイは父親の亡きあと島に戻って小学校の養護教員をしている。、島出身の夫陽介は画家。小学校には本土から愛人が通ってくる、奔放な月江先生の他に、石和聡という音楽専任の若い男性教師がやってくる。

石和は誰とも親しくするわけでもない謎の男。しかし、セイはそのたたずまいが気になってしまう。

切羽きりばとはトンネルを掘る時の一番先の部分、掘り続けて行けば、やがて切羽はなくなる、そのぎりぎりの場所。

好きになった場面とか、愛の言葉の描写はない。ただ淡々と普通の、その場に応じたやり取りがあるだけ。それでも、セイが石和に惹かれる心の動きはまぎれようもないと読者にはわかる。夫陽介にもわかる。三者三様、言葉には出さない。

月江の愛人は島に逗留し、やがて本土から妻が乗り込んできて港で一悶着あるが、石和が割って入る。やがて、月江は石和と結婚すると公言するが、石和と愛人の大げんかの後、結局は愛人の方を選ぶ。石和は学校へ来なくなった。

島の老女がなくなり、部屋の片づけに石和は来ていた。セイはそのことを予感していて、予感していた自分に驚くこともない。そして、自分の父親が仕事をしていた病院の跡へ石和を誘い、ベランダから山の中腹のトンネルを見る。セイの母親がそのトンネルの一番奥で十字架を拾ったことを話した後、石和はただ一言「さよなら」とだけ言う。

毎日の人の生活も、こんな風で、決め台詞に充ち満ちているわけではない。描写しないことでより深く描写する。夫陽介も妻の心の動きがよく分かっている。嫉妬は言葉にも態度にも出ないが、ふとした描写に読者は夫の焦りを感じることができる。

石和は学校を、島を去った。石和の存在は、周りの人間の在り方もあぶり出し、変えていく。セイは妊娠したところで小説は終わる。

人が人を思う、人を好きになるのはいろいろなパターンがあるけれど、口に出さず、態度に出さず、周りの誰をも不幸にせず、愛が始まり、やがて終わる。夕闇の中で、無言で見つめ合うその一瞬のために、さよならを言うためにこの物語がある。さよならを言うことで、初めて確認している間柄。

その目線やたったの一言が、とてもエロティック。お勧めです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

5/9 プラハ市内の見学

2019-05-18 | 中欧音楽の旅

8:00ホテル発、すぐにプラハ城に着いて、ガイドさんに連れられて見学です。

プラハ城入り口で。後ろは聖ビート大聖堂。

城と宗教施設が一体化した大きな王宮。

旧王宮とコールの噴水。噴水は1686年製作。

寒いです。着膨れてます。気温は9度くらい。

聖ビート教会。

ステンドグラスいろいろ。こちらミュシャの原画で企業がスポンサーになって製作。

黄金の小路。昔の金細工職人の小さな家が並ぶ。

水色の建物が、1916年から1年間、カフカが「変身」を書いた仕事場。

 近寄ってみましょう。

表札あり。

ショーウィンドウ。

店内、書籍と絵ハガキなど。右奥がカウンター。若い女性が店番していました。

棚の絵ハガキ、二枚買いました。感激。

カフカの「変身」です。この歳になって「変身」を書いたその場所にいる私。

長生きはするものです。

他の建物も土産物屋などに。

昔の暮らしを再現したコーナーもあります。

高台にあり、明るいです。

城を出て、旧市街を見ながら降りて行きます。

見晴らしのいい場所へ来ました。

ブドウ畑とプラハ旧市街。

ブドウは庭木的な飾りかなと思いました。

白いバラと旧市街。


旧市街へと歩いて行きます。

ムクノキ。日本のより葉が長い。

ライラックはこれから。

コデマリ。日本のより花がまばらにつく。

キリ。プラハの遅い春は春の花が一度に咲く感じ。

続いてヴルタヴア川モルダウ川にかかるカレル橋へ。

カレル四世の命で、60年の歳月をかけて作られたもの。完成は15世紀初め。

両脇に聖人の像が並ぶ。

マロニエはそろそろ終わり。

ヴルタヴア川。

一番人気は聖ヤン・ネポモツキー。王妃の懺悔を知りたい王に頑として断った聖職者、怒った王の命で橋から落とされます。

落とされた場所にプレートが。

今通って来た王宮。

こちらフランシスコザビエル。

角が日本人だそうで。仁王像みたいです。

立派な橋です。石は長持ちですね。

スマホで撮った写真。クリックで拡大。

旧市街広場。

カルヴィンに先駆けて宗教改革を唱え、火あぶりにされたフスの像。

旧市庁舎の天文時計。定時に人形が現れます。

上が天動説に基づくプラネタリュウム、下は農作業の風景と365日の日付が刻まれているそうです。

広場を抜けてレストランへ。

肉にソース、蒸しパンみたいな付け合わせ。

シンプルで素材の味がよくよくわかる一品。


午後からドイツのドレスデンへ行きます。151キロの距離だそうです。

バスの中から。後ろの木は枝垂れ白樺。よく見ました。

国境超えてドレスデンが近くなってきました。

一面の菜の花。

さてドレスデンは7年ぶり。どんな景色が待っていることでしょう。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

書評

にほんブログ村 本ブログ 書評・レビューへ
にほんブログ村

手織り

にほんブログ村 ハンドメイドブログ 手織り・機織りへ
にほんブログ村

日本ブログ村・ランキング

PVアクセスランキング にほんブログ村