特定の信仰心があるわけでもないのに、「大峰奥駈を踏破したら、四国八十八を踏破しよう」という構想を60代半ばに抱き、「いざや!」とばかり、無職となった2019年5月GW明け、吉野から熊野の100kに渡る大峰奥駈を七泊分の食料をつめ込んだ20kgばかりのザックを「ヨッコラショ」と出かけたものの二泊したばかりで道失いと悪天のため挫折。
「荷物が重すぎてこの年でのクサリ場は危険だ」と反省し、コースを二分し二回に分けて再チャレンジを決意したというのに、2023年現在実行に移されていない。もうあれから4年も経ってしまった。
昨年、高野山から熊野大社までの「小辺路」を踏破したが、心のどこかに「もう大峰奥駈は無理だから、小辺路踏破による熊野詣でがまんするか」という弱音が働いていたのかもしれない。
だが、本日「日本百名山MYSONGS」で大峰山に辿り着いて、あらためて深田さんを読み、オイラの百名山登頂記を読み返していたら、これまで歩いてきた山岳エリアの中で大峰縦走路だけが醸し出す「魑魅魍魎」的「森羅万象」的雰囲気がここにきて心にフツフツとよみがえり、「あの道に戻らないと何か失ったまま人生を終える・・」というへんな気持ちになってしまった。なにものかが、オイラを引き寄せているともいえる。(蔵王大権現さまか)
4年前七泊八日で計画したコースを二分し、各五泊六日程度のSlow&Light登山に計画を組みなおし、出かけるか、秋以降の渇水期は水が枯れ気味なので今年と来年の新緑のころ。ボチボチしていると後がなくなるぞ。
日本百名山 MY SONGS 91 大峰山(おおみねさん・1915米)ka
【深田久弥・日本百名山から】
「・・・大峰山脈縦走は、南の熊野から出発して北の吉野で終わるのを、順峰といった。役行者が初めて開いた道である。現在ではむしろ北から南への縦走が多く行われているが、これは逆峰と呼ばれている。その縦走路七十五靡(なびき)と称して、七十五カ所の行場があって、それぞれ名前がつけられ、伝説がある。順峰で行けば、第一が熊野本宮の証誠殿で、第七十五が柳の宿、これは六田の河原が結願所となっている。この七十五靡の完全縦走は、現在では修験者も登山者もほとんど試みるものがない。ことにその南半は忘れれれた山となっている。」
*七十五靡の修験道は奥駈(おくがけ)と称され、深田さんが北部縦走したころは、ひどいヤブでに覆われていたため、上記のような表現となったのだろうが、現在は十津川村や地元山岳会の手で整備され復活している。
奥駈の忘れられたる山道は復活せしと九山に告げたき
【深田日本百名山登頂の思い出】
和歌山勤務時代の1988から1989年の間に、スバルジャステイで長い林道をつたい、行者還りトンネル西口というスペースに駐車し、弥山(みせん・1895m)~最高峰八経ヶ岳(1915m)~釈迦ヶ岳(1799m)を往復している。記憶に乏しいが、今地図を見ると往路だけで7~8時間はかかりそうだから、弥山あたりにテン泊して往復してきたのだろう。釈迦ヶ岳の釈迦如来立像をいつまでも覚えているが、季節はいつだったか、オオヤマレンゲの記憶はない。
今でも日本で唯一女人禁制の山上ヶ岳(1719m)に登ったのは、別の機会だったか。当時の山と高原地図を開いたら、登山口となっている洞川(どろかわ)集落から山上川を少し遡った母公堂あたりにテント場のマークがあり鉛筆で囲っているので、そこにテントを張って山上ヶ岳と稲村ヶ岳(1726m)を周回してきたのだろう。山上ヶ岳下山中に登ってきた白装束のこどもたちに「よーまいり!」(よくお詣りしてきましたの意か)と大きな清らかな声であいさつされ、何と返事をすればいいか戸惑ったことを、今でも覚えている。
あの時から、30年以上の年月が経ち、こころに温めてきた「大峰奥駈道・おおみねおくがけみち」を踏破しようと、沖縄から帰った2019年5月の連休明けに、7泊8分の食料をつめ込んだザックを担いで吉野から歩き始めたが、縦走3日目、山上ヶ岳を下った小笹の宿のテン場から先の阿弥陀が森付近で、オイラは倒木地帯に踏み込んで道を失い、恐れをなして引き返し洞川に下って、翌日天川登山口から弥山に向かった。奥駈道の一部をワープして、弥山からせめて北部だけでも歩こうと試みたが、あいにく悪天予報が続いたので、弥山を登っただけでむなしく帰途に就いた。
クサリ場もある峻厳な奥駈道にはなにかの神力で跳ね返された思いだが、荷の軽量化をはかり、北部と南部を分割した計画で、何としても本宮の熊野大社までは辿り着きたいと思っている。体力もつけないといけない。はねつけられても、大峰山にはなにか特別の魅力がある。それは、原生の森に覆われた山岳の森羅万象と長い時間引き継がれれてきた人びとの祈りが融合している特別の場所だからかもしれない。
50年間トボトボと山を歩き続けてきた者の「集大成」として、またこの地に向かいたい。
山上ヶ岳から大峰山北部の山を望む(2019)
詣ろうか前鬼(前期)と後鬼(後期)従えし行者の峰をふたたびみたび