すっかりと暮れた新年18時すぎ、東の空のおおむね50度上空に10.1才のお月様が輝いている。
ベランダのフェンスに肘をつけ、手持ちで撮ってみる。3日前、「月面X」を撮った時は三脚に固定したが、p950のお月様モードはシャツタースピードを1/500sに自動設定してくれたので、割と鮮明に月のクレーターや「海」と名付けられた暗い平原をとらえることが出来た。
月には餅をついているウサギさんが住んでいるとの中国の故事にならって、日本の童謡や童話にも「月とウサギ」に関するものが多いのだろう。
見えている「静かの海」はお顔、「静かの海」から伸びたお耳にみえるのは「豊の海」、「神酒の海」と名付けられたあたりだろう。「静かの海」の下に大きく広がる「雨の海」はウサギさんの胴体ということか。望遠鏡のない時代によくも想像をたくましくできたものだと、あらためて古代のヒトビトの視力と想像力に感心せざるを得ない。
今年はウサギ年なので、オイラもそうしたファンタジーの世界に与したい。
3日前の「月面X」はもう拝めない。「天体観測手帳」によると、2023年は日本では「月面X」は見られないとのこと。・・・・・3日前は貴重な日だったんだ。
日本百名山 MY SONG 59 乗鞍岳(のりくらだけ・3026米)
【深田久弥・日本百名山から】
「穂高岳信者は闘争的で、現実的で、ドライなのに引きかえ、乗鞍信者は平和的で浪漫的で、ウエットである。」
「乗鞍は登るというより、住むと言った方が似つかわしい山である。」
「位ヶ原まで登って、初めて真正面に、遮るもののない乗鞍岳それ自身に接する。ここからの眺めを、私は日本で最もすぐれた山岳風景の一つに数えている。まずその姿がいい。雄大で、しかも単調ではない。ゆったりと三つの頭を並べたその左側が主峰である。その主峰の右肩の巨大な岩が、間延びを引き緊めるアクセサリーになっている。それから前景の豊かな拡がりがいい。胸の透くように伸びてコセコセしたところがない。」
深田氏は乗鞍信者 縹緲の位ヶ原に今も住まふと
【深田日本百名山登頂の思い出・再掲】
乗鞍岳という山は存在しないのであって、主峰剣が峰が2500mを超える山を10座以上も従えた巨大な城塞のような独立した山塊が乗鞍岳と呼ばれている。
どこから眺めても、乗鞍岳の山容は素晴らしいのだと思うが、長野側の乗鞍高原から仰いだ姿には思わず息を飲んでしまい、しばしその場所から離れられなかった。あれは、いつごろだったろう。登山ではない。レンゲツツジが真っ赤に燃えて、シラカバの若葉が美しい季節、乗鞍高原で開催された高原を数回周遊するトレラン風のウルトラマラソンだったか。エイドの食べ物が超美味しかったグルメ大会、何と言ったっけ?
そのイベントとどちらが早かったか、よく覚えていないが、2003年の9月のサイクリングでの山旅でオイラは乗鞍岳主峰に初めて登った。
御嶽山を登った次の日、開田高原のキャンプ地をオリーブ号でスタートし、標高1600mの野麦峠をほぼ漕いで登り、峠を越えて長野側に下り、乗鞍高原に到る長いスーパー林道を登り返し、まる1日かけて乗鞍高原一ノ瀬のキャンプ場に到着した。元気だったな。
翌日は、峠を越えて白骨温泉の真っ白な露天風呂を往復し、その翌日乗鞍スカイラインをオリーブ号でヨッチラコッチラと肩の小屋下の登山口まで登った。そこにオリーブ号を留めてから、剣ヶ峰を往復した。下りてから畳平で少し休憩した後、岐阜県側の平湯温泉まで一気にスカイラインを下ったが、気持ちいいどころではなく、折からの冷たい雨に打たれた。カッパの中まで雨がしみ込んできて、平湯に着いた頃にはガチガチに冷え切っていた。平湯の露天に長く浸かって天を仰いだことは昨日のように覚えている。
2019年の同じく9月、オイラは富士山~御嶽山~乗鞍岳と3000mの活火山を旅したが、平湯温泉から乗鞍岳に直登する古い道が整備されていることを知って1日かけてゆっくり登って肩の小屋に泊まった。翌日、ご来光を山頂で迎えようと朝飯前に剣が峰を往復してから、乗鞍高原に下山したが、今度はスカイラインを縫うように残っている古い登山道を下った。
乗鞍高原にはそのほかに、厳冬期のスノーシューでのトレラン大会や木曽町1周グレートトラバースの翌日にレンタカーでわざわざ訪れているが、高原からあの秀麗な姿をもう1度眺めたいという心理も働いていたのだろう。
深田さんは、当時の登山者には闘争的、現実的でドライな槍・穂信者と平和的、ロマン的でウエットな乗鞍信者を分けて論じていたが、オイラは間違いなく乗鞍信者の方であり、スカイラインができて大衆化したことを深田さんは嘆いていたが、マイカー乗り入れ禁止のせいで今もスカイラインは比較的静かであり、乗鞍信者の通った古道はいまも静寂そのものである。
御嶽山から眺めた乗鞍と右奥の槍・穂(スケッチ編集)
乗鞍の仙人となり暮れるまで山を眺めて呆けるのもあり
2021.9 乗鞍大権現から剣ヶ峰方面を望む