里山悠々録

里山の家と暮らし、田んぼや畑、そして水墨画のことなどを記録していきます

水墨画「そら豆と絹さや」

2024年06月16日 | 水墨画:菜果
本画仙 色紙     


我が家で5月から6月にかけ楽しめる豆類と言えばソラマメとサヤエンドウ。
しかし、ともに同じ食卓に上る期間は長いわけではありません。5月末から半月くらいのものでしょう。
穫ったばかりのソラマメとサヤエンドウを並べて描いてみました。
ところで、記事では作物名を多くはカタカナ表記にしています。
水墨画の題名は様々。普通に見られる表記をメインにしていますが、その時の気分もあります。
ソラマメは漢字なら小生は蚕豆が一番馴染みます。しかし、最近は空豆が一般的らしい。
確かに蚕豆は莢の形が蚕の繭に似るところから付けられた当て字です。
一方、空豆は莢が空を向いて着くからと言うのですが、これは多分新しい当て字でしょう。
着莢したばかりの時は上の方を向いてはいますが、空とつなげるのはしっくりしません。
それなら「そら豆」の方が良さそうな気がします。
サヤエンドウは莢豌豆で異論はないでしょう。そもそもエンドウは実エンドウと莢エンドウに大別されます。
莢エンドウも大莢エンドウと絹莢エンドウがあり、味、香りでは断然絹莢エンドウ。
流通しているのも殆ど絹莢エンドウで、通称「絹さや」で通っています。よって今回は「絹さや」にしてみました。
当地で我々世代から上は専ら三度豆ですが、これではマニアックすぎます。
エンドウにはもう一つ比較的新しいスナップエンドウがあります。
当初、サカタのタネが豆を大きくしてサヤごと食べるスナックエンドウとして発表したのが始まりです。
もともと品種名としてのスナックエンドウだったのですが、普及の兆しを察知した農水省が放置は出来ないと感じたか一般名としてスナップエンドウと定めたのでした。
初めのうちはスナックエンドウしか通用しませんでしたが、次第に慣れてスナップエンドウが一般化、スナックエンドウはスナップエンドウの一品種となりました。




水墨画「さやえんどう」

2024年06月02日 | 水墨画:菜果
本画仙 色紙

サヤエンドウは少々思い入れのある野菜で、5月から6月にかけ心ゆくまで味わうことが大きな楽しみです。
水墨画でも何度か描いています。水墨画の題材になる野菜は多いもののサヤエンドウを取り上げる方は稀でしょう。
サヤエンドウの実は大概の方が知っていると思います。
しかし、花や莢がどのように着いているのか知る方は少ないかもしれません。
おそらく実際に作っていなければ見ることも難しいのではないでしょうか。
サヤエンドウの全体の姿は実に複雑です。
葉には茎に付く大きな葉とその葉の裏から伸びた蔓に付く対の小さな6枚の豆葉があります。
その豆葉の先には巻きひげが伸び、これを支柱に絡めながら生長し昇っていきます。
花は大きな葉の付け根から花梗が長く伸び2花着きます。そしてこれが莢に生長します。
花には赤花と白花があり、我が家のは赤花です。
全体像を描くのは至難ながら、初めての掛軸作品はサヤエンドウと決めていました。
実は小生もじっくりとサヤエンドウの全体像を観察したのはこの時が初めてです。
ちょうど季節なので、虫干しを兼ね床の間に掛けてみました。
作品名は「豌豆」。


もう一昔ほどにもなります。稚拙さは拭えませんが再掲してみました。




水墨画「筍と椎茸」

2024年05月19日 | 水墨画:菜果
本画仙 色紙
 

5月には孟宗竹の林からタケノコが採れます。 
今年は例年より1週間ほど早く、いわゆる表年のようでよく採れました。
ピークは4月末から5月上旬でした。まだ出てはいますが味が落ちるのでもう採ってはいません。
竹からはすべからくタケノコが出ます。しかし、単にタケノコと言えば大概孟宗竹のタケノコを指しています。
一方、近くでは原木シイタケも採れています。今年のいわゆる春子は4月中下旬がピークでした。
その後は雨不足で生長が悪くなっていますが、少量ながらだらだらと採れています。
今店に出ている生シイタケはほぼ100%菌床シイタケで姿も原木とは異なり画一的です。
我が家の原木シイタケは小さいものから少々傘の開いたものまで色々です。
採りたてのタケノコとシイタケは料理するにも相性が良い。
掘ったばかりのタケノコとバラエティ豊かな原木シイタケを一緒に描いてみました。



水墨画「土筆と蕗の薹」

2024年04月14日 | 水墨画:菜果
本画仙 色紙   

今、至る所に沢山の土筆(つくし)が出ています。
如何にも可愛いその姿は里山の春の風物詩とも言えますが、その実体はスギナ。
スギナは地下茎が発達しているため、その子供たる胞子茎の土筆が密生するほどに発生します。
スギナとなればこれは雑草。しかもそれは他を圧するほどに強い。作物を作る立場から見ると厄介な存在です。
しかし、地上部を枯らすことは出来ても地下茎は強靱で翌春には土筆が出てきて確実に再生します。
この土筆を食する地方もあるようなのですが、当地方にはそのような習慣はなく未だその味を知りません。
同様に早春にはい出てくるのが蕗の薹(フキノトウ)。こちらはごく普通に食する習慣があります。
柔らかくほろ苦いその味は早春の味と言ったところ。
今はすでに食べ頃を完全に過ぎ、開いて茎が伸びてきました。出遅れたものが辛うじて残っているでしょうか。
土筆と蕗の薹。時期も多少ずれますが、同じ場所に生えることは殆どありません。
水墨画でコラボさせてみましたが、どうでしょう。


水墨画「大根と人参」

2024年04月01日 | 水墨画:菜果
本画仙 色紙    

根菜の代表と言えば何と言っても大根と人参。一緒に水墨で描いてみました。
当地では厳寒期に確実に利用できるよう土中に埋め込み冬囲いするのが一般的です。
我が家で実際に掘り出すのは2、3月になることが多いのですが、やはり冬囲いは不可欠です。
そのまま畑に放置すれ積雪や凍害を受けるリスクのみならず、スが入ったり割れたりしてしまいます。
ところで、大根や人参が店に出るときは葉は殆ど付いていません。特に人参は完全に切られています。
ですから普段大根や人参の葉が消費者の目に留まることはないと思います。
しかし、画にするとき葉が全くない大根、人参なら味気ないものになることでしょう。





水墨画「凍り豆腐」

2024年01月22日 | 水墨画:菜果
画仙紙半切 1/3  

一昨日は大寒でした。それにも拘わらず気温が高い。
南岸低気圧が北上した昨日、もし気温が低く雪になっていたら10年に一度のドカ雪になっていたでしょう。
昔々はずっと寒かった気がします。最も寒いこの時期、我が家では凍み豆腐を作ったものでした。
幼少の頃で記憶も朧気になっていますが、豆腐をわらで編んで吊していたわけではないと思います。
確か「わらだ」と呼ばれる竹で編んだ大きな道具に豆腐を広げていたはずです。
豆腐も普通の豆腐と違って凍み豆腐用の、硬めの豆腐が売られていました。
凍み豆腐は厳寒期に豆腐を寒風に晒し、凍結と解凍を繰り返すことで出来上がります。
昔は盛んに保存食を作ったのでした。同様に「わらだ」に広げて作ったものに凍み大根や凍み餅があります。
冬場以外にも干し芋や干し椎茸などが作られました。
今の凍み豆腐は売られる時は藁で編まれていますが、冷凍庫で強制的に凍らせることが多いと聞きます。
当地方では専ら凍(し)み豆腐、関東では一般名の凍(こお)り豆腐、西日本では高野(こうや)豆腐と呼ばれることが多いでしょうか。
さて、肝腎の画の方はどうでしたか。


墨彩画「柚子」

2023年12月17日 | 水墨画:菜果
画仙紙 半切1/3   

ユズを頂いたので墨彩画で描いてみました。
実にはごく小さなくぼみがありお尻にも特徴があります。葉は長めで肉厚、光沢があります。
そして、鋭いとげ。収穫するには邪魔な存在かもしれません
少々単調な画になってしまいました。一工夫足りなかったようです。
ユズは本当に香り豊かで、この季節の料理には脇役としての存在感が際立ちます。
特に小生はユズ香る漬物に目がありません。
残念ながら我が家にユズの木はないので、この時期に頂くのは大変有り難い。
冬至には柚子湯に入る風習もあり、柚子湯に入ると風邪をひかずに冬を越せると言われます。
もったいない気がするので、少量だけ使って柚子湯に入るつもりです。


水墨画「石榴」

2023年12月03日 | 水墨画:菜果
画仙紙 半切1/3  

我が家の庭の主とも言える古木のザクロ。
子供の頃には沢山成り、木によじ登り採ったものです。
ザクロの実は非常に酸っぱいですが、完全に熟すと甘味も十分。
ものがない時代、ムシャムシャとかじっては種の部分をペッと吐き出す。よくやったものです。
今や樹齢130年を越える老木となり、近年は1個も実を結ばない年も珍しくなくなりました。
それが昨年は数個の実が固まって成り、老体の身を顧みず木によじ登って採りました。
今年は残念ながら1個も実は成りませんでした。
そもそも花自体が少なかったためあまり期待はしていませんでした。
ザクロは元来実留まりが悪く、沢山花が咲いても実を着けるのは一部。昨年が例外だったと言えます。
せめてもと画にしてみました。敢えて色付けはしませんでした。


水墨画「蜂屋柿」

2023年11月19日 | 水墨画:菜果
本画仙 色紙   


干し柿に用いられる代表的な品種「蜂屋柿」。
当地で干し柿にされるのも殆どが「蜂屋柿」です。
昔から当地の通称は「とやま(富山?)」。謂われは定かでありません。
しかし、少し調べてみると富山から伝わってきたのではないかと言う推論が成り立ちそうです。
柿は長い年月の間にその土地にあった品種が定着し在来化しました。
我が家にも幼少の頃は甘柿、渋柿とも色んな品種が植えられていました。
富山の干し柿用品種は「三社柿」と呼ばれているらしいのですが、よく似ています。
そして、その干し柿の製法は岐阜県から伝わったと言います。
岐阜県と言えば「蜂屋柿」発祥の地、美濃加茂市蜂屋町。
柿の姿形を見ても伝搬の可能性が何となく見えて来ないでもありません。
もっとも美濃加茂市蜂屋町の蜂屋柿は「堂上蜂屋」として別格の扱い。
その保存木を接木したものからだけ生産、栽培から干し柿の製法までを厳密に管理し、ブランド化されています。
「蜂屋柿」はボリュームのある円錐形の姿が特徴です。
少々、厳密に言うと完全な円形ではなく僅かに四角に肩の張った円錐形です。
特に大きなものになるとその特徴がよく現れます。ただ水墨での表現は難しい。




水墨画「葡萄」

2023年10月29日 | 水墨画:菜果
麻紙 F10   

秋は果物の季節でもあります。
ブドウは水墨画で描かれることが最も多い果物と言えるかもしれません。
小生も何度か描き、これは額装して部屋に飾って置いたものです。
大分古くなったので取り外すことにしました。このタイミングで記録に留めます。
滲みの強く出る麻紙を使用しています。画仙紙に比べ取り扱いが難しい。
ブドウの粒は没骨(もっこつ)法と言い、筆の腹を使い回転させて円を描きます。
この紙では滲みが出て粒の縁がくっきりとはなりにくいのです。
幾つか線描きを加え補筆した跡が見えます。
一方で、墨独特の濃淡が綺麗に出るのが麻紙の良さです。
記憶も朧気になりましたが、その時は稚拙さはさておき、墨味が気に入って額装したのだと思います。
ちなみにイメージした品種が「巨峰」だったことは確かに憶えています。


水墨画「ピーマン」

2023年10月22日 | 水墨画:菜果
本画仙 色紙   

夏の野菜も次第に少なくなってきました。多分最後まで残るのがピーマンだと思います。
品種はしばらく前から作っている「京みどり」。
この品種は形が縦長でスマートな中型のタイプです。
果肉がやや薄く、穫り始めは特に軟らかなのが特徴です。
次第に肉厚になってはきますが、収穫後半になっても食味が落ちません。
一般的なピーマンのイメージからすると、ある意味ではピーマンらしくない姿とも言えます。
エースピーマンに代表されるように肩の張った獅子型と言われるタイプがピーマンのイメージかもしれません。
画にする場合も獅子型の方が絵になります。敢えて旬の「京みどり」をモチーフに描いてみました。


水墨画「オクラ」

2023年09月10日 | 水墨画:菜果
本画仙 色紙   


オクラの原産地はアフリカ北東部と言われています。
そもそもは多年草ながら、日本では越冬できないので一年草として扱われます。
人の背丈を越すくらいに生長し、茎は次第に木化してきます。
普通、店で売られているオクラは10~15㎝くらいのパック入りのオクラですが、あれはあくまで未熟果。
放っておけばどんどん生長し、硬くなって食べられなくなります。しかもそのスピードが速い。
一般の方はキュウリやナスのようには作られている姿を見ることは少ないでしょう。
特徴的なのが、その花が綺麗なこと。
アオイ科の植物と言うことで、同科のタチアオイ、フヨウ、ムクゲなどの花によく似ています。
小生はオクラをしばしば描いていますが、一番はやはり花が綺麗だからです。
今までオクラの実だけを描いたことはありません。
アイボリー色の大きな花と穫り頃の実、そして小さな蕾がいくつも着いているところを描いてみたくなります。




水墨画「胡瓜」

2023年08月20日 | 水墨画:菜果
本画仙 色紙   

夏場の野菜として一、二に名前の挙がるキュウリ。
家庭菜園を手がける方にとっても、ほぼ100%近い確率で作られることでしょう。
水墨画の題材としてもそうかもしれません。
キュウリの果実は手に入れることが容易で描きやすいと言えます。
しかし、どんな風に成っているのかを見たり描いたりするのはそう簡単ではありません。
葉や茎や蔓がどうなっているかは身近にないと分らないものです。
キュウリは真っ直ぐで綺麗な姿のものが良しとされますが、画にする時はヘボの方が絵になります。
今回はその中間くらいで描いてみましたが、どうでしょう。
小生はキュウリの姿を眺めることは頗る容易です。しかし、しげしげと見ることはまずありません。
これまで一度だけ1株のキュウリを念入りに観察したことがあります。
大分前になりますが、掛軸の出品作にキュウリ全体を描いた時です。
すでに投稿済みですが、床の間に掛けた時のものを再掲してみます。

実際のキュウリをそのまま写し取るように描くのは困難です。
水墨画では構図や省略もまた大きな要素。さらに一工夫必要でした。

水墨画「大麦の穂」

2023年06月18日 | 水墨画:菜果
画仙紙 半切1/3  

6月の農村の風景を象徴するような麦秋。
時折通るルートに見事な大麦の集団栽培地があります。
今年は例年から見ると大分早く5月下旬にはかなり色づきました。
大麦はこれまでも好んで繰り返し描いてきました。
麦にも大麦、小麦、ライ麦など、さらに大麦にも6条、2条など種々あります。
小生が好んで画にしているのは6条大麦。それも色付く前の青いうちの穂です。
一粒一粒が6列に規則正しく並んだ穂、そして長く伸びた芒(ノゲ)。
この姿が力強く画にしたくなるのです。と言っても多くの人は大麦を見る機会もなく分かる人は少ないことでしょう
我が家でも幼少の頃には大麦を作っていました。
押し麦にして麦飯を食べるのが当たり前の時代です。麦飯も今では名物になった牛タンを食べる時くらいのものになりました。


水墨画「孟宗竹と竹の子」

2023年05月12日 | 水墨画:菜果
本画仙 色紙  

妙な題名を付けてしまいました。
孟宗竹だけで良かったのかもしれませんが、季節感で言うと竹の子。
タケノコもいつもなら筍、ただこの構図だと竹の子の方が良さそうな気がしました。
どういう訳か、筍と言うと殆どの場合孟宗竹の子を連想するようです。
当地では孟宗竹の子が終わるとハチクの子が出てきます。
しかし、孟宗竹の子とは言わず筍、ハチクの子とは言わずハチクです。
実に変なのですが、他地方でも同様な事例は多いのかもしれません。
当地にもイノシシが出没するようになって10数年。筍が出る前から食い散らかすのが日常になっていました。
それが、昨年、今年と激減。人間が旬の筍にありつけるようになったのは嬉しい誤算でした。
しかし、これが今後も続くと思うのは多分甘い考えなのでしょう。
少なくなったと言っても残っているのは確実。繁殖力が強いので、より強靱なイノシシになって舞い戻ってくる可能性は高い。