日々雑感「点ノ記」

備忘録(心の軌跡)

Wさんとのお別れ

2012年09月07日 | インポート
朝礼の時の挨拶と終礼の時の挨拶で、私たち作業員に働く気力に繋がる言葉をかけて下さっていた現場代理人のWさんが、家庭の都合ということで今週いっぱいで実家に帰られて、実家の近くで勤務されるという事になった。

6月4日の大村市竹松遺跡の発掘調査開始以降、3ヶ月の間、現場代理人として、率先して土で汚れるような作業をこなされていた姿が印象的だった。

口先で他の者に指示だけをするのではなく、自らの行動で作業の流れを引っ張って行かれているような人だった。

家庭の事情だということだから、最近の心中の苦悩は相当な物だっただろうが、それを表情にも出さずに、現場の責任者として200人近い作業員の組織を動かしてこられた。

通勤車の作業員に対しても、各人に声をかけておられた。

毎朝毎夕、必ず会えることが出来ていたお顔の1人がいなくなるという事はさびしい限りではある。

私自身が、この作業現場に通勤する事が楽しくてたまらない要因のひとつは、W氏の人柄の良さと誠実さを毎日感じる事が出来ていたからの様にも思う。

「きょうも一日、安全作業でお願いします。」 「小休止してください。」 「少し早いようですが10時の休憩に入ります。」 「そろそろお願いします。そろそろお願いします。」 「お昼休憩に入ります。お昼休憩にしてください。」 「3時の休憩に入ります。3時休憩してください。」 「はい、そろそろおしまいにします。片付けてください。」 「きょうも一日、お疲れ様でした。ありがとうございました。」 という区切り区切りでハンドマイクから聞こえるW氏の声で、作業現場での時が刻まれていた。

Wさん、ありがとうございました。

そしてお疲れ様でございました。

ご家族の身近におられて、現状の好転のために、じっくりと臨まれたら良いと思っております。。



昼休みの12時40分頃から、以前の約束どおりに、掘り出された「湖州六花鏡」が、現場事務所の前で展示された。

鏡の裏面の、紋様や文字とおぼしきものが見えているような見えていないような感じに私には思えた。

これから正式な分析のために、専門の機関へ送られるという事。

いにしえより土の中に埋もれていた、陰陽道(おんみょうどう)で使われていたかもしれない鏡の力によって、W氏のご家族に幸がもたらされる事を祈っておきたい。



豊田一喜