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日々雑感「点ノ記」

備忘録(心の軌跡)

アークタンゼントと測設のはなし

2012年09月18日 | インポート
サイン(sin)、コサイン(cos)、タンゼント(tan)などという用語は、私たちが高校生の頃には高校1年生の数学で出てきていた。

直角三角形の各辺の比を表す記号で、角度や距離(辺の長さ)を扱う仕事では、必ず必要な基礎知識となる。

角度や距離(辺の長さ)を扱う仕事といえば、そのひとつとして「測量」がある。

初歩的な幾何学の知識があれば、基本的な測量作業の計算はほとんど出来てしまう。

サイン(sin)、コサイン(cos)、タンゼント(tan)のそれぞれの逆数の事を、セカント(sec)、コセカント(cosec)、コタンゼント(cotan)という事ぐらいまでは覚えている人がほとんどだとは思う。

ところが、アークサイン、アークコサイン、アークタンゼントとなると、「なにそれ?」と言う人も増えてくるのではないかと思う。

記号で示せば、sin,cos,tanの表記の右上の方に、小さな-1(マイナス イチ)を付けた記号になる。

sinのマイナス1乗、cosのマイナス1乗、tanのマイナス1乗というように表記した記号が、それぞれアークサイン、アークコサイン、アークタンゼントという呼び方をする。

例えば、アークサイン0.5=30度0分0秒であり、アークコサイン0.5=60度0分0秒であり、さらにアークタンゼント1.7320504・・・=60度0分0秒になる。

要するに、アークサイン○○や、アークコサイン○○や、アークタンゼント○○の、○○の中に表示する数値になるような角度を表す記号である。

別の言い方をすれば、サインの値やコサインの値や、タンゼントの値が○○になるような角度を表している。

アークサイン○○や、アークコサイン○○や、アークタンゼント○○が示す角度の値は、関数電卓などによって容易に求める事が出来る。

あるいは、三角関数真数表があれば、比例挿入計算のみで、それらの角度を求める事が出来る。

測量座標系におけるX座標差(縦座標差)とY座標座(横座標差)が分かれば、アークタンゼント(Y座標差÷X座標差)にて、座標北からの方向角を知る事が出来る。

道路の設計などでは、計画する道路中心線などの所要地点の座標値が計算されて与えられるので、ある基準点における、別の、方向の基準となる基準点からの水平角と水平距離を計算して、所要の道路中心線などの測設(杭打ち)を行う事が出来る。

測設とは、座標値や方向や標高値等が定義されている計画された何等かの点を、現地に打設する事をいう。

例えば、A点を、ある測設点を測設するための基準点とし、B点をそのA点から視準できる方向の基準点とし、C点を測設点とすれば、A点におけるB点の方向角は、A点とB点の座標差から計算できる。

同じくA点におけるC点の方向角もA点とC点の座標差から計算する事ができる。

それらの方向角を加減する事によって、A点からB点方向を基準とした場合の、C点方向の水平角が計算できる。

A点とC点の水平距離は、A点とC点の座標差から、三平方の定理によって計算する事が出来る。

そのようにして計算された水平角と水平距離を用いて、トータルステーションなどの測距機能と測角機能を使い、測設すべき点を現地に打設する事が出来る。

私たちが発掘作業をやらせてもらっている大村市竹松遺跡の、20メートルピッチに打設してある頭が赤色のプラスチック杭も、そのような方法で現地に測設してある。

雑学的な知識として、以上のような事を知っていれば、何かの時に役に立つかもしれない。



豊田一喜