速水林業という名前は聞いたことがある人は多いはず。
三重県の尾鷲市と紀北町にかけて1070ヘクタールの森林を有し、日本で最初にFSCという森林認証を受けるなど先進的でサスティナブルな経営を行っている。
都会人はヘクタール単位の面積に驚くけど森林経営という視点で見ると規模としては小規模の上か中規模の下とか。ちなみに日本で最も広大な森林を所有しているのは王子製紙の約19万ヘクタール、次が日本製紙で約9万ヘクタール弱とか。
そんな面積で速水林業のように林業専従というのは希少な例とか。
著者の速水亨さんは1953年生まれというので私と同級生。林業を営む家で生まれた9代目。大学卒業後実家に戻るのだが、当時が日本林業のピーク。以来凋落の一途をたどっている。そんな中で現場を体験しながら林業を学び(著者の父親も大変な勉強家だったとか)、林業先進国を中心に何度となく行って取り入れられることは散り入れて、大型機械の導入、作業道の整備、育苗システムの開発、コスト削減と合理化による生産性の向上に取り組んできて、日本林業を立て直そうとするオピニオンリーダにまでなってきている。
ところで日本の森林は以前「森林飽和」で書いたように、江戸時代の森は木を使いつくすために伐採が進み、山にはパラパラと木が生えているだけ。その後明治になって植林が奨励されたのだが、戦争が始まると木が切りつくされた。戦後はげ山だったところを大規模に植林しているのだが、伐採期を迎えても木材の値段が上がらず手入れもされずに放置されているところが多い。それでも日本には国土の67%が森林で、その面積は約2500万ヘクタール、うち人工林は約1000万ヘクタール。現在は近世以降の日本林業の歴史の中でもっとも豊かな森がある。
よく水害があると杉林は崩れやすいと言われるが、杉の特性として水分を好む性質があり水分が多くて湿度の高いところに杉を植える。崩れやすいところに杉を植えるから、結果として杉林が崩れやすく見えるということ。
森の保水力についても人工針葉樹林でも広葉樹林でもほとんど変わらない。むしろしっかりとした下草が茂っているかどうかが重要。その面では人工針葉樹林でもしっかりとした手入れがなされているかが大切となのだが、手入れが放棄された人工林が増えていることが問題。
林業は灌漑を行う訳でもなく肥料も使うこともないので、管理できるのは光だけ。これからは人工林を設計するうえでも生物多様性という視点も重要で、光の管理によって多様性を高める森林をつくることができる。
林業経営の基本は成長量と伐採量のバランスであり、持続的安定的に経営してくためには、伐り過ぎないこと。しかし木材価格が下がっている時には経営を考えると非常に難しいことです。しかし世界的に見ても、欧米では成長量を計算して厳しく管理していると言われているが、カナダのブリティッシュコロンビア、アラスカ、フィンランド、ノルウエー、スウェーデンなどの北半球の高緯度地方は気象条件が厳しく樹木の回復力が脆弱で成長量のバランスが非常に厳しい状態とか。新大陸では土地純収穫説に立っていて投資ファンドが入り込み、比較的短期に収益が確保される短伐期の林業が広がっている。結果ユーカリとかの単一樹種を一面に植えて10~20年で回収するということになるのだが、ユーカリを長く育てているとユーカリ自身も含めて他の植物が育たなくなる土地になってしまう。果たしてこれが持続可能性があるのか。
因みに最近でこそ厳しく言われるようになりつつあるが、日本の輸入材の約2割は違法伐採かと言われ、発展途上国から輸入される違法に伐採された木材は再生コストを考えることないため適正価格を引き下げて林業をますます苦境に陥らせている。昔フィリピンのラワン材がよく使われていたが、結果フィリピンでは50%の森林率が15%になり、地元の山村は荒廃し、今では木材輸入国になっているとか。再生可能な森林経営がなされなかったことで長期的に見れば誰も幸せになっていない。
さらに輸入外材に対抗するため、今の日本林業は需要の拡大が見込めない中、伐採量を増やして市場に出していくのでますます値崩れを起こしている。さらにその後の育林についてはフォローしていない。
森をつくるということは短期のスパンではなくて50年100年のスパンでありようを考えていくこと。
非常に厳しい現状ですが、速水さんの実践を見ていると日本林業にはまだまだ可能性はあるのではと思えてきます。とにかく森林資源としては飽和状態というほど豊かであり、それを活かす座学ではなく現場を熟知した工夫と生産性の向上そして良質な木材を売り込んでいくマーケティングの発想が、未来を切り開いて行けるのでは。
最後にちょっとした「へえー」を
アメリカ、ワシントン州オリンピア国立公園でのトレール入り口の注意書きにはピューマに出会った時にどうするかが書いてあるのだが、注意書きの最後に「・・・もしそれでも襲ってきたらあきらめず戦え。グッドラック!」
三重県の尾鷲市と紀北町にかけて1070ヘクタールの森林を有し、日本で最初にFSCという森林認証を受けるなど先進的でサスティナブルな経営を行っている。
都会人はヘクタール単位の面積に驚くけど森林経営という視点で見ると規模としては小規模の上か中規模の下とか。ちなみに日本で最も広大な森林を所有しているのは王子製紙の約19万ヘクタール、次が日本製紙で約9万ヘクタール弱とか。
そんな面積で速水林業のように林業専従というのは希少な例とか。
著者の速水亨さんは1953年生まれというので私と同級生。林業を営む家で生まれた9代目。大学卒業後実家に戻るのだが、当時が日本林業のピーク。以来凋落の一途をたどっている。そんな中で現場を体験しながら林業を学び(著者の父親も大変な勉強家だったとか)、林業先進国を中心に何度となく行って取り入れられることは散り入れて、大型機械の導入、作業道の整備、育苗システムの開発、コスト削減と合理化による生産性の向上に取り組んできて、日本林業を立て直そうとするオピニオンリーダにまでなってきている。
ところで日本の森林は以前「森林飽和」で書いたように、江戸時代の森は木を使いつくすために伐採が進み、山にはパラパラと木が生えているだけ。その後明治になって植林が奨励されたのだが、戦争が始まると木が切りつくされた。戦後はげ山だったところを大規模に植林しているのだが、伐採期を迎えても木材の値段が上がらず手入れもされずに放置されているところが多い。それでも日本には国土の67%が森林で、その面積は約2500万ヘクタール、うち人工林は約1000万ヘクタール。現在は近世以降の日本林業の歴史の中でもっとも豊かな森がある。
よく水害があると杉林は崩れやすいと言われるが、杉の特性として水分を好む性質があり水分が多くて湿度の高いところに杉を植える。崩れやすいところに杉を植えるから、結果として杉林が崩れやすく見えるということ。
森の保水力についても人工針葉樹林でも広葉樹林でもほとんど変わらない。むしろしっかりとした下草が茂っているかどうかが重要。その面では人工針葉樹林でもしっかりとした手入れがなされているかが大切となのだが、手入れが放棄された人工林が増えていることが問題。
林業は灌漑を行う訳でもなく肥料も使うこともないので、管理できるのは光だけ。これからは人工林を設計するうえでも生物多様性という視点も重要で、光の管理によって多様性を高める森林をつくることができる。
林業経営の基本は成長量と伐採量のバランスであり、持続的安定的に経営してくためには、伐り過ぎないこと。しかし木材価格が下がっている時には経営を考えると非常に難しいことです。しかし世界的に見ても、欧米では成長量を計算して厳しく管理していると言われているが、カナダのブリティッシュコロンビア、アラスカ、フィンランド、ノルウエー、スウェーデンなどの北半球の高緯度地方は気象条件が厳しく樹木の回復力が脆弱で成長量のバランスが非常に厳しい状態とか。新大陸では土地純収穫説に立っていて投資ファンドが入り込み、比較的短期に収益が確保される短伐期の林業が広がっている。結果ユーカリとかの単一樹種を一面に植えて10~20年で回収するということになるのだが、ユーカリを長く育てているとユーカリ自身も含めて他の植物が育たなくなる土地になってしまう。果たしてこれが持続可能性があるのか。
因みに最近でこそ厳しく言われるようになりつつあるが、日本の輸入材の約2割は違法伐採かと言われ、発展途上国から輸入される違法に伐採された木材は再生コストを考えることないため適正価格を引き下げて林業をますます苦境に陥らせている。昔フィリピンのラワン材がよく使われていたが、結果フィリピンでは50%の森林率が15%になり、地元の山村は荒廃し、今では木材輸入国になっているとか。再生可能な森林経営がなされなかったことで長期的に見れば誰も幸せになっていない。
さらに輸入外材に対抗するため、今の日本林業は需要の拡大が見込めない中、伐採量を増やして市場に出していくのでますます値崩れを起こしている。さらにその後の育林についてはフォローしていない。
森をつくるということは短期のスパンではなくて50年100年のスパンでありようを考えていくこと。
非常に厳しい現状ですが、速水さんの実践を見ていると日本林業にはまだまだ可能性はあるのではと思えてきます。とにかく森林資源としては飽和状態というほど豊かであり、それを活かす座学ではなく現場を熟知した工夫と生産性の向上そして良質な木材を売り込んでいくマーケティングの発想が、未来を切り開いて行けるのでは。
最後にちょっとした「へえー」を
アメリカ、ワシントン州オリンピア国立公園でのトレール入り口の注意書きにはピューマに出会った時にどうするかが書いてあるのだが、注意書きの最後に「・・・もしそれでも襲ってきたらあきらめず戦え。グッドラック!」
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