怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

デービット・アトキンソン「給料の上げ方」

2023-06-29 10:07:59 | 
失われた30年の間日本人の給料はほとんど上がっていない。
アベノミクスなどと浮かれている間に、日本の平均賃金では散々悪口を言っていた韓国の後塵を帰すまでになっている。
これから日本は人口減と高齢化がどんどん進んでいくと言うのに、このまま給料が上がらなければお先真っ暗。
人口減と高齢化が日本経済にどういうひどい影響を及ぼすかについて、アトキンソンさんは数字をあげて表をふんだんに使いながら門外漢にも分かりやすく解説している。

文字も大きく(最近はこのことが読書するに際して重要になった歳になりました)文章も読みやすい。しかし、ポイントポイントには文字がマーカーで書くように色が塗ってあるのですが、自分でマーカーを引くのは理解を深めるための確認作業として成り立つのですが、あらかじめ引いてあるのは便利なんですけどなんだかバカにされているようです。
図表も非常に効果的にまとめられているのですが、統計は加工の仕方によって自分の都合のいい形にもできるので、ちょっと本当かなと思ったら原資料を当たるのも必要なのでしょうけど、研究者でもないのでここは加工された図表を信じておきます。
最初に今の日本経済の立ち位置を分析していますけど、日本の平均賃金は1990年代からほとんど上がっていなくてその賃金水準は低く(oecd加盟国38カ国中24位)、労働生産性は世界36位。賃金が上がらないのに国民負担率は上がり続けている。それは高齢化が進む中で社会保険負担が増え続けているから。つまり日本人の手取り収入は減り続けていると言うこと。高齢者の数は1990年代から30年の間に2000万にいい以上増えています。一方それを支えるはずの生産年齢人口は同時期に1300万人減っています。そしてこれからも高齢者の数は減らず、生産年齢人口は減り続けていきます。
このまま給料が増えない状況が続けば現役世代の負担は増え続けざるを得ず、給料の手取りは減る一方になる。
少子高齢化で人口が減少する悪影響を6つ述べていますが、
1;消費者が減る(供給しても消費者がいない)
2;高齢化によって低所得・低消費者が増える
3;高齢化によて需給ミスマッチが生じる
4;経済の中枢が減りエネルギーが低下する
5;投資が出来なくなる(社会保障費が増え続け経済成長を促進する投資が抑制される)
6;インフラ維持の負担が増大する(一人当たりにかかるインフラの固定費は増大する)
と言うことで、少子高齢化の進展による人口減によって社会保障費の負担が増え、固定費負担も増える一方納税者は減り、手取り収入は激減する、という見たくない未来があぶり出されてしまいます。
この頃岸田政権によって異次元の少子化対策が唱えられ始めましたが、少子化対策が人口減に対して効果を出すのは、仮にすぐに少子化を止めたとしても出生児が出産可能年齢に達する20年後以降のこと。少子化対策は是非とも効果を上げてほしいのですが、人口減が進むこれからの30年をいかに凌いでいくか、あまり明るい展望が抱けません。
そんな状況でアトキンソンさんの処方箋は、人口減は所与としても日本の給料を大きく上げていけば、社会保障費を負担できると言うもの。
ただしアトキンソンさん自身が旧態依然とした仕組みやルールを見直すよう政府にいろいろな提言をし、政府もそれなりに取り組んできているのですが、ステークホルダーが多く最低賃金一つでも抵抗が激しくなかなか進まない。法人税の減税とか投資ン対する補助あるいは減税を行っても、企業は内部留保をため込むばかりで投資とか給与には回ってこない。
ある種のあきらめとともに、日本という国は政府が民間企業を動かす力はかなり弱いと言う結論に達しています。
政府が頼りにならないと言うのならばどうすればいいのか。現状維持では給料が上がらず、生活は今より苦しくなる。
ひとりひとりが自分で考えなくてはいけないのですが、その選択肢は4つ
1;海外移住する
2;給料交渉する
3;転職する
4;起業する
まあ、海外移住できる人は少数派でしょうけど、給料交渉についてはかつての労働組合の力はないのが残念。ふた昔前のマルクス経済学全盛のころは総資本と対峙せよ叫ばれていたのですが、いまや経営者側の人から給与をあげよと言われています。日本経済の成長のためには個別企業の利益確保の行動は総資本としては消費を抑え込むので阻害要因になる。今まで賃金をあげずに内部留保だけため込んできた企業経営者ですが、これから生産年齢人口が減っていく中では、賃上げできないような経営者は見限られて当然。忠誠心などは捨てて給料を上げられないような会社は何時転職してもおかしくなきように思わせないといけない。
第4章では見限るべき社長、ついて行くべき社長についても具体的に述べていますが、それなりに忠誠心を持って一所懸命の精神でしのぎ難きをしのんできた昭和生まれとしては、中々思考が及ばないのですが、起業するような勇気もなく企業横断的な熟練・技術を持たなかったと言われればそれまで。2~3度は真剣に退職しようかと思ったことがあるのですが、やめても展望が開けないので我慢したあのですが、当時は途中退職した人への視線は冷たかったですね。
第4章以降はまだまだ春秋に富む現役世代の人がじっくり読むところです。国民経済的には広い意味での扶養親族になっている身なので、現役世代の人にはしっかり給料を上げて頂いて日本を活性化してほしいものです。
最後に補論として「俗流評論家に騙されるな」を書いてありますが、誰のことを言っているのか考えながら読むのも一興でした。


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