「三島由紀夫vs東大全共闘」の映画を見て、改めて騒乱の70年前後という時代を考えてみた。
ちょうど私が高校生時代だったのですが、疾風怒濤の混沌のなかで矢鱈と小難しい理屈を言いつのり、右往左往していただけの記憶です。その頃よく読んでいたのが「なだ いなだ」の本。本人も言っているように「なだ」は、揚げ足取りの生意気で理屈っぽい議論好きなところがある。当時はそんなところが余計好ましかく、その影響を結構受けていました。
この本はそんな「なだ」が朝日ジャーナルの「社会観察」欄の匿名の執筆者グループの一人として書いたものをまとめたもの。
主に新聞の社会欄に取り上げられた事件を出発点として意見を述べるものなのですが、新聞の取り上げ方を、そして社会の反応を鋭く批判をしている。それをもう匿名にする必要がなくなったのか、自分の文章を振り返った解説とともにまとめたものです。
昭和42年ごろから数年間のものですが、ここで取り上げられている事件のほとんどはもはや記憶のかなたになっている。当時は新聞紙面を大きく飾ったのであろう事件もすぐに陳腐化して忘れ去られている。「なだ いなだ」自身がこの本をまとめた48年にもはや多くの事件が記憶のかなたになっているので解説が必要といっている。
しかし事件のあらわれ方は違っても同じようなことが繰り返し起こり、同じような反応議論が起きていることが分かる。もちろん経済状態が大きく違い感覚として時代が違うと感じることも多いのだが、今でも十分成り立つ議論が多々ある。坂の上を目指していた高度成長期でも、昭和は明るいばかりではなくてごった煮の混沌の中に汚濁に満ちた面はあり、多分当時に戻れば臭いが耐えられないのでは。
当時の事件を追いつつ世相を考えると結構新鮮に考えさせられます。
ところでこの本を引っ張り出したのは、例外的に署名論文で書いたものが2本含まれていて、映画を見て思い出したから。署名論文はいずれも三島由紀夫の自殺について書いたもので、「なだ いなだ」はその結果右翼青年から脅迫を受けている。でも何年かたって臆することなく本に入れているのだからなかなかの覚悟です。
一つは自殺直後に書かれた「お静かにお眠りください」、三島が死ぬところ迄太宰と似ていたと書き、道化以外にはならなかったと書く。あなたの死に、重みをつけて騒ぎそうな人たちがいるので、お静かに、お眠りください。
この文章のために若い右翼青年に電話で脅かされている。右翼テロに一命を落とさなければいけないかと思っている。
もう一つは「閉じ込められなかったエロス」。三島の同性愛指向について正面から取り上げている。三島自身「仮面の告白」「禁色」の中で自身の同性愛傾向を書いているのだが、ゲイ仲間では「三島のねえさん」と呼ばれていたとか解剖の結果、他人の精液が発見されたとか、ある意味衝撃的な事実が書いてあり、私はこのことからこの本のことが記憶に残っていた。この論文では右翼に脅かされたとは書いて無く、多分不都合な真実なので完全に無視されたのだろう。噂とかゴシップ、スキャンダルとかは必ず取り上げる週刊誌の類でもこのことは取り上げられず、まったく触れられなかった。強い抑圧が働いたのであろう。それだけに三島を論じるときに必読論文の一つなんだろう。
ちょうど私が高校生時代だったのですが、疾風怒濤の混沌のなかで矢鱈と小難しい理屈を言いつのり、右往左往していただけの記憶です。その頃よく読んでいたのが「なだ いなだ」の本。本人も言っているように「なだ」は、揚げ足取りの生意気で理屈っぽい議論好きなところがある。当時はそんなところが余計好ましかく、その影響を結構受けていました。
この本はそんな「なだ」が朝日ジャーナルの「社会観察」欄の匿名の執筆者グループの一人として書いたものをまとめたもの。
主に新聞の社会欄に取り上げられた事件を出発点として意見を述べるものなのですが、新聞の取り上げ方を、そして社会の反応を鋭く批判をしている。それをもう匿名にする必要がなくなったのか、自分の文章を振り返った解説とともにまとめたものです。
昭和42年ごろから数年間のものですが、ここで取り上げられている事件のほとんどはもはや記憶のかなたになっている。当時は新聞紙面を大きく飾ったのであろう事件もすぐに陳腐化して忘れ去られている。「なだ いなだ」自身がこの本をまとめた48年にもはや多くの事件が記憶のかなたになっているので解説が必要といっている。
しかし事件のあらわれ方は違っても同じようなことが繰り返し起こり、同じような反応議論が起きていることが分かる。もちろん経済状態が大きく違い感覚として時代が違うと感じることも多いのだが、今でも十分成り立つ議論が多々ある。坂の上を目指していた高度成長期でも、昭和は明るいばかりではなくてごった煮の混沌の中に汚濁に満ちた面はあり、多分当時に戻れば臭いが耐えられないのでは。
当時の事件を追いつつ世相を考えると結構新鮮に考えさせられます。
ところでこの本を引っ張り出したのは、例外的に署名論文で書いたものが2本含まれていて、映画を見て思い出したから。署名論文はいずれも三島由紀夫の自殺について書いたもので、「なだ いなだ」はその結果右翼青年から脅迫を受けている。でも何年かたって臆することなく本に入れているのだからなかなかの覚悟です。
一つは自殺直後に書かれた「お静かにお眠りください」、三島が死ぬところ迄太宰と似ていたと書き、道化以外にはならなかったと書く。あなたの死に、重みをつけて騒ぎそうな人たちがいるので、お静かに、お眠りください。
この文章のために若い右翼青年に電話で脅かされている。右翼テロに一命を落とさなければいけないかと思っている。
もう一つは「閉じ込められなかったエロス」。三島の同性愛指向について正面から取り上げている。三島自身「仮面の告白」「禁色」の中で自身の同性愛傾向を書いているのだが、ゲイ仲間では「三島のねえさん」と呼ばれていたとか解剖の結果、他人の精液が発見されたとか、ある意味衝撃的な事実が書いてあり、私はこのことからこの本のことが記憶に残っていた。この論文では右翼に脅かされたとは書いて無く、多分不都合な真実なので完全に無視されたのだろう。噂とかゴシップ、スキャンダルとかは必ず取り上げる週刊誌の類でもこのことは取り上げられず、まったく触れられなかった。強い抑圧が働いたのであろう。それだけに三島を論じるときに必読論文の一つなんだろう。
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