【画家や地元有志から学校に贈られた日本画を一堂に】
京都の市立学校には京都画壇を代表する画家の作品をはじめ約2000点に上る美術作品が所蔵されているという。その多くは校舎竣工を記念したり子どもの健やかな成長を願ったりして、画家本人や地域の人たちから寄贈された。京都市学校歴史博物館(下京区)で開催中の企画展「学校で出会う京都の日本画」(22日まで)は、それらの作品の中から江戸期から昭和の作品までの日本画延べ90点余(前後期で一部入れ替え)を一堂に展示している。
堀井香坡「少女」
学校に伝わる日本画は円山応挙を祖とする円山四条派の画家たちの作品が半数以上を占める。この流派の特徴は写生的な画風。会場にはその流れをくむ竹内栖鳳の「雄飛報国之秋」や小野竹喬の「風景図」などの作品が並ぶ。前期には上村松園の「静御前」を含む「組内画家記念揮毫屏風」も展示されていた。栖鳳の前期展示作「虞美人草」は子どもが小学校を卒業したお礼に、栖鳳から担任の先生に贈られたという。
橋本関雪の「波にかもめ」はカモメが荒波の中の岩礁に止まって悠然と彼方を見つめる構図。「困難に負けるな」そんなメッセージが秘められているのだろうか。学校には子どもの姿そのものを描いた作品も多く飾られている。堀井香坡の「少女」は嵯峨小学校蔵。子どもを見つめる画家の優しい眼差しが伝わってくる。榊原紫峰の「栗と鳩」は枝に止まったキジバトの羽毛の精緻なこと。小さな絵だが、その克明な描写も動植物への深い愛情があってこそだろう。
幕末~明治に活躍した浮世絵師、月岡芳年の「錦絵修身談」は偉人の逸話を題材とし、修身の教材として使われた。鈴木松年・今尾景年合作の「和漢故事人物図屏風」は日本の武将や中国の賢人のエピソードを描いたもの。鈴木松年は上村松園の最初の師として知られる。木島(このしま)桜谷の「修身歴史画」は当初26枚を制作し出身小学校に寄贈する計画だったが、事故による急逝のため6枚の修身画が絶筆になった。
その他に池田遥邨の「海辺の風景」、秋野不矩の「青年」、冨田渓仙の「聚楽富嶽図」、棟方志功の「仏尊之図」、小倉遊亀の「菩薩 木版」、中村大三郎の「紫式部」「菅原道真」なども展示されている。