【歌川派の初代豊国、国貞の作品など36点、鳥居清峰の美人画の版木も】
奈良市の帝塚山大学付属博物館で、江戸後期に活躍した歌川派の役者絵を集めた企画展「浮世絵の世界―役者絵を中心に」(2月2日まで)が始まった。展示作品は所蔵する一世豊国、二世豊国、国貞の役者絵53点のうちの36点。同時に鳥居清峰の美人画の版木も展示し、多色刷りの制作過程を紹介している。
初代歌川豊国
歌川派は明和年間(1764~72年)に歌川豊春が創始した。幼少期に入門した豊国(一世)は「姿絵」で人気を集めた。東洲斎写楽が独特なデフォルメで役者を描いたのに対し、豊国は舞台上の役者の全身の動きを捉えて活写したのが特徴。「東山殿劇場(かぶき)段幕」は中村芝翫、岩井半四郎を描いた2枚を展示中だが、実は3枚続きで、残りの1枚の市川団十郎を描いたものは早稲田大学演劇博物館が所蔵しているという。
歌川国貞
初代豊国門下の国貞は役者絵や美人画を多く描き、役者絵では「続絵」によって舞台上の役者の躍動感や緊張感を描き独自の画風を確立、歌川派の中心として活躍した。号は「五渡亭」「香蝶楼」など。「伊勢平氏恵顔鏡(りしょうのかおみせ)」(2枚組)でも市川団十郎扮する悪源太義平と岩井粂三郎扮する妹楓の動きに躍動感があふれる。
この他の役者絵は初代豊国の「義経千本桜」「敵討揃達者(かたきうちどれもわざもの)」、国貞の「皐(さつきの)富士曽我初夢」「紅葉鹿封文曽我(もみじにしかふりそでそが)」など。版木は鳥居清峰と鳥居清長の美人画が並ぶ。他に柳亭種彦の長編物語として庶民の人気を集め、国貞が挿絵を描いた「偐紫田舎源氏(にせむらさきいなかげんじ)」も参考出品されている。