【創作押し花の第一人者・亀井園子さん】
西国33カ所第6番札所の壷阪寺を経て高取城に通じるメーンストリート「土佐街道」。かつては呉服屋や油屋などの商店を中心に約500軒が立ち並んでいたという。家老屋敷の長屋門(写真㊨)やお城の松ノ門を復元した児童公園の表門(写真㊧)、虫籠窓の町家などが往時の隆盛をしのばせる。
「土佐」の名前は古く6世紀初め、大和朝廷の都造りのため土佐の国から駆り出された人々が移り住んだことに由来するという。一方通行の細長い通りの両脇には高取山から流れてくる用水路。そのせせらぎの音が心地よい。落ち着いた町並みの散策はいつ訪ねてもホッとする。ただ、年季の入った小さな木造の「土佐恵比須神社」がいつの間にか、ぴっかぴかの石造りに建て替えられていたのには少々驚かされた。
「町家のひなめぐり」をするうちに、あるお屋敷の門前に展示された額縁入りの美しい御所車が目を引いた。近づいて見ると車に満載の花々はボタンやアジサイ、アネモネなどの押し花。「うちの庭で咲いたものばかりです」。年配の女性がこう説明してくれた。そばには押し花や草木染めの雛人形やアートフラワーなども並んでいた。
お名前は亀井園子さん(1933年生まれ)で、「長園」という押し花教室を主宰しているという。お話しを伺ううちに、内外で活躍する押し花アート作家の第一人者であることが分かった。その受賞歴がすごい。イタリアのモンテフェルトロ公国芸術祭典でウルビーノ芸術大賞、ドイツのヨハン・セバスチャン・バッハ・アートグランプリ賞、アントニオ・ガウディ芸術大賞、ロシアのサンクトペテルブルク美術展でアカデミー賞、フランス・美の革命展inルーブルでカルーゼル・ドゥ・ルーブル・グランプリ賞……。
御所車の正式な作品名は「彩華(ほのか)」。2012年度ハートアートコミュニケーション展の招待作品という。一昨年の「日露国際芸術祭2011 日本精鋭芸術家展」には鳩をモチーフにした「平和への讃歌」(上の写真㊧)を出品した。鳩の足下には草花だけでなくスイカやカキなど果物も素材として使われている。今年4月には東京で開かれるゴッホ生誕160周年記念シャンパン芸術祭にも出品の予定という。亀井さんに巡り合えたのも「町家のひなめぐり」(31日まで)のお陰である。