【春日大社一の鳥居の参道脇に異様な光景】
松や杉、楠などの巨樹が立ち並ぶ奈良市の春日大社参道。一の鳥居からまっすぐ東に延びる参道を進むうち、左手奥にある風変わりな巨木の幹が目に留まった。木肌がやや赤茶け凸凹に盛り上がっている。そばの立て札によると「ムクロジ」という落葉高木で高さ15.5m、幹周り(地上1.3m)4.6m。これまで何度も通った参道だが、その存在に気づかなかったのは中元の〝万燈籠〟など日が落ちて来ることが多かったからか。
「果皮には大量のサポニンが含まれ、かつて石鹸として利用されてきた。種子は正月の羽根突きの球や数珠に使われた」と立て札にあった。近づいて木肌を見た後、見上げたところ「アンビリバボー!」。ムクロジが2つに枝分かれした高さ5mほどの所から、なんと竹が5本林立しているのだ。その高さは優に5m以上あり、青々とした葉っぱを茂らせていた。しかも5本の竹とは別に、ムクロジの片方の幹の上部も竹の葉で覆われている(下の写真㊨)。なぜ、どうして? 周りを見渡しても竹は見当たらない。そばにあったもう1本のムクロジにも別に異常はなかった。もちろん立て札にも竹のことに触れていない。
5本の竹はいずれも直径が10cmぐらいありそう。竹の節の環は1本に見える。ということは環が2本のマダケ(真竹)ではなくて、モウソウチク(孟宗竹)だろうか。モウソウチクなら、もっと大きく成長するはず。4月になるとタケノコが出てくるかもしれない。栄養分を吸い上げられるムクロジは、果たして今年も元気に新緑を見せてくれるのだろうか。