【「自然界と人工造形は対極であるべき」講演会で】
日本庭園をこよなく愛し全国の名園を撮り続けている中田勝康氏の写真展「日本庭園の石組み 時代思想と造形」(16~24日)が、けいはんな記念公園(京都府精華町)の水景園内の「ギャラリー月の庭」で開かれている。巨大画面の写真45点が壁面いっぱいを使って展示されており、その迫力は圧倒的。23日の講演会で、中田氏は「庭園には時代思想(宗教)が反映している。自然界と人工造形の庭園は対極であるべきだ」などと語った。
展示は自然の洲浜をデフォルメした奈良時代の平城京東院庭園からスタートする。遣唐使が唐から学んだ外来説と古墳の礫石を葺き直したという古来説があるという。この後、平安時代から江戸時代にかけての代表的な名園をたどる。「須弥山」を石組みで再現した毛越寺(岩手・平泉)、「禅の庭」の永保寺(岐阜・多治見)、瑞泉寺(鎌倉)、天龍寺(京都)、光前寺(長野・駒ケ根)……。
茶人上田宗箇(1563~1650年)が作庭した徳島城や名古屋城、和歌山城の迫力のある石組み写真も並ぶ。「空間構成美の庭」として紹介するのは龍安寺(京都)をはじめ旧秀隣寺(滋賀・高島)、朝倉氏遺跡(福井)の諏訪館跡、玄宮園(滋賀・彦根)など。龍安寺について中田氏は「空間構成美の極地。龍安寺なくして日本庭園は語れない」とし、玄宮園は「水の龍安寺といえる大名庭園の白眉」と讃える。
中田氏が「愛してやまない」というのが昭和の作庭家重森三玲(1896~1975年)。「重森三玲庭園の全貌」という著書もある。重森は生涯に約200の庭を作ったが、その代表作として東福寺(京都)や岸和田城、旧友琳会館(岡山・吉備中央)、福智院(和歌山・高野町)、遺作となった松尾大社(京都)の庭園など10点の写真を展示。とりわけ旧友琳会館(下の写真)については「現代日本庭園の道標。パリの美術館にあっても違和感がない庭」と評価する。
中田氏は「日本庭園 石組みの意味」と題した23日の講演会で「自然の美しさを求めるのであれば自然の野山に勝るものはない。自然とは対照的な抽象的な人工造形こそが、大自然の造形と緊張関係をつくり新しい価値を生む」と話した。さらに重森について「日本の古典庭園の大半を実測したが、その手法をまねるのではなくヨーロッパの抽象絵画から得たモダニズムの思想を加え、現代における日本庭園を独学で創作した」と業績を讃えた。
重森の作品を大別すると①激しい立体造形の庭②静かで爽やかな枯山水の庭③鮮やかな色彩とシンプルな曲線・直線で構成した庭④デザイン性の高い露地――の4つに分かれるという。「とりわけ小面積でも造園可能な枯山水庭園の手法を確立したことは特筆すべきこと」などと語った。中田氏は荒廃した日本庭園の保護活動に取り組んでいるが、特に重森の庭の「登録記念物(名勝)」化に傾注しているそうだ。