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ペットボトル分解菌を発見

2016-03-14 10:21:52 | 自然
慶応大学や京都工繊大といくつかの企業との研究グループが、ペットボトルなどの成分であるPET(ポリエチレンテレフタレート)を分解する微生物を発見しました。

PET樹脂はペットボトルだけでなく、フィルムや繊維などにも利用されており、年間5600万トンも生産されています。ペットボトルはかなりリサイクルされているような気がしましたが、現在ではペットボトル(613万トン)の37%にしかすぎず、全体のPET製品ではわずか4%にとどまっており、それ以外はすべて廃棄されているようです。これは単に無駄が多いというだけではなく、海洋汚染などの環境問題にもなっているようです。

これをいかにうまく再利用するかは昔からの課題で、こういったものを分解する微生物の探索が行われてきました。しかしPETを含むプラスチック類は、すべて人工的に作られており、非常に安定で微生物分解は困難とされてきました。ですからプラスチック(繊維などもですが)を含むような素材を、微生物分解させるとプラスチック以外が分解され、非常に細かいプラスチックだけが残ってしまうということが問題となっていたわけです。

PETは構造的に言いますと、エチレングリコールという単体とテレフタル酸というものが、エステル結合によって高分子化したものです。エチレングリコールは昔は車のラジエターの不凍液などにも使われており、若干毒性はありますが、微生物によって簡単に分解されるものです。ですからこのエステル結合を切る微生物が見つかれば、分解再利用となるわけです。

この研究チームは、細かくしたPETのみを炭素源として生育する微生物を探索しました。こういった微生物源としては、人工物を分解するのですから、通常の土壌などを持ってきても、その中の菌はなかなかこういった性質を持っていません。そこで化学工場や石油プラントなどの土や排水などからとってきた微生物が試されるようです。こういった微生物の中から、PETを炭素源として生育・増殖する菌を見つけました。

これはIdenoneilla 201-F6と命名しました。この微生物の遺伝子解析の結果、PETのテレフタル酸の一方を切る酵素と、さらに残った結合を切る2つの酵素活性があることが分かりました。

こういった微生物が見つかったからといって、すぐにPETの分解再利用につながるものではありません。しかしこういった完全な人工物でも分解できるということは、今後の展開に期待が持てます。プラスチックの世界では、生分解性プラスチックの開発といったことも行われていますが、従来のプラスチックでも分解の可能性があるようです。

こういった菌株の発見を、どうやって実用化につなげていくかは、難しい課題ではありますが、新しい糸口が見つかったことは確かなようです。

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