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iPS細胞を使った創薬で難病治療薬を発見

2017-08-13 10:44:28 | 
京都大学などの研究チームは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)を使った研究で、難病の治療薬候補を見つけ臨床試験の準備をしていると発表しました。

この病気は進行性骨化性線維異形成症(FOP)という筋肉が骨に変わる難病で、国内に100人未満程度の患者がいると推定されていますが、有効な治療法は見つかっていません。

研究チームはFOPの患者から提供を受けた細胞からiPS細胞を作成し、骨の形成にかかわる細胞に変化させ病気の状態を再現しました。この細胞に約6800の既存薬などの化合物を調べ、治療効果を試しました。その結果、臓器移植の拒絶反応を抑える薬として使われる「ラパマイシン」で、骨の異常な形成を抑えられることが確認できました。

臨床試験は京大、東大などの大学病院で、6歳以上60歳未満の患者約20人を募り、約半年間薬の効果を調べる予定です。このようなiPS細胞を活用した薬の治験は世界でも初めてとなります。

患者の細胞から作ったiPS細胞を使って様々な病気の状態を再現し、治療薬の開発に結び付ける「創薬」は、再生医療と並びiPS細胞の医療応用の柱として期待されてきました。

治療薬の探索にはどういった評価方法を用いるかが重要ですが、簡便な方法で短時間で多数の薬剤をテストすることが望まれます。病気の種類にもよりますが、病態となっている細胞自身を使うことが最も直接的な方法ですが、そういった細胞を入手することが難しいのが実態でした。

その点iPS細胞を使えば今回のように、病態細胞を大量に作り出すことができるわけです。特に稀な難病については、患者数が少ないために病気の原因解明も難しく、利益が見込みにくいことから製薬企業も新薬開発に積極的ではありません。しかしiPS細胞を使うことによって、体外でも病状を再現でき、患者に治療薬の投与をしなくても効果を試すことができますし、病気の原因遺伝子を調べることも容易となります。

現在委縮性側索硬化症(ALS)など他の病気でも、iPS細胞を使った治療薬研究が進んでいます。ALSは徐々に筋肉が動かなくなるといった難病で、効果的な治療法は全くなく新しい展開が望まれています。ただこういった病態を表す細胞を作ること自体が難しいのかもしれません。

今回の研究も既存薬を使うとはいえ、有効性が確認できたわけではありませんし、副作用の起きる可能性もあります。それでもiPS細胞を使った創薬研究が可能であることを示す大きな一歩と考えられます。これにより創薬研究の新しい方向性が示されたといっても良いのかもしれません。

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